プロ級のネイルがSNSで話題!『黒執事』出演声優・渡部俊樹に聞く“セルフネイル沼”の魅力「声の仕事も爪も、僕にとっては作品づくりなんです」

「セルフネイルの腕がプロ級の男性声優がいる!」といううわさを聞いて、numan編集部がたどり着いたのは声優・渡部俊樹さん。

アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』(以下、『黒執事』)で「P4」メンバーの一人、麗しい金髪が目を引くエドガー・レドモンド役を演じている声優さんと聞くとピンと来る人も多いでしょう。

そのほか、WEBアニメ『おでかけ子ザメ』や海外ドラマ映画の吹き替えなど、幅広く活躍している声優さんです。

声で作品を彩り、爪という小さな箱庭にネイルアートという作品を生み出す渡部さん。声優業の傍ら、仕事の合間を縫ってネイルスクールに通うだけあり、そのネイルの腕前はまさにプロ級です。

声優とネイル、一見すると交わらないように思える二つの世界。どういった経緯で声優の渡部さんが“ネイル沼”にハマったのか気になる……ということでインタビューを決行!

すると、二つの世界の接点として“作品づくり”というキーワードが見えてきました。

ネイルを習得したことで「声優としてひとつの個性ができた」と語る渡部さんに、ネイルとの出会いから、ネイルの魅力……そして声優業とネイルの共通点などを、たっぷり伺いました。

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『黒執事』オマージュに「渡部レモン」? クオリティ高いデザインもセルフネイルで実現

――今日もすてきなネイルをされていますが、こちらもご自身でされたのですか?

渡部俊樹(以下、渡部):
はい。だいたい月に1回くらいの頻度で、自分でデザインを決めて塗っていますね。ポリッシュはあまり使っていなくて、ジェルネイルが基本です。

ネイルサロンはもう1年以上行っていないかな。実は去年の5月ぐらいから、ネイリスト検定とジェルネイル技能検定の資格が取れるネイルスクールに通い始めたんです。

――スクールにも通われているんですね、本格的! デザインは毎回どのように決めているのでしょうか?

渡部:
その時ハマっているものや季節に合わせたデザインがあればそれを再現しますし、ふらっとネイル用品を買いに行った時に「この色いいな」「このパーツかわいい」と思うジェルやパーツがあれば、色からデザインを考えることもあります。

出演している作品をモチーフにしたデザインもよくやりますね。最近だと、アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』風のネイルをしました。

日頃からSNSでネイルの写真を検索して、「これはどうしたら再現できるんだろう?」と気になったら、ネイルチップ(※つけ爪)で練習しています。

――SNSには、いろいろなデザインのネイル写真を載せてていますよね。

渡部:
自分で言うのもどうかなと思いますが、昔から手先は器用な方なので、どんなデザインでも意外とできちゃうんです(笑)。ネイルスクールの先生に驚かれることもあります。

――どれもすてきですが、最近のお気に入りのデザインはどれですか?

渡部:
「渡部レモン」かな。ちなみに最近、自分の名前をデザイン名に取り入れるようにしたんですよ(笑)。

これはレモンの果肉感とみずみずしさを、うまく表現できたなと思っています!

水滴は粘度の高いジェルで作るのですが、よりリアルに表現するために、その下にマットな質感のジェルを乗せているのがポイントです。

――とてもリアルで、まるで絵画のようです。絵を描くのも得意なのですか?

渡部:
いえ、絵はまったくです! 実はネイルアートって、痛ネイル以外はあまり絵の上手さは関係ないといいますか、“絵を描く”感覚ではないんです。

点と点をつないで、円や四角などの“図形を組み合わせる”感覚の方が近いかな。

例えば「渡部レモン」だと、レモンの絵を描くというより、黄色い円を白く塗りつぶして、その中心に点を打って線でつないでいく作業をくり返すことでいつのまにかレモンが出来ているんですよ。

――すごくバランス感覚を問われそうです。セルフネイルには、いつもどのくらいの時間をかけているのでしょう?

渡部:
デザインによって時間はまちまちなのですが、右手と左手とで2~3日に分けて塗ることが多いですね。

前回のネイルを全部オフして、自爪をケアするところから始めなければいけないので、まとまった時間が取れないと一気にできないんですよ。

右手をやって、時間に余裕があれば左手もやりますが、翌日に持ち越して少しずつ完成させていきます。

「何万円使ったかは考えたくない……」自前のネイル用品はプロ顔負けの品ぞろえ!

――今回は私物のネイル用品をたくさんお持ちいただきましたが、最初にそろえた道具はどのあたりですか?

渡部:
ベースとトップに筆、ケア用品、UVライトとか……。スクール入学時に一式もらったのですが、いわゆるエントリーモデル的なものなので今はほぼ使ってないです。

手前左がジェルを硬化させるUVライト。筆は平筆や面相筆など、用途に合わせてさまざまな種類をそろえたそう。

なので、今日はその後に買いそろえたものをたくさん持ってきました! ジェルネイルのカラーは、この(写真中央の)引き出しと同じものが家にもう一つあります。

――すごい……お店を開けそうな量ですね。

渡部:
そうですね。たぶんすぐ開業できると思います(笑)

スクールに通い始めると、プロ用のショップで買えるようになるので、どんどん買っちゃうんですよね。

――これまでにどれくらいの費用がかかりましたか?

渡部:
それはもう、考えたくないくらい金額を使いました(笑)。スクールでもらったものを除くと、初期投資はたぶん3万くらいですね。手に入りやすい価格のブランドで、基本的な色のジェルを一通りそろえました。

ですが、「もっとこんなデザインをやってみたい」という欲が次第に出てきて。それを実現できる性能のものを……と考えると、結局プロ仕様のものが必要になるんですよ。

スクールに通っているとプロ御用達のジェルを購入できるのですが、ざっと計算すると……恐ろしいですね(笑)。

「ガンプラ好きな自分なら、ネイルもきっとできるはず」始めてみて気付いた意外な共通点

――現在はスクールに通われているとのことでしたが、いつ頃からセルフネイルを始めたのですか?

渡部:
1年半から2年くらい前です。その前に1年間くらいサロンに通っていた時期があったので、ネイル歴でいうと合計3年間くらいですかね。セルフでやっているのがここ1年くらいです。

――ネイルに興味を持ったきっかけは、何だったのでしょうか。

渡部:
きっかけは、本当にたまたまでした。

もともとファッションが好きだったのですが、ファッション好き仲間の中に日頃からネイルをしている男性がいたんです。その方が「ネイル楽しいよ」と僕にいろいろと教えてくれて。それが、最初に興味を持ったきっかけですね。

後日ネイリストをしている別の友人にお願いして、施術してもらったのが初めてのネイル体験でした。

――興味を持ったのも、初めてネイルサロンに行ったのも友人がきっかけだったのですね。ネイルサロンに通う選択肢もある中で、なぜ「自分でやってみよう」と思ったのでしょうか?

渡部:
以前から「声優としての仕事とは別に、何か新しいことを始めたいな」と思っていたんです。その中で、たまたまネイルに出会って。

あとは、「自分は絶対これができる」と確信が持てたのが大きかったのだと思います。

手先が器用だという自覚は昔からあったんですよね。だから、たぶんネイルもできるだろうと。自分でできるようになったら好きなようにデザインもできるし、お金も節約できますからね(笑)。

――ガンプラも趣味でされていらっしゃいますよね。

渡部:
そうなんです。それもあって、ジェルネイルを始める前からなんとなく「ほかの人よりうまくできるだろう」という自信がありました(笑)。

実際、始めてみたらジェルネイルとガンプラってめっちゃ近いんですよ! むしろ、ほぼ一緒!

最初にプライマーを塗って、塗料(ジェル)を塗って固めたら、筆を使って模様を描いて仕上げのトップコートを塗る。

ネイルは人の身体に施術するので、より慎重にやる必要はありますが、工程としてはかなり近いものがありますね。

――ネイルに出会わなければ、ガンプラのモデラーになっていたかも?

渡部:
そうですね。今頃、numanではなく模型雑誌の取材を受けていたかもしれません(笑)。

声優業もネイルも「悔しい」気持ちがあったからこそ続けられた

――ネイルスクールに通うほど本格的にネイルを学ばれていますが、続けられている理由はどういったところにあるのでしょう。

渡部:
やっぱり好きだからでしょうね。声優の仕事もそうなんですけど、好きじゃないと絶対できないです。

仕事もそうですが、それと「悔しい」という気持ちになれることですかね。

それこそネイルスクールに通い始めた頃、ネイルチップではなくて人の手で練習をしたくて、友達にお願いして施術をさせてもらったことがありました。

他人に施術するのは初めての経験だったのですが、シンプルなデザインなのに両手で合計5時間もかかっちゃうし、色の乗せ方もベコベコで塗りムラもひどくて……。

その日の夜は悔しくて泣きながら練習しましたし、当時の気持ちを思い出すために定期的に写真を見返すようにしています(笑)。

めちゃくちゃ悔しかったのですが、たぶんその時に「悔しい」って思えたからこそ、今まで続けられてきたのだと思います。

――すばらしいです。渡部さんをそこまで魅了するネイルの魅力とは、一体何だと思いますか?

渡部:
とにかくネイルって、気分を上げてくれるんですよ。ふと手元に目をやる度に、美しい色やデザインが視界に映る。手元は周りからもよく目に入る部分ですし、日常生活において最も自分の視界に入るパーツじゃないですか。

だから、その一瞬の癒しによって、人生がますます豊かになっていく感じがするんです。

あと、色んなジェルやパーツを集めるのも楽しい! 僕の場合はネイルに限らず、美容グッズやプラモデルもそうなのですが、凝り性でコレクター気質なんですよ。

まず形から入るタイプなので、そういうところもネイルにハマった理由の一つだと思います。

ネイルの装飾に使用するストーンやパーツなど。「一番よく使うのは、シンプルなストーンですね」(渡部さん)

――凝り性でコレクター気質なところは昔から?

渡部:
そうですね。子どもの頃から、おもちゃでも何でも集めるのが好きでした。

ガンプラとか「ものづくり」が好きなのも昔からです。この前実家に帰って、親が取っておいた通信簿を見せてくれたんですけど、分かりやすく勉強系はイマイチなのに美術と音楽だけ成績が良くて(笑)。だから、ネイルにハマる素質はあったんだろうなって思いました。

声の仕事も趣味のネイルも、“作品づくり”に変わらない

――SNSでネイルの写真が評判ですが、声優としてのお仕事に何か良い影響はありましたか?

渡部:
ありましたね。まさに今こうしてインタビューでお話しさせていただいていますし。今後も出演作品について取材していただく際にネイルをしていたら、少しでも皆さんが覚えてくださるのかなとも思います。

過去に『黒執事』をオマージュしたネイルの写真をSNSに上げたら、ファンの方がたくさんシェアしてくれたのがすごく嬉しかったですね。

――『黒執事』でいうと、共演者の方にもネイルをしていましたよね。

渡部:
そうなんですよ! 僕が演じるエドガー・レドモンドの寮弟にあたるジョアン・ハーコート役を演じている徳留慎乃佑くんに、おそろいのネイルをさせてもらいました。

「その時に徳留くんがお土産で持ってきてくれたお菓子の缶がめちゃくちゃ可愛くて、今ネイルのパーツ入れにしています(笑)」(渡部さん)

今はまだ「声優とネイルの2本柱」とまではいきませんが、声優としての個性が生まれたのはよかったのかなと思います。

あと、ネイルの世界はとにかくみんなめちゃくちゃ褒めてくれて自己肯定感が上がるんですよ(笑)。

ネイルサロンでも、よくお客さんが「めっちゃかわいい!」って褒めながら施術を受けているじゃないですか。ネイルスクールの先生も友達も、日頃から僕のネイルをたくさん褒めてくれるんです。

それがすごく自信につながっていて、ネイルだけじゃなくて「声優としての仕事も頑張っていきたい」という気持ちを後押ししてくれている気がします。

――ネイルを始めたことで、思わぬ良い影響があったのですね。

渡部:
そうですね。影響を与えるだけではなくて、個人的にはけっこう共通している部分もあると感じています。

声優の仕事もネイルも、僕にとっては“作品づくり”という意味ではあまり変わらないと思っていて。明確な違いを挙げるとすれば、“正解があるかないか”なんですよね。

芝居の世界は自分に対してどこまでもストイックにやっていかなきゃいけなくて、答えがないもの。一方で、ネイルはどこかに正解があるんです。

――正解とは、具体的にどういうことでしょう。

渡部:
例えば先ほど紹介した「渡部レモン」のデザインだったら、レモンに見えたらそれが正解じゃないですか。人によってアートのクオリティは違いますけど、人から見て「レモンだ」と分かってもらえて、「かわいい」と言ってもらえたら正解だと思っていて。

でも、声優として挑む表現の世界においては、絶対的な正解は存在しないんですよね。

キャラクターやシチュエーションによって正解とされる演技は何通りもありますし、自分にとって正解だと思ったものが、他人にとってはそうでなかったりする。

もちろん、それはそれで追求する楽しさがあると思っているので、僕にとってはネイルも声優の仕事も、どちらもすごく魅力的なんです。なのでこれからも、両方極めていきたいなと思っています。

――すばらしいです。ネイルについて、これから挑戦したいことはありますか?

渡部:
たくさんありますが……とりあえず今はニュアンスアートを極めていきたいなと思っています。もっと表現のレパートリーを増やしたいんですよ。

あと、いつか自分のネイルサロンを開業できたら楽しそうですね!

――声優さんが開業したネイルサロンだと、同業者の方も通いやすそうですね。

渡部:
そうですよね。声優業界からネイル業界に突撃しに行きたいです(笑)。また、いつかネイル好き声優の方と何かしらコラボできたら嬉しいですね。

――ネイル声優同士の対談とか、すごく面白そうです。

渡部:
いいですね! ぜひnumanさんで実現した時にはぜひ呼んでください(笑)!

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執筆:双海しお 撮影:井上ユリ 取材・編集:柴田捺美、阿部裕華

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