【西武】原点は2004年…栗山と渡辺監督代行の二人三脚 4番・岸が証言するベテラン効果

栗山と渡辺監督代行

【赤ペン! 赤坂英一】西武のベテラン・栗山は本拠地での試合前、全体練習の前に一人で黙々とウオーミングアップをしている。調子はどうかと尋ねると「うーん」とうなって「悪くはないけど、良くもないという感じですか」と答えた。

チームは借金24で最下位に沈んだままだが、先週は2カード連続で勝ち越しを決めた。栗山が任された打順はおおむね3番か5番。その間の4番に抜てきされた5年目の岸はこう言っている。

「栗山さんには、ホント、すごいたくさんチャンスをいただいてます。栗山さんはどっしりと構えてストライクとボールを見極めて、そうかと思うと初球からいく時はガン!としっかりと捉えてる。(ネクストの)一番いい席で見させてもらってるんで自分の糧にしたい」

そんな栗山が若手にもたらす効果を、渡辺監督代行はこう解説した。

「栗山の場合は、1打席1打席に意味があるんだよね。状況に応じた意図のある打席というかな。打ったり打たなかったりはあるけど、四球を選んだりとか、一つひとつの打席に意味があるのが素晴らしい。そこを若い選手に見習ってほしい」

そう語る渡辺監督代行が二軍投手コーチだった2004年、栗山はまだ3年目。やっと初昇格した一軍ではわずか1試合の出場に終わっている。二軍戦でも打てず、焦燥感に駆られると栗山は渡辺コーチに「打撃投手をしてください」と頼んだ。

いつでも快く引き受けた渡辺コーチは、そこでひと工夫している。「クリ、真っすぐだぞ」と言っておいて、カットボールを投げ込むのだ。「最初のうちは全然打てませんでした。グッシャグシャに詰まるんです」と当時の栗山は振り返っている。

この特訓が栗山の打撃開眼につながった。08年から一軍監督に就任した渡辺は栗山を「2番・左翼」でレギュラーに抜てき。栗山もこれに応えて最多安打(167)をマークし、西武のリーグ優勝と日本一に貢献したのだ。

あれから16年、栗山が若手を引っ張る立場になって久しい。それでも本人は「自分の状態を上げることが先決」という。

「もっと固め打ちしたいんです。それには打てるボールをしっかりと捉えられるようにならないといけない。頑張ります」

西武が近いうちに最下位から抜け出すのは難しいだろう。が、チームにできるのは、ただ目の前の試合を勝っていくことだけだ。栗山や渡辺監督代行が続ける努力も、いつかはきっと実を結ぶと思いたい。あの歓喜に沸いた08年のように。

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