「また産みたい」と思えるお産を…県内で一番多く命が誕生する産婦人科 福島

福島県内で生まれた子どもの数は、2013年はおよそ1万4500人あまりでしたが、その後は過去最低を更新し続け、去年は9000人あまりでした。10年前と比べ、5000人以上減少しています。

また、女性1人が生涯に出産する子どもの数合計特殊出生率も、去年は1.21と、こちらも毎年減少しています。

少子化が深刻化する中、県内で一番多くの命が誕生する病院が、いわき市にあります。「お産の達成感を味わってほしい」と、妊婦に寄り添っています。

初産を「達成感のあるもの」に

6月12日に誕生した、新しい命。母・未来さんは、生まれたばかりの我が子を愛おしそうに見つめます。

母・未来さん「宝物です。元気に育ってくれればそれだけで十分」

この奇跡の瞬間に日々立ち会うのが、いわき市小名浜の村岡産婦人科医院です。震災・原発事故の際も1日も休むことなく、これまで“命の誕生”に向き合ってきました。こちらで生まれた子どもは、過去5年間で4049人。県内の医療機関で、最も多い数です。

少子化が深刻化するなか、最も大切にしていることがあります。それは、初産を「達成感のあるもの」にすることです。

村岡産婦人科医院・村岡栄一院長「なんとかしてお産したときに、やったーと達成感がある、ハッピーな気持ちになってもらえる、それを味わってほしい」

陣痛への不安を和らげるために

「新たな命を宿すー」初めての出産は、未知の世界。常に不安と隣合わせです。

初産の妊婦「初めてなので何もわからなくて、不安でいっぱいって感じです。(一番は)痛みですよね、痛くなければいいなとは思いますけど」 初産の妊婦「やっぱり陣痛が一番怖いです。痛みに耐えながら頑張りたいなって思いました」

多く挙がったのは、「陣痛の痛み」です。こちらでは、陣痛の不安を少しでも和らげようと、ある取り組みを行っています。

妊婦たちがリズミカルに踊っています。その名も「くるくる体操」。バランスボールに乗ったり、音楽に合わせて大きく体を動かしたりします。臨月に入る36週以上の初産の人が対象で、負担のない範囲で運動することで陣痛が促されるといいます。

参加した人「久しぶりに動いた感じで楽しかったです。みなさんと一緒にできるから“みんなで頑張ろう”と気持ちになりました。前向きになれた気がしますね」

さらに、この教室では、妊婦の骨盤の状態をチェックして、赤ちゃんが産道を通りやすくなる体勢を学びます。

参加した人「スムーズに生まれてくる体操の仕方とかを学べて良かったです」

村岡産婦人科医院では、陣痛と陣痛の間の時間をじっと待つのではなく、適度に体を動かして“陣痛を促すこと″をすすめています。

村岡栄一院長「体を動かすことが大事。体を動かすと気持ちも少し前向きになる」

「次もまた頑張ってみよう」という気持ちを

出産を控えた妊婦同士が交流することで、お互いが抱える不安を解消させる狙いも。こちらの女性は、6月11日に出産を終えました。

出産した女性「(取り組みを)やって良かったなと思いました。今まで以上に本当に出産をするんだなと、気持ちも変わりましたね。よく目に入れても痛くないと言うけどそういう感じですね、大切な存在です」

産後ケアにも力を入れています。体力が消耗している母親が少しでも休めるように、赤ちゃんを一定時間預かったり、子育ての悩みを相談したり、退院後のサポートも充実させています。

産後ケアの利用者「自分の体の状態と子どもの成長(が不安)。自分ではできないケアをしてもらえるのでだいぶ助かりますね」

取材した前日にも、新たな命が誕生していました。

父親「きょう初めて会ったので、いま初めて抱っこしています。ずっと会いたかったので…」

村岡院長「(自ら積極的に向き合えば)お産したときの達成感と喜び感がやっぱり違います。頑張った、嬉しいと、そうすると次もまた頑張ってみようかなという気持ちになる。少子化対策に結べば一番いいなと思います」

「また産みたい」。1人でも多くの女性が、そう思えるお産を提供すること。村岡産婦人科は、これからも命の誕生に向き合っていきます。



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