【続報】大分の親子強殺 弁護側は即日控訴へ「死刑」判決の理由詳細

大分地裁の裁判員裁判で初の死刑判決

佐藤被告(2021年)

検察の求刑通り、死刑判決です。

2020年に大分県宇佐市で起きた強盗殺人事件の裁判員裁判で、大分地裁は2日、無罪を主張していた被告の男に対し、死刑を言い渡しました。

大分地裁での死刑判決は1980年以来で、2009年から始まった裁判員裁判では初めてです。

逮捕は事件発生から約1年8か月後

宇佐市の事件現場(2020年)

この事件は2020年2月、大分県宇佐市安心院町の住宅で住人の山名高子さん(農業・79)と長男の博之さん(郵便配達員・51)が遺体で見つかったものです。

およそ1年8か月後に大分市の会社員・佐藤翔一被告(39)が逮捕され、その後、起訴されました。

佐藤被告は山名さん親子を包丁やはさみなどで何度も突き刺して殺害し、現金およそ8万8000円を奪ったなどとされています。

被告「犯人ではない」無罪主張

裁判に臨む佐藤被告(初公判)

裁判員裁判は2024年5月から始まり、初公判で佐藤被告は「すべて僕はやっていません。僕は犯人ではありません」などと訴え、無罪を主張しました。

これまでの裁判で検察側は被告には160万円を超える借金があり、返済のために犯行に及んだなどと動機を説明。

被告の車から被害者の1人のDNA型と完全に一致する血痕が見つかっているなどと根拠を指摘しました。

これに対し、弁護側は「被告は事件に巻き込まれた」と無罪を主張。

「事件当日、ユーチューバーを名乗るプロレスマスクの男たちと合流し、車で現場近くに向かった。トランクに血の付いた服などが入った袋を積み込まれた」などと反論しました。

検察「ストーリーは荒唐無稽」死刑求刑

大分地方裁判所

そして、6月17日、検察側は「ストーリー自体が荒唐無稽。残虐で極めて強固な殺意に基づく犯行」などとして大分地裁の裁判員裁判としては初めて死刑を求刑。

一方、弁護側は「犯人であることの決定的な事実はない」などと改めて訴え、裁判は結審しました。

こうした中、2日の午後3時から大分地裁で判決公判が開かれています。

注目される裁判には多くの人が訪れ、傍聴は抽選となりました。

佐藤被告はスーツ姿にマスクを着用して出廷。

裁判長は主文を後回しにし、判決理由を読み上げ始めました。

佐藤被告は身動きせず、まっすぐに裁判長を見つめ、判決理由を聞いていました。

求刑通りの死刑判決

傍聴を求める多くの人

判決理由では、佐藤被告の車から被害者のDNAが採取されたことを指摘。車を使っていたのは被告だと推認でき、犯行によって生じたDNAが被告の車に持ち込まれたと考えられ、犯人性を強く推認させると指摘。被告人が犯人だと認められ、合理的な疑いを挟む余地はない。反省の態度は示されておらず刑事責任は極めて重い。などとして検察側の求刑通り、佐藤被告に対し死刑を言い渡し、佐藤被告の無罪の主張は退けられました。

量刑の理由

量刑の理由(一部抜粋)

・被害者宅に侵入当初から殺害を計画していたものではなかったのであるから、高子さんに出くわした際などの心理状態は少なからず切迫したものと考えられ、各殺害態様に相応の影響が及んだ可能性は否定できない。

・しかし、その点を踏まえて検討しても、防御創が少なく早々に反抗を抑圧されていたと考えられる被害者らに対する殺害行為の態様は、瀕死の状態となった後も攻撃を加え続けてとどめを刺すという、極めて強固な殺意に基づく執拗かつ残酷なものであり、生命侵害の危険性が高く、生命軽視の度合いが甚だしい。

・もとより何ら落ち度のない2名の生命が奪われた結果は重大。遺族らの悲痛な感情は十分理解できる。

大分地裁の裁判員裁判で初の死刑判決

・被告は、自身の借金や苦しい経済状況について、妻や両親に打ち明け、母に相談すれば一定の援助を得ることが可能であったにもかかわらず、それをしないまま、借入や利息分の返済を繰り返す場当たり的な生活を送った末、面識のない被害者方から金品を窃取して利息分の返済に充てる資金等を得ようとしたものであり、その自己中心的で身勝手な動機に酌量の余地はない。

・被告は被害者(高子さん)と出くわした際、逃走することが可能であったのに、その選択をせず、居直り強盗を意図するとともに、口封じのため、高子に対する殺害行為に着手し、その後帰宅した被害者(博之さん)に対しても、同様の目的で、殺害行為に及んだものであり、かかる意思決定、生命軽視の態度は強い社会的非難に値する。

・被告は被害者を殺害した直後から種々の罪証隠滅工作に及び、当公判廷においても不合理な弁解を続け、反省の態度を示していないのであって、犯行後の事情に何ら有利に斟酌すべき点がない。

・以上の諸事情に照らすと、被告の刑事責任は極めて重大といわざるを得ない。

・死刑は究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないという観点および公平性の観点を踏まえ、本件犯行は侵入当初から殺害を計画していたものではないこと、前科がなかったことなど、酌むべき事情を十分に考慮しても、死刑を選択することは真にやむを得ない。

大分地裁によりますと、地裁での死刑判決は1980年以来で、2009年から始まった裁判員裁判では初めてだということです。

弁護側は即日控訴する方針です。

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