明治安田生命「70歳定年制」で人材確保へ 2027年度から約1万人が対象 リスキリングと人事制度改革がカギに

企業にとって人材の確保が課題となる中、明治安田生命保険が大手金融機関で初めて、70歳定年制を導入する方針を発表した。

大手「初」70歳定年制を導入へ

明治安田生命は、2019年度に定年を60歳から65歳に延ばし、2021年度からは、定年後も嘱託社員として70歳まで働けるようにした。2027年度からは、営業職員以外の定年を70歳に引き上げる方針だ。

対象となるのは約1万人で、勤務日数や時間、退職時期などを選べるようにし、65歳までと同等の役割を担う場合は同じ処遇水準を維持する方向だ。労働人口の減少が進む中、豊富な経験を持つシニア世代の活用で、働き手の確保を進めたい考えだ。

労働力の確保とリスキリングが重要

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
70歳定年制、どうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
人生100年時代といわれますし、働ける人、働きたい人が、年齢に関係なく働けるようになるのは良いことだと思います。

70歳定年制によって、働く人の選択肢も広がってくると思います。例えば、少し退職金を減らしても、早めに退職して新しいチャレンジをするのもいいし、70歳まで働いて退職金を満額もらうという選択もあっていいと思います。

ただ一方では、長く働くだけではなく、働く質を高めることを会社も個人も求められるようになるため、それを実現していかないといけないわけですよね。

堤キャスター:
働く質を高めていくとは、どういうことでしょうか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
個人で言えば、年齢を重ねてもビジネス環境は変わり続けていきますから、それに合わせてリスキリングし続けていくことが非常に重要です。具体的には、仕事で使うツールはどんどんデジタル化していきますし、AIも業務にどんどん入ってくるわけです。長く働くけど「変わりたくない」「わからない」というのは難しくなってくると思います。

一方、会社側としても、長く働くベテラン社員が増えたとしても、全社としてやるべき業務改善や、オペレーションのアップデートなどはしないといけないというのは変わりません。

若手の機会も創出する制度設計を

堤キャスター:
長く働くには、変化への対応も大切ですよね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
「変化」ということでいうと、長く働く人が増えるからこそ、人事制度も考え直さないといけないというふうに思います。

今よりもベテランが増えると、ポストが空かずに若手が役職につく年齢が遅くなったり、新しいチャレンジをする機会も増えないとなると、若手で有望な人ほど他の会社に移ってしまうことにもなりかねません。

だからこそ、定年年齢を引き上げるだけではなく、全社でリスキリングし続ける人材開発プランや年功序列ではない制度設計などをセットで行うのが非常に重要です。

これから定年年齢延長はどの会社も考えていく施策の一つですが、それ単体ではなく全社の人材開発や制度を変える目的の一つとして、定年の年齢を延長するという会社が増えてくるのではないかなと思います。

堤キャスター:
働く意欲や健康には個人差がありますが、働き方の幅が広がることを歓迎する方は多いのではないでしょうか。同時に、企業は常に業務や考え方をアップデートしていかなければならないと思います。
(「Live News α」7月1日放送分より)

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