劇的逆転勝利の立役者ベリンガムに「これほど重要で美しいゴールは他にない」と賛辞! 一方で苦戦のイングランドに対しては現地メディアが問題点を指摘【EURO2024】

現地時間6月30日に行なわれたEURO2024ラウンド・オブ・16で、イングランド代表はスロバキア代表を延長戦の末に2-1で下した。

前回大会のファイナリストで、戦前は優勝候補の筆頭にも挙げられながら、グループステージではプレー内容の悪さで各方面から批判を浴びせられていた“スリーライオンズ”は、このノックアウトラウンドの初戦でも25分に格下と思われた相手に先制を許し、ゴールを奪えないまま後半アディショナルタイムに突入。初出場のアイスランドに無残な敗北を喫した2016年大会の悪夢が再現されるかと思われた。

しかし、試合開始から95分が経過したところで、右タッチラインからのスローインをマルク・グエイが頭でゴール前に送ると、これに反応したジュード・ベリンガムが身を躍らせ、オーバーヘッドでボールをゴール右隅へ。この劇的なゴラッソで追いついたイングランドは、延長戦開始直後のセットプレーから、エベレチ・エゼのダイレクトボレーがイバン・トニーの頭を経由してハリー・ケインの決勝ヘッド弾に繋がり、以降はこのリードを守り切っている。
土壇場の同点ゴールで救世主となったベリンガムについて、ガレス・サウスゲイト監督は、前日に21歳となった背番号10を得点直前に交代させようとしていたことを明かした上で、「それでもジュードは能力を示した。彼がこのような結果を出してくれることは分かっていた」と語り、決勝点を挙げたエースのケインも「信じられないゴールだった。我が国の歴史の中でも最高のゴールのひとつだ」と、頼もしい後輩に賛辞を贈った。

現地メディアは、英国の日刊紙『The Guardian』は、「94分の苦労と痛みが過ぎ去り、イングランドがイングランドらしくなったところで、まさに今こそスロバキアのネットに華麗なオーバーヘッドボレーを決める絶好のタイミングだと判断したのは、21歳になったばかりの特別な存在だった」と綴り、「ベリンガムはすでに非凡な存在であり、非常に才能に恵まれ、信じられないほど成熟した21歳だ」と、改めて自国の至宝を絶賛している。

また、彼が普段拠点とするスペイン・マドリードのスポーツ紙『MARCA』は、「ベリンガムはクリスティアーノ・ロナウドのようなオーバーヘッドで、セルヒオ・ラモスのように試合終了間際にゴールを決めて延長戦に持ち込み、ラウンド・オブ・16での(イタリアに次ぐ)新たな大惨事を避けた」と伝え、「これほど重要で美しいゴールは他になく、彼は確実にこれからも多くのゴールを決めるだろう」と高く評価するとともに、今後への期待を示した。 このような劇的な勝利により、イングランドは自国で開催された1966年ワールドカップ以来のタイトル獲得に向けて勢いを得たと言えるが、しかしこの試合でも95分間は無得点が続くなど内容が伴った勝利とは言えず、ここまで国内外から厳しい目を向けられている指揮官は、スイスとの準々決勝を見据えて「全く異なる戦術上の問題が投げかけられるだろう。それはこれまでの試合と同じくらい難しく、複雑だ。そして、解決策も異なる」と語っている。

多くの現地メディアは、FIFAランキングで40位も下の相手に苦しんだイングランド(5位)の戦いぶりやサウスゲイト監督の采配を酷評し、その問題点を指摘しているが、その中でサッカー専門サイト『GIVEMESPORT』は、「スロバキア戦でサウスゲイトが間違えたこと」と題した記事で、明確に3つのポイントを挙げた。

ひとつ目は、左サイドで連係が欠如しているキーラン・トリッピアーとフィル・フォデンを起用し、指揮官が自身の主張を貫いた結果、「攻撃は鈍く、守備も弱いように感じられた」(同メディア)。続いてふたつ目は、負けているにもかかわらず、ハーフタイムで選手交代が少なかったことで、「ベリンガムが素晴らしい活躍を見せなければ指揮官は大きな代償を払わされていただろう」。
そして最後は、今大会中も再三話題となっているコール・パーマーの出番の少なさ。多くの人々が、このチェルシーのエースがスタメンに名を連ねるべきだと主張しているにもかかわらず、スロバキア戦が今大会2試合目の出場で、それも66分からだった。それでも同メディアは、「ゴールやアシストという目立ったインパクトは残せなかったものの、このサイドプレーヤーは出場するとすぐにチームに緊迫感を与えた」と、その効果を強調している。

初の欧州制覇のためには、まだ幾つも試練が待ち受けるイングランドは、これらの指摘された問題をいかに解決していくのか。今後も選手のパフォーマンス、指揮官の采配ともに、要注目である。

構成●THE DIGEST編集部

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