育てるデジタル人材-山形大の挑戦(5・完) 地域との連携、一層密に

大学間競争が激化する中、学部相当の「社会共創デジタル学環」(仮称)を来春設置する山形大=山形市・同大小白川キャンパス

 少子化が進み、大学間競争は激しさを増している。全国の各大学は入学者の確保に向け、研究や教育の充実化、特色化に懸命だ。山形大が来春に新設する仮称の「社会共創デジタル学環」と「数理情報システム専攻」は、地域や企業との連携で学びを深める取り組み。デジタルを活用した山形大の試みが地元の高校生らを引きつけられるかは、実効性の高いカリキュラムの構築が鍵を握る。

 全国の18歳の大学進学率が6割ほど。短大や高専、専門学校を含めた高等教育機関への進学率は8割を超える。各大学は生き残りを懸けて、独自色を打ち出している。

 東北大(仙台市)は、活力ある研究体制整備や国際化により、国が10兆円規模の基金を活用して財政支援する「国際卓越研究大学」に全国で初めて認定される見通し。本県では、東北公益文科大(酒田市)は起業家育成に取り組み、国際系の学部学科設置の計画を進める。東北芸術工科大(山形市)はまちづくりや考古学など多分野で地域との協働に積極的だ。

 山形大は、学環と専攻を新設する。学環は、在学中から地域に出て課題を把握し、住民との協働、ビジネスの観点を絡めて解決策を探る。専攻は企業と連携し、実社会の課題を教材と捉えて学びを深める。

 玉手英利学長は「山形を良くしよう、住みやすくしよう、というマインドを持つ中高生は多い」と話す。山形大の入学者全体に占める県内出身者の割合は2~3割にとどまっている。地域に根差した教育を、地元の若者を取り込む呼び水にしたい考えだ。

 カリキュラムでは、地域課題の抽出や解決を試みる体験の広がりに加え、学生自らが将来や地域に役立つ学びだと実感できることが重要になる。山形大は、山形新聞が提唱する産学官金の連携組織「5G・IoT・AIコンソーシアム」加盟企業や団体などとの連携も生かし、学生の向学心を支える学環、専攻の教育環境を描く。

 1949(昭和24)年の大学創設から、ことしで75年。デジタルスキルと実行力を身に付けた人材が卒業後も県内に残り、地域や企業とつながることで、大学に対する期待や評価、存在感が高まる。連携が一層密になり、新たな人材が輩出される流れを、山形大は期待している。

© 株式会社山形新聞社