「どれもやっちゃいそう」 お風呂での溺水事故でまずやるべきこと 消防局の教えに「もっと広めてほしい」の声

誰でも遭遇し得る浴室内溺水事故。正しい対処法は(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

水難事故が多い季節になりました。しかし、家の中でも溺水による不慮の事故は起こりかねません。その発生場所は浴槽。大人が浴槽内で気を失っていた場合、なるべくスムーズに救出したいですが、正しい知識を持っていないと時間がかかったり、失敗してしまったりする可能性があります。尼崎市消防局は、公式インスタグラムアカウント(amagasaki.119.fd)で救出方法を紹介し、「勉強になりました」など感謝の声が寄せられています。

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湯を張った状態での救出活動はどうなる?

疲れて寝落ちしてしまったり、突然の不調で意識を失ったりして、口と鼻が湯に浸かり窒息してしまう浴室内溺水。とくに、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は高い水準で推移しており、厚生労働省の「人口動態調査」によると、家や居住施設の浴槽における溺水による死亡者数は2011年以降、交通事故による死亡者数より多くなっています。

もし、浴槽内で気を失っている人を発見したらどうすればいいのでしょうか。同局は、実際に浴槽で脱力した人を運び出す様子を動画で紹介しています。

まずは、湯が張られた浴槽に寄りかかった状態で意識を失っている入浴者の背面から、脇の下に腕を入れて、胸の前で両手を組んで引き上げようとします。浮力を使って上げられるのではと考えがちですが、これではうまくいきません。

続いて、ふたりがかりでの救助です。ひとりは先ほどと同じように脇の下から腕を入れて持ち上げようとします。そして、もうひとりがその横から下半身を持ち上げようとしますが、うまくいきません。さらには、ひとりが頭から湯に入り下半身を持ちますが、これもダメです。

まずは湯を抜いて浴槽の内外から力を合わせて持ち上げる

持ち上げることができない場合は、まず浴槽の栓を抜きます。湯を抜けば、体が水に沈んでこれ以上溺れるのを防ぐことができそうです。

そして、動画では引き続き、ふたりで救助を行います。ひとりは入浴者の脇の下から腕を通し、もうひとりは浴槽内に入って入浴者の膝の裏を持って持ち上げます。

次はバスタオルを使った方法。タオルは脇の下やおしりの下に入れて使用します。濡れた体は滑りやすいので、素手よりも力が入りそうです。あとは、先ほどまでと同じように、ふたりがかりで持ち上げます。

「誰にでもあり得る事例なので覚えておきたい」

「【浴槽からの救出方法】」とコメントが添えられた動画は、大きな反響を呼びました。コメント欄には「浮力で助けることができると思っていました」「焦ってそのまま救助することに必死になりそうですが、先に知っていれば思い出して行動できそうです!!」「なるほど、どれもやっちゃいそう」「勉強になりました」など、湯を抜くことを知らなかったという人からの声が。

また、「身内がお風呂で亡くなりました。そのとき救急隊の方に、『まずは焦らずに栓を抜いてください』と言われたそうです。パニックになるとまずは(浴槽から)出さなきゃってなりますよね。こういうのテレビとかネットでもっと広めてほしいです!」「認知症の方がお風呂の出方がわからなくなっちゃって家族が困ったという話を聞いたことがあります。誰にでもあり得る事例なので覚えておきたいです」など、体験談も寄せられています。

もしもの場合は冷静さを失いがちですが、協力者がいなかったり、体格差があったりと救出が難しいこともあります。そうした場合は無理に浴槽から引き上げようとせず、可能な範囲の対応を心がけることも大切です。まずは浴槽の栓を抜き、それも難しい場合は、フタに上半身をのせるなどして窒息しない状態を確保してから、すぐに救急車を要請してください。

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