おやじゴルフニュース「わりと使い勝手がいいかも…2グリーン見直し論」

イラスト・とがしやすたか

ちょっと前の話ですが、某コースで2グリーンを1グリーンにする計画が立ち上がりました。それから理事会等でいろいろ検討したのですが、最終的には1グリーン化計画を持ち越したというのです。それはどういうことでしょうか。今、日本が置かれているゴルフ環境などを見ながら、考察してみます。

まず日本独自の2グリーンですが、もともと英国で生まれたゴルフは1グリーンでした。しかし、日本の夏は高温多湿で物凄く暑い。涼しい気候を好むベントグリーンは、暑さにやられてもたないんじゃないか。そういう意見が出され、暑さに強い夏用のコーライグリーンを併用することに。そういう考えはすでに1930年代からあり、戦後の高度成長期まで2グリーンにするのが一般的でした。

それから高度経済成長、バブル経済を経て、ベントグリーンを品種改良し、暑さに強くなった芝が登場します。じゃ今までの2グリーンを、本来のベントのワングリーンに戻そうという動きが起きました。

個人的な体験でいうと、1990年過ぎに入会した千葉の南総CCは、もともと2グリーンだったのを1グリーンに改造したものでした。それが2つのグリーンを単純に足したデザインが多く、グリーンがバカでかい。だからグリーンに乗っても3パットが続出、大変でした。

グリーンがでかいと、カラー手前のフェアウェイから35ヤードを寄せるショットなんてざらにありました。これはパターで打つべきか、ウェッジで転がすべきか、いつも悩んでいました。

その後、2グリーンの鶴舞CCに入会し、今も2グリーンの扶桑CCのメンバーになっていて楽しいクラブライフを送っています。

個人的には2グリーン大好き派です。じゃ2グリーンの何がよろしいのか? まず言えることはこれです。

1)2倍楽しめる
鶴舞CCなんか36ホールありますからね。それで2グリーンじゃないですか。結果72ホールあるってことで、いつ行ってもコースが新鮮に感じました。結果、なかなかコースレイアウトを覚えられませんでしたけどね。

鶴舞CCを設計した名匠・井上誠一は多くの2グリーンのコースを作っています。彼は英国やアメリカで、名門コースの視察旅行をしており、本来は1グリーンであるべきことを充分知っていました。

けど当時の日本の暑い夏を考えると、2グリーン止むなしと思ったのです。

井上誠一が2グリーンのコースを設計したのならと、ほかの設計家も続々2グリーンを設計することになります。それが昭和20~50年代です。

井上誠一は2グリーンにするとき、必ずグリーンの間を窪みにして、寄せにくい設計にしていました。しかも砲台の受けグリーンにして難しくする。そういう小さいグリーンが、日本のコースのスタンダードになったのです。

2)管理が楽である
最近のゴルフ場はセルフプレーが多いです。そうなるとグリーンのピッチマークを直してくれるキャディさんがいない。プレーヤーの自助努力だけでは、グリーンの修復再生に限界が生じます。だからグリーンの痛みが激しくなります。

しかし、2グリーンだと、片方を休ませることが出来るので、メンテナンス的には凄く楽です。

人気のあるコースは、お客さんを詰め込みますから、朝4時半のアーリーバードに始まり、日没ゴメンという日暮れまで打たせるプランありで、1日14時間ぐらいグリーンを使うことに。そりゃ痛みますよ。

2グリーンの場合は、1年の半分は休ませることが出来るわけですからね。

3)2グリーンのベント化
2グリーンが当たり前の状況から、1グリーンが本来のゴルフと教えてくれたのは、バブル華やかな時期に活躍した外国人設計家たちです。ロバート・トレント・ジョーンズJr、ピート・ダイ、デズモンド・ミュアヘッドなどがバブル景気の頃、日本のスポンサーに依頼されて、ベントの1グリーンのコースを続々作りました。

そこで2グリーンのコースをベントのワングリーンに直す運動が始まりますが、現実はそう甘くない。グリーンの改造工事となると、コースをクローズしなきゃならない。莫大な工事費用にクローズした分の売り上げ減をどうするか? 超お金持ちのコース以外は出来なかったのです。

というわけで、従来のベント&コーライの2グリーンを、せめて2ベントにする動きが出ます。高麗をベントにするだけなら、大規模な工事にならず、1シーズン我慢すれば、容易に出来たのです。

だから鶴舞CCも2000年代に入り、コーライグリーンをベントに変えました。9ホールずつ張り替えて、足かけ4年ぐらいかかりましたかね。ちなみにですが井上誠一はベントとコーライグリーン、どっちに重きを置いていたと思います? 実はコーライグリーンをメイングリーンにしていることがあるんですよね。

鶴舞CCもコーライグリーンのほうが、全長が長く難しかったのです。だからメインのコースレートを表示するときは、コーライグリーンのほうの数字を採用していました。

というわけでバブル崩壊以降は、コースをクローズして1グリーン化するゴルフ場はほとんどありませんでした。結果的に2グリーンのほうが楽しくて、メンテが楽だから、そのままでいいと思いますよ。

4)未来の2グリーンとは?
そして令和になった現在、地球温暖化の影響で思わぬ状況が起きています。あまりに暑いので、関東の練習場の長めのアプローチコースですが、なんとバミューダ系のグリーンを採用したというのです。それって関東が南国化しているってことですよね。

夏場のグリーンは鏡面効果により、もの凄く照り返しがきつく、軽く40度を越えてしまいます。だからいくら改良したベントグリーンでも、耐えられなくなるのではと言われています。

こうなるとグリーンの芝をいろいろ試せる、2グリーンのほうが運営していく上で効率的だと思いませんか。現在、ホームコース扶桑CCは、ベントとコーライの2グリーンで運用しています。夏場の2か月をコーライで、冬場は状況を見てひと月コーライの場合もあるし、そのままベント使用というときもあります。

ベントの速さがスティンプメーターで10フィート前後なのに、コーライだと7フィート前後、すげえ遅いとは思いますが、まあそれはご愛嬌で。沖縄で遅いコーライグリーンに慣れていますので、そんなに苦になりません。それよりも普段と違うレイアウトなので、新鮮に感じて面白いです。

そして近い将来、酷暑を乗り切るためにグリーンの芝を変えることになるかもしれません。通常はサブのコーライをニューベントに変えるのですが、あまりにも気候が厳しいと、コーライを残してベントをバミューダに変えるなんてことが起きるかも。

こればかり神のみぞ知るですね、静かに見守って行きたいと思います。

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