鈴木愛とトレーナーの二人三脚裏話 ヒザの痛みから回復→通算20勝までの“好循環”【カメラマン南しずかの米ツアー小話】

鈴木愛が取り組むトレーニングとは?(写真は全米女子オープン)(撮影:南しずか)

畑岡奈紗、古江彩佳、渋野日向子らに加え、今季からは稲見萌寧らが新たにメンバー入りし、日本勢9人が出場している米国女子ツアー。その動向にも注目だが、試合以外や海外勢のおもしろ話まで伝えるのはなかなか難しい部分も…。そこでツアーを長年取材しているカメラマン・南しずか氏が気になるネタをピックアップ。これを見れば“米女子ツアー通”になれるかも!?

どこかしらに痛みを感じていれば体を動かすのはつらい。だが、動かなければ筋力は低下する一方…。これは誰にでも起こりうることだ。数年前の鈴木愛も、そんな悪循環に陥っていた。

身体が資本の仕事であるものの、筋力の低下とともに、ゴルフの成績も不振に陥っていた。そして、2018~19年頃にトレーナーの工藤健正氏に出会い、その悪循環を”好循環”に変えていくことになる。

工藤トレーナーが最初に診たとき、「明らかにヒザの内側の内側広筋に左右差が出ていたことが印象に残っています」と思い返す。まずは痛みの原因を突き止め、現状を把握し、適切な処置を施すことから始めた。鈴木の場合、ヒザの痛みを緩和するために継続してケアを行った。

「マッサージなど、ある程度ケアをすれば痛みはラクになりますが、それは一時的な効果です。筋肉がなければ、また同じ動きをした時に痛みが生じます」

ケアと並行してトレーニングをすることが大事。毎日のウォーミングアップの前に、3種類のトレーニングメニューをそれぞれ15回ほど行うことを鈴木に課した。「最初からハードなメニューを立てると(しんどくて)やらなくなっちゃうこともあるので。日常生活で歯磨きするみたいに、いつもできる簡単なトレーニングメニューを組みました」。

鈴木も「え! こんな簡単なトレーニングでいいの? これってトレーニングっていうの?」と驚いたという。“地味トレ”だが、効果はてきめんだった。毎日少しずつのトレーニングで段々と筋肉がつき、力が戻ってきた。力が入るようになると、さらに少しずつトレーニングの量や負荷が増えて痛みも引いてきた。痛みがなくなれば、練習などに時間を割けるようになった。

まさに“好循環”だった。

16年の頃から抱えたヒザの痛みから解放された。「工藤さんはトレーニングとマッサージが上手。トレーニングを組むのも、しんどかったら軽めにしたりとかコミュニケーションをとってやってくれるのでありがたいです」と、鈴木は工藤トレーナーを称える。

同時に、良い状態を保てているとも感じている。「この2~3年は『1日しか良い結果が出ない』とか『1週間しか良い状態が続かない』というのが多かった。いまは1回良いとなると、その状態が持続する。調子が落ちそうな時でも、グッと下に落ちることはなくなりました」。肉体改造の結果は結果として表れ、今年3月に「明治安田生命レディス」で約2年ぶりとなる復活優勝。2週連続Vも遂げ、通算20勝を飾った。

工藤トレーナーは、ケアもトレーニングも継続が重要だと言う。「(トレーニングする過程で)一時的に痛みがなくなることもあれば、一時的に悪化する時もあります。一喜一憂せず、ちゃんと続けていくことが大事です」。継続は力なり。これが好循環を生み出すカギでもある。(取材・文/南しずか)

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