全米シニアオープンで藤田寛之が大活躍!ところでゴルフの“シニア”って何歳からか知ってる?メリットも多いって本当?

全米シニアオープンでの勝利は逃したものの、藤田寛之はシニア世代に大きな感動を与えた(提供:USGA)

2024年「全米シニアオープン」では惜しくも単独2位に終わった藤田寛之。しかし“日本のゴルフここにあり”を世界に示した藤田の大活躍に、勇気づけられたシニア世代は多いのではないでしょうか。実際、ゴルフは生涯スポーツといわれるように、シニアになっても満喫できるのが魅力です。3世代でプレーをエンジョイしたり、熟練のテクニックでコースに挑んだり、年を重ねたら重ねたなりの方法で楽しめるのが醍醐味といえるでしょう。でも、そもそも何歳からシニアゴルファーになるのかと聞かれると、なんとも曖昧な答えしか浮かびません。そこで本記事では、シニアゴルファーの定義をふまえて紹介していきます。

1.シニアゴルファーの年齢基準「シニア(Senior)」とは英語で「年長者、年上、先輩、古参、上位の、上級の」という意味ですが、日本では「高齢者」として使われています。

何歳以上を高齢者と呼ぶのかというと、世界保健機関(WHO)は 65歳以上 と定義しています。日本でも65歳以上を高齢者、そのうち65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としています。

ただし、運転免許更新の際に「高齢者講習」を受ける義務があるのは70歳以上の運転免許取得者ですし、日本老年学会と日本老年医学会は2017年、高齢者の定義を75歳以上に引き上げるべきだと提言しました。

つまり、高齢者の定義について、実は絶対的な基準が設けられていないのです。

ゴルフにおけるシニアゴルファーの定義も、プロとアマチュアでは異なります。

プロゴルファーの場合、シニアツアーの出場資格がその基準といえます。

日本プロゴルフ協会(PGA)が運営する「PGAシニアツアー」に出場できるのは、50歳以上になったプロゴルファーです。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が運営するシニアツアーは「レジェンズツアー」といい、45歳以上のプロゴルファーが出場可能です。

特に女子のレジェンズツアーの場合、「45歳でシニアなの?」というイメージはなきにしもあらずですが、英語の「上位の、上級の」という意味を考えれば納得できるでしょう。

一方、アマチュアゴルファーの場合は2つの解釈ができます。

ひとつは、ゴルフ場利用税が非課税となる70歳からがシニアゴルファーだという考え方です。ただ、ゴルフ場によっては60歳以上のゴルファーを対象とした「シニア優待プラン」などを設けているところもあり、何をもってシニアと言うかは、本人の判断によるところが大きいでしょう。80歳になっても、「まだまだ自分はひよっ子で……」というゴルファーもいると思います。ズバリ、還暦を迎えて自分がシニアだと思ったらシニア。自己申告の世界です。

もうひとつは、「日本シニアゴルフ選手権競技」など、アマチュアが出場できるシニア競技会の参加資格です。出場できる年齢は一般的に、55歳からとされています。

2.国内男子「PGAシニアツアー」とは

PGAシニアツアーとは国内男子のシニアツアーのことで、日本プロゴルフ協会(PGA)が運営しています。50歳以上の男子プロゴルファーが出場可能ですが、中には「日本シニアゴルフ選手権」「日本シニアオープンゴルフ選手権」などアマチュアが出場できる大会もあります。

シニアツアーにはレギュラーツアーとの掛け持ちも可能で、片山晋呉や宮本勝昌、そして2024年「全米シニアオープン」単独2位の藤田寛之は両ツアーに参戦しています。

PGAシニアツアーが始まったのは1988年です。大会数は、初年度は全11試合でしたが、のちのバブル景気で激増、その後のバブル崩壊に伴い激減という紆余曲折を経て、2024年度は14試合が開催される予定です。賞金総額は約6億6千万円となります。

大会数の激減に連動してPGAシニアツアーの人気は一時、下向きになったのですが、近年は「往年の選手の円熟プレーが間近で見られる!」と注目度がアップ。トーナメントでは選手とファンの距離の近さ、レギュラーツアーにはない和やかなムードも観戦者にウケているようです。

2023年は、宮本勝昌が賞金王になりました。ニッカボッカにハンチングがトレードマークのすし石垣も、PGAシニアツアーに参戦しています。かつて男子ゴルフ界で名を馳せたプロたちのゴルフを、観に行ってみてはいかがでしょうか。

3.国内女子「レジェンズツアー」とは

「レジェンズツアー」とは国内女子のシニアツアーで、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が運営しています。2004年からスタートし、2008年度から「レジェンズツアー」という名称に統一されました。

出場できるのは、45歳以上の女子プロゴルファーです。同協会によると、生涯スポーツとしてのゴルフの普及、健康促進の牽引役、社会貢献といったミッションを掲げていますが、ファンにとっては男子のPGAシニアツアー同様、往年のプロを応援できるのが魅力といえるでしょう。

2024年度は、新たに「長崎さくらレジェンズオープン」「カヤバレジェンズオープン」「Obbliカップ」を含む6大会が開催予定で、賞金総額は1億1,100万円です。

6大会のうち5大会で、60歳以上の選手が出場するグランドシニアの部を設けています。

2024年度は不動裕理、表純子、日吉久美子といった“レジェンズ”たちが勝利を飾っており、こちらも目が離せません。

4.シニアプロになるには

腕に自信があって挑戦意欲が旺盛なシニアゴルファーの中には、「プロになりたい」という夢を諦めるどころか、年を重ねるごとに逆に情熱をたぎらせている人もいるでしょう。シニアと呼ばれる年齢になってもそうした夢を追うことができるのが、ゴルフの懐の深さです。

シニアプロになるには男子、女子ともにプロテストを受けて、合格する必要があります。

プロテストの年齢制限は、男子は16歳以上、女子は「最終プロテスト開催年度4月1日時点で満17歳以上の女子(出生時)」(日本女子プロゴルフ協会HP)で、ともに上限はナシ。そのため、中年になってからプロテストに挑む人も少なくありません。

とはいえ、プロになることは決して容易ではないのが現実です。若いゴルファーに交じって、何度もプロテストを受けているゴルファーは多数います。

しかしそんな中、「2017年度PGA資格認定プロテスト・最終プロテスト」では、出場選手の中で最年長となった56歳の小田教久が、トータル8オーバーの28位タイで合格を果たしました。

プロを目指すシニア層には、まさに希望の星的存在といえるでしょう。

一方で、アマチュアでもPGAシニアツアーの舞台に立つことができる大会もあります。その最高峰が「日本シニアオープン」です。日本ゴルフ協会(JGA)が主催するナショナルオープンのひとつで、ほかには「日本オープン」「日本女子オープン」があります。

アマチュアゴルファーが日本シニアオープンに出場するためには、日本シニアオープン予選競技にチャレンジするほか、前年の「日本シニアゴルフ選手権」の上位3位に入ることが求められます。これまた狭き門ですが、熟年ゴルファーになってもなおトライし続けるガッツは、唯一無二の勲章になることでしょう。

5.シニアツアーの賞金

男子のPGAシニアツアーにおける各大会賞金総額は2千万~8千万円で、合計は約6億6千万円。

女子のレジェンズツアーにおける各大会賞金総額は1千万~2千万円で、合計は1億1100万円となっています。

レギュラーツアーに比べるとシニアツアーは賞金額が低く、大会のテレビ放送も限られるため、観戦の機会は少ないのが実情です。

しかし、ゴルフ観戦の楽しさを伝える、新しい試みに果敢に挑戦するシニアツアーを高く評価するゴルフファンが多いのも事実。男女両シニアツアーともに、今後もさらなる発展が期待できるのではないでしょうか。

6.アマチュアがシニアになると得られる5つのメリット

アマチュアゴルファーがシニアと呼ばれる年になると、「飛距離が落ちる」を筆頭にしたデメリットがささやかれますが、実はさまざまなメリットもあります。

「飛ばなくてもスコアがまとまるようになる」「ピンチにも動じなくなる」といった技術面、メンタル面のスキル向上はもちろんのこと、“年の功は亀の甲”的なお得な割引などにも注目してみてください。

【1】シニアティが使える

ゴルフコースのティーイングエリアにはバックティ、レギュラーティ、レディースティなどのほか、シニアティが設けられています。使用に際して明確な年齢規定はないので、使うか否かはあくまでも任意です。

「今までレギュラーティから打っていたのに、いきなりシニアティはちょっと……」という思いはあるでしょうが、飛距離や体力に自信がなくなったなら、思い切ってシニアティ・デビューしてみるといいかもしれません。特に距離のあるコースは、そのチャンスです。

ゴルフは生涯スポーツといわれますから、歳を重ねても無理せず、健康的にプレーを楽しむことが一番。同年代のゴルフ仲間も、実はシニアティを使ってみたいのに躊躇していた……なんてこともあるかもしれません。

【2】ゴルフ場の利用税が非課税になる

ゴルフ場を利用した際は、ゴルフ場利用税(都道府県税)がかかります。ゴルフ場利用税の額は利用料金などに応じてゴルフ場ごとに定められており、1人1日当たりの上限は1,200円です。

ただし、70歳以上や18歳未満、障がいのある利用者は非課税となります。

70歳以上のゴルファーはゴルフ場にある非課税利用の届出書に書名し、運転免許証など氏名、生年月日等が記載された公的な証明書を提示してください。

【3】シニア割引・優待が利用できる

ゴルフ場によってはシニアゴルファー向けの割引や優待デーなど、お得なプランを用意しているところがたくさんあります。

たとえば栃木にある某ゴルフ場は、60歳以上のゴルファーを対象にした月曜シニアデーを設けています。通常の平日プレー料金(昼食付き)が8,800円のところ、シニアデーは7,900円となり、しかも1ドリンク付きとお得です。

大阪市内から50分以内にある18ホール・パー62のパブリックコースは、通常の平日プレー料金は3,400円ですが、水・金曜限定のシニアプラン(60歳以上)だとなんと2,090円。週2でゴルフが可能な料金です。

時間の融通が利くシニアゴルファーは、こうした特典を上手に利用するといいでしょう。

【4】エ-ジシュートを目標にできる

ゴルファーの憧れのひとつがエージシュートです。年を重ね、ゴルフ歴を重ねてようやく到達できる境地ですから、みんなからリスペクトされることは間違いありません。

一般社団法人 日本エイジシュートチャレンジ協会によると、エージシュートとはゴルフの1ラウンド(18ホール)ストロークプレーを自身の年齢、あるいはそれ以下のスコアでホールアウトすることです。たとえば80歳のプレーヤーがスコア80以下で回ったなら、晴れてエージシューターとなれます。

同協会が定めるエージシュートの認定基準は、18ホールの総合距離によって2種設定されています。ひとつは「プラチナ認定」でゴルフ場の総合距離目安は男性が 6,100ヤード以上、女性 5,000ヤード以上。ふたつ目は「ゴールド認定」で。総合距離目安は男性 5,400ヤード以上、女性 4,500ヤード以上です。

いずれも「キャディ付き、または同伴競技者・コース承認」「1ラウンド(18ホール)ストロークプレー・ノータッチ・完全ホールアウト」「満年齢、あるいはそれ以下でのスコア達成」と定めています。

シニアゴルファーになってようやく、エージシュートが現実的な目標として見えてくるもの。これも、年齢関係なく楽しめるゴルフの魅力です。80歳を過ぎたらそろそろ……と考えてみてはいかがでしょうか。

なお、日本プロゴルフ協会のホームページで公開されているPGAシニアツアーのエージシュート達成者一覧を見ると、2024年は73歳の髙橋勝成がノジマチャンピオンカップ箱根 シニアプロゴルフトーナメントでスコア70を、68歳の倉本昌弘選手がスターツシニアゴルフトーナメントでスコア68を出しています。このほかにも多数の選手がエージシュートを決めています。アマチュアとプロで実力が違うのは当たり前ですが、さすがだとうならざるを得ません。

【5】健康寿命が延びる

健康のためにゴルフを続けている人は多いでしょう。

R&A(Royal and Ancient Golf Club of St. Andrews)は2023年8月に開かれた「R&Aジャパンゴルフサミット」のセッションで、「ゴルフと健康のメリット」に関する研究結果について解説。ゴルフは体だけでなく心の健康維持にも役立ち、生活の質を向上させること、ゴルファーはゴルフをしていない人よりも長生きするというメリットを紹介しました。

また別の研究では、ゴルフをする人は記憶力がいい、という健康効果も発表されました。

確かにゴルフに行けばよく歩き、人と話し、スコアを数え、緊張したり大喜びしたりします。上達するために日頃から練習したり、本や雑誌、WEB等で情報を集めたりもするでしょう。ゴルファーは普段、スコアのことで頭が一杯でゴルフの健康効果について特別意識していないかもしれませんが、その恩恵をちゃんと受けているのです。

日本ゴルフ協会(JGA)は、ゴルフを通じて国民の幸福と健康維持増進に寄与し広く社会に貢献すること、また健康維持増進のための「生涯スポーツ」「国民スポーツ」としてのゴルフを社会に認知させ広く普及させることを目的とし、「ゴルフと健康」「ゴルフ健康週間」の普及活動を行っています。

ゴルフを続けることは健康寿命を延ばすこと。そのためにも、いつまでもゴルフが楽しめる体と心づくりを心がけたいものです。

7.まとめ

シニアゴルファーを取り巻く現状を知れば知るほど、ゴルフは自分の体力や力量に応じて老若男女が同時に楽しめる、素晴らしいスポーツであることがわかります。

シニアと呼ばれる年齢になったらエージシュートを狙うもよし、競技会にチャレンジするもよし、今まで以上にマイペースに続けるもよし、自分らしいゴルフスタイルを極めていってみてはいかがでしょうか。目指すは、“一生現役ゴルファー”です。

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