【7月2日付社説】能登半島地震半年/教訓を生かすことが急務だ

 東日本大震災の教訓や知見を生かし、住民の命を守り、復旧・復興を加速することが求められる。

 石川県で最大震度7を観測した能登半島地震の発生から半年が経過した。現地では徐々に仮設住宅が完成し、住民らの入居が進んでいるものの、2千人以上が避難生活を送り、このうち半数は体育館や公民館にいまも身を寄せる。倒壊した家屋の解体はようやく本格化したばかりだ。被災地の復旧は遅れていると言わざるを得ない。

 地震の犠牲者は、家屋の下敷きになるなどの直接死229人のほか、災害関連死と認定された人が50人を超え、2016年の熊本地震を上回った。関連死が急増しているのが心配だ。同県輪島市では仮設住宅に1人で入居していた高齢女性の孤独死も確認された。

 仮設住宅に入居後も、見守りや心身のケアなどを十分に行わなければ関連死のリスクが高まることを、私たちは東日本大震災で体験した。能登半島は高齢者が多く、避難の長期化による影響を受けやすい。国や地元自治体は相談体制などを整え、環境の変化に伴うストレス、孤立の解消に向けた、きめ細かな取り組みが急務だ。

 石川県内で最大約11万戸に上った断水は5月末にほぼ復旧した。国は当初3月末の復旧を目指したが、道路の寸断などで漏水箇所の確認や修繕に時間を要し、2カ月遅れた。交通事情が悪く、復旧作業に使用する資機材などの確保が難しい中山間地域で発生した災害への対応の難しさを露呈した。

 通信手段がないため物資などが供給されず、孤立した集落もあった。水道や電気、ガス、通信などの重要なインフラの復旧の遅れは住民の衛生管理や健康の維持、学校の再開などに大きく影響し、被災地の復旧作業そのものの足かせになってしまう。

 今回の地震でどのような不備があり、復旧が遅れているのか、国や県はしっかり検証し、再発防止策を検討すべきだ。同様に中山間地や過疎地が多い本県などの自治体も、災害に備えて改めて対策を確認しておく必要がある。

 これまでの復旧の遅れは、マンパワーの不足が大きな要因とも指摘されている。地震発生直後はボランティアなどの受け入れ態勢が整わず、被災した住民のニーズに応えられなかった。小規模の自治体では、災害対応の全てを行政だけで行うには限界がある。

 災害時にNPOなどの民間のノウハウを活用することが重要なのは東日本大震災でも証明された。国などは、災害時の官民連携の在り方について再考すべきだ。

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