猪苗代湖、ボート規制施行 違反者は罰金、死傷事故再発防止へ啓発

(写真上)動力船航行禁止区域を示すブイ、(写真下)中田浜の船舶航行制限区域と自主ルール

 猪苗代湖で2020年9月に起きたプレジャーボートによる死傷事故を受け、福島県は1日、河川法に基づき、プレジャーボートなど動力船の航行を禁止する区域を設けた船舶航行規制を施行した。違反者には罰金が科せられる。初日は県警などによる取り締まり出動式が猪苗代町の翁島港マリーナで行われ、関係者が事故防止への誓いを新たにした。

 1日の施行に合わせ、現地には区域を示す看板やブイを設置した。河川法の適用で県警などのパトロールにより、指導や取り締まりが強化される。

 出動式には猪苗代湖を管轄する猪苗代、郡山北、会津若松の各署員や関係団体の約50人が参加し、広報啓発や警戒活動を行ってパトロール体制を強化した。警備艇「きびたき」や県警ヘリ「ばんだい」も出動して猪苗代湖を巡った。

 事故が起きた会津若松市湊町の中田浜では、湊町観光協会や事業所がルールの周知に力を入れている。同観光協会の小林茂政会長(73)は「協会や事業所が窓口となって(レジャー客がルールを)『知らなかった』ということがないように周知徹底を図りたい」と、本格的な行楽シーズンを前に気を引き締める。

 ボートや水上バイクの販売・管理を手がける中田浜マリーナは20年の事故を受け、利用者に対する安全管理の指導を強化。航行前に周囲の安全確認の仕方や基本的な操船技術を対面で時間をかけて伝えているとし、荒井久依(ひさより)社長(58)は「引き続きチラシなどでルールを周知し、利用者に注意を呼びかけたい」と話した。

 利用区域、ルール明確化

 福島県が1日に施行した猪苗代湖の船舶航行規制では、プレジャーボートなどの動力船が航行できない「動力船航行禁止区域」を25の浜ごとに定めた。河川法に基づき、動力船と、カヌーや手こぎボートなどの非動力船がそれぞれ航行できない区域を明確化することで、安全対策を強化した。

 「動力船航行区域」では、動力船は徐行して航行できる一方、非動力船は航行できない。国の運輸安全委員会による事故報告書で、原因の一つとして「利用区分が徹底されていなかった」と指摘されたことを受けた対応で、違反者には30万円以下の罰金が科せられる。

 このほかに自主ルールを設定。河川法に基づく措置ではないものの、利用禁止区域や、利用目的に応じたルールを定めた。中田浜では、ボートなどに引かれて水面を滑走する「トーイングスポーツ」の順番待ちの間に事故が起きたことを踏まえ、トーイングスポーツ利用者の乗降場を設けた。

 内堀雅雄知事は1日の定例記者会見で「県警、関係者と連携し、パトロールを行っていく」と述べた。

 ■猪苗代湖プレジャーボート死傷事故 2020年9月6日、会津若松市湊町の猪苗代湖の中田浜で、ライフジャケットを着て湖面に浮いていた4人にプレジャーボートが衝突。このうち3人がスクリューに巻き込まれ、千葉県野田市の男児=当時(8)=が死亡し、母親ら2人が重傷を負った。ボートを操縦していたいわき市、元会社役員の男(47)が業務上過失致死傷罪に問われ、23年3月に福島地裁は禁錮2年の実刑判決を言い渡した。被告側は控訴している。

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