女優が「アップグレードしろ」機内食足りずに「土下座しろ」…ANA・JAL「カスハラ同盟」の裏にある、過酷なハラスメント実態

6月28日、共同で記者会見した全日空(左)と日本航空の担当者(写真:つのだよしお/アフロ)

6月28日、ANAとJALが共同で、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策方針を発表した。いわば “カスハラ同盟” ともとれるこの「共同声明」だが、背景には、近年の航空機内での過剰なハラスメントが注目されていることがある。

2023年5月には、歌手の吉幾三が利用した飛行機内に、乱暴な言葉遣いで客室乗務員(CA)に接する「横柄な国会議員がいた」ことを自身の公式YouTubeで指摘し、話題になった。

吉は、2024年3月、送られてきた現役客室乗務員を名乗る匿名の手紙を紹介。そこには「到着の遅れには鬼の首を取ったような言い方でクレーム」「枕は2つ用意させる」といった迷惑行為とともに、自民党の長谷川岳参院議員(北海道選挙区)の名前も明記されていた。

「長谷川議員も自身のホームページで経緯を説明。3月22日には記者団に『指摘された一部は事実と異なる』としながらも、乗務員に注意したことは認めました。それ以降、北海道庁職員などから『長谷川議員にパワハラを受けた』といった “告発” が相次ぎ、長谷川議員は陳謝しました」(政治担当記者)

長谷川議員のケースがカスハラに該当するかについてはさまざまな意見もあるが、その後もお笑い芸人のフワちゃんが、頑なにシートベルトを締めずCAとトラブルになったことが報じられた。しかし、こうした “過剰な要求” をしてくるのは、なにも芸能人や議員だけではない。

「今回 “カスハラ同盟” を結んだ2社が把握した2023年度のハラスメントは、あわせて600件になったそうです。電話番号をしつこく聞かれたり、飲み物のコップを投げつけられたり、ギャレーと呼ばれる配膳室を覗かれたりするケースもあるそうです。

今回、カスハラに該当する行為を暴行や誹謗中傷など9つの類型に整理し、こうした行為には組織としてきぜんとした対応を取るとしました」(週刊誌記者)

理不尽な要求にも、なかなか抗うことができないCAだが、実際にどういったカスハラがあるのか、外資系航空会社でおもにアジア太平洋路線を担当する現役CAに聞いた。

「1990年代にトレンディドラマで大活躍した女優さんは『私、女優の○○なんですけど、エコノミークラスからビジネスクラスにアップグレードしてください』とリクエストされました。

差額のお支払いはありませんでしたので、『そういった(女優という)理由でのアップグレードは致しかねます』とお断りしました。憤然とされ、ずっと不機嫌でした。

ファーストクラスやビジネスクラスでは日本食が人気なので、お客様にはなるべく事前予約をいただいております。ですが、予約をされていないお客様の多くが日本食を希望されて、数が足りなくなったことがありました。

そのため『なんで(日本食が)ないんだ。謝れ、土下座しろ』と言われ……屈辱的ではありましたが、従いました。お客様は私の土下座を見ながらお食事をされていましたよ。アルコールが無料なので、飲み放題の居酒屋のように飲んで、ベロベロになるお客様もいらっしゃいます。

また、日本の航空会社がお子様におもちゃを配ることから『どうして、あなたの会社にはおもちゃがないの』と日本人のファミリーから言われるのは毎度のことです」

お客様は神様ではないことを肝に銘じたい。

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