しゃがんで利用? ブルガリアの半地下コンビニ「クレックショップ」 誕生きっかけは“戦争の名残り”

ブルガリアのコンビニは「しゃがむ」?

深夜や早朝に食料や日用品が購入できる24時間営業のコンビニ。とても便利ですよね。日本は世界的に見てもコンビニの数が多く、海外観光客が驚くほど。つまり国が変わればコンビニ事情も変わるということで、今回注目した国はブルガリア。ヨーロッパ最古の都市のひとつに数えられる首都・ソフィアには、一風変わったコンビニ「クレックショップ」があるのだとか。どのような店なのか、ブルガリア情報を発信する「日本ブルガリア協会」(東京都千代田区)に教えてもらいました。

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ブルガリア語で「しゃがむ」を意味する「クレック」を冠したクレックショップ。その理由は、ほとんど店舗が地下に作られ、店員とやり取りするには客がしゃがまなければならないから。要するに「しゃがむ店」です。首都・ソフィアで生まれ、街中に点在しています。スーパーマーケットのような大型店とは違い、時間をかけず飲み物や菓子などが買えるうえ24時間営業という手軽さが魅力なのだとか。そう聞くと日本のコンビニと似ているようにも思えますが、何がしかの違いはあるのでしょうか?

「クレックショップ最大の特徴としては、やはり多くの店舗が半地下にある点でしょう。客は小窓から店員に購入したい商品を注文するスタイルとなっています。また、コンビニのようにチェーン展開はされておらず、個人が運営しているというところも特徴のひとつです」(日本ブルガリア協会)

クレックショップでは、主にミネラルウォーター・ジュース・飲むヨーグルトといった飲料品やチョコレート・クッキー・クラッカー・ナッツ・ポテトチップスなどのスナック類、たばこなどが並びます。さらに瓶ビールをはじめとした酒の種類も豊富です。

「店内が狭いため、基本的に電子レンジや食べ物を入れる大きい冷蔵庫は設置できません。また、車の排気ガスや落ち葉などのごみが道路から店内に入ってしまう恐れもあるので、常温で保存でき、しっかり包装されているもの以外は扱わないことが多いです」(日本ブルガリア協会)

“半地下”というロケーションならではの商品ラインナップがおもしろいクレックショップですが、そもそもどうしてそのような場所に作られているのでしょうか?

「ロシア(当時はソビエト連邦)とアメリカの冷戦による影響が大きかったようです。冷戦中、ソフィアにあった集合団地(マンション)の地下には、防空壕が作られていました。80年代の終わり頃、冷戦が終わりを迎えると、ブルガリアの政権が社会主義から自由民主主義に変わります。そこで民営化が始まり個人でもお店を運営することが可能になったため、かつてあった防空壕がクレックショップへと転身をとげたのです」(日本ブルガリア協会)

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首都・ソフィアでは当たり前の風景だというクレックショップ。最近では小型スーパーも増えたそうですが、ブルガリアを訪れることがあれば利用してみるといいかもしれません。

(取材・文=つちだ四郎)

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