「自分でいいのかなと不安も」明治大“キャプテン”中村草太が今季1冠目に安堵「悩み、試行錯誤しながら、やり切りたい」

“常勝”の名をほしいままにする明治大が、今年度の“1冠目”を早くも獲得した。

6月30日、全国大会のひとつである総理大臣杯の関東地域予選を兼ねた「アミノバイタル」カップ2024第13回関東大学サッカートーナメント大会の決勝。

激しい雨が降り注ぐなか、ともに関東大学リーグ戦1部でしのぎを削り合う日大を3-1で破り、歓喜の雄叫びを上げた。

明治大のキャプテン、中村草太は「素直に嬉しい。でも、総理大臣杯に向けて、まだまだ通過点」と語り、こう続けていた。

「90分間を通して自分たちが思い描くような展開ではなかったけれど、一人ひとりの勝ちたいという気持ちが強く、それがプレーにも表われていたと感じます。前半は試合の主導権を握って、自分たちがやろうとしているサッカーができました。でも、後半に入って相手がメンバーを代えて、いろいろ変化してくるなかで、対応しきれず、失点してしまった。

試合のペースをもっていかれた時、どう押し返していくか。チームとしての戦い方や方向性を、もう一度、そろえていかなければいけなかった。そこが足りなかったし、自分たちの課題かなと感じます。でも逆に、足りない部分というのは成長できるポイントでもあると思うので、今後に向けて高めていきたいです」

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新チームがスタートし、およそ半年。キャプテンという立場や自覚、責任がそうさせるのだろう。中村の発言は、自身のことよりチーム全体を見渡しての内容が増えてきた。

「自分がキャプテンでいいのかなと、正直、不安に思うところもありながら(苦笑)、チームのために何ができるか、日々、考えています。そういう意味では、ひとつタイトルを獲って、ホッとしましたし、自分としてもチームとしても次につながっていくという手応えを感じています」

5大会ぶり4回目の優勝を果たした明治大は、アミノバイタルカップのラウンド32から参戦。タイトル奪還への口火を切ったのが、誰あろう、中村だった。6月19日、國學院大との初戦で、前半20分に先制点を奪い、チームの勝利に貢献した。

そんな大黒柱が目ざすキャプテン像とは、一体何だろうか。

「明治大の歴代のキャプテンを見ると、いろいろなタイプの方々がいましたが、ピッチのなかでは言葉よりプレーで示すこと、背中を見せ続けることが、一番自分らしいかなと思います。ただ、ピッチ外での役割も求められるので、そこは少しずつチャレンジしていけたら、と。

チームをまとめていくにはどうしたらいいか、日々、悩みながら、試行錯誤しながら、1年間、やり切りたいです。それによって自分なりのキャプテン像ができ上っていくと考えています」

これまでのサッカー人生のなかで、キャプテンの経験は「ない」に等しい。「中学3年生の時に任されたこともあったけれど、試合でキャプテンマークを巻いただけ」と苦笑する中村が、明治大のキャプテンに就任した経緯をこう語っている。

「まず、自分たち4年生のなかで、話し合って決めるという前提があって、栗田(大輔)監督にもこちらの考えを伝えつつ、何度か、やり取りをしながら、最終的に自分がやることになりました。4年生のみんなから“任せるぞ”と推薦してもらったので、“やるしかねぇーか”と(苦笑)。ただ、あまり自分ひとりで抱え込まず、副キャプテンの二人に支えてもらいながらやっています。そこは本当に感謝しかないです」

キャプテンつながりの話題にひとつ触れておくと、アミノバイタルカップの決勝でぶつかった日大のキャプテンは、中村の前橋育英高(群馬)時代の同期である熊倉弘貴だった。

「高校時代に3年間、切磋琢磨してきたので、仲間であり、ライバルであり、お互いに刺激し合える間柄です。日大には弘貴のほかにも(双子の兄弟である熊倉)弘達だったり、後輩たちも試合に出ていたので、すごく勝ちたかった。同じピッチに立ってタイトルを争ったわけですけど、頑張らなくちゃと、自然に思える試合でした」

そして、中村は、こう付け加えた。

「関東大学リーグで、また対戦するので楽しみです。今度は無失点で、日大を圧倒したいと思います。相手はリベンジという強い気持ちで向かってくるでしょうから、はね返したいです」

アミノバイタルカップ初制覇を目論んでいた日大の夢を打ち砕いた明治大。試合終了のホイッスルが響き渡ると、90分間、チームのために奮闘し続けたキャプテンの中村は両手を膝にあてたまま、しばらく動けなかった。常勝の看板を背負う気概が、そこににじみ出ていた。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)

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