加速器の競合計画が相次ぎ浮上 県ILC推進協議会、盛岡で講演会

ILCの意義や世界の動向に理解を深める参加者。手前は村山斉教授=1日、盛岡市

 岩手県国際リニアコライダー(ILC)推進協議会は1日、盛岡市内のホテルで公開講演会を開いた。米カリフォルニア大バークレー校の村山斉教授、グローバリゼーションリサーチインスチチュート(東京)の内永ゆか子社長が約480人を前に講演。複数の次世代加速器計画が進む世界の緊迫した状況を共有し、日本の発展につながるILC実現に向け「早急な対応が必要」との認識を確認した。

 村山氏は欧州で「FCC」、中国で「CEPC」という周長約100キロ規模の次世代円形加速器の建設計画があるとし「欧州では2026年までに戦略が決まる。中国政府は30年までの5カ年計画に載せるかもしれない」と近年の世界情勢の変化を説明した。

 自身が5月まで米政府の科学諮問委員会(P5)の委員長を務めた際、FCCまたはILCが実現しそうな場合、支援すべきだとの報告書をまとめており「日本でILCができると明確になれば米国は必ず乗ってくる」と強調した。

 内永氏は、日本が米国と違って採算性に固執して技術に投資しないため「ビジネスに発展しない」と指摘。優秀な人材と資金を集め、新たな挑戦をせずして「変化の激しい時代にイノベーション(技術革新)は起きない」とILCの重要性を訴えた。

 実現すれば「世界から1万人が集う。人口構成も、発想も、いろいろな仕組みも変わる」とし、建設候補地の本県に向け「『内なるグローバル化』を進めてほしい。日本の活性化にもつながる」と期待を示した。

 同協議会長を務める谷村邦久・県商工会議所連合会長は「ILC誘致は正念場だ。建設候補地としての活動を結集し、国内外へ精力的にアピールしないといけない」とあいさつした。

 ILCは地下約100メートルに直線型加速器(初期延長約20キロ)を設置し、宇宙創成の謎に迫る国際プロジェクト。素粒子の電子と陽電子を光に近い速度でぶつけ、未知の物質や働きなどを調べる。岩手、宮城両県にまたがる北上山地(北上高地)が候補地とされる。

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