文化や芸術振興は訴えても票にならない? 過去2人の知事に県立美術館設立を要望したが…具体的な進展はなし 石川県を例に確信を持つ「経済にも福祉にも利点はある」

「鹿児島県立美術館設立を考える会」の宮永祥子会長=鹿児島市の天文館画廊

〈「託す」2024かごしま知事選より〉

 鹿児島県知事選挙の候補者の公約が新聞に掲載された日、県美術協会など4団体を母体とする任意団体「鹿児島県立美術館設立を考える会」の宮永祥子会長(59)は、美術振興に触れた候補者がいないか紙面に目を通した。

 県都に県立美術館はない。1カ所で大規模な展覧会は開催できず、例えば県美展や南日本美術展は黎明館と鹿児島市立美術館での分散開催となり、来場者から不便だという声を宮永さんは耳にする。

 同会はこれまで2人の知事に美術館設立の要望を出した。「前向きに一緒に考えたい」「県全体の文化振興にどのような機能が必要か、詰める必要がある」という回答にとどまり、具体的な進展はない。

 前回の知事選と同様、候補者には質問状を送った。「県における今後の芸術文化の位置づけとその振興策」と「県立美術館設立の必要性」の2点だ。

 宮永さんは「積極的で実行力のある美術振興への施策立案とその効果に期待したい。可能であれば数値目標まで」と各候補の本気度を測りたいと力を込める。

 2023年、国は芸術の振興と社会的価値向上などを目的とする国立アートリサーチセンターを設立した。「国がアート振興に力を入れ始めているのは、インバウンド(訪日客)誘致、福祉、医療などさまざまな面でメリットがあるからだ」と宮永さんは説明する。

 「アートを通して多様な文化、表現に接することで子どもの創造力や感性が育まれる。就労世代は課題解決に役立つデザイン思考、自由に発想するアート思考につながる」と美術振興の効果を強調する。

 石川県にある金沢21世紀美術館は「新たなまちの賑(にぎ)わいの創出」をコンセプトのひとつとして04年に開館、県外からの観光客を呼び込み、22年度の入館者数は176万人を超えた。「その土地の産物、宿泊などにかけるお金が、同じ北陸の富山、福井に比べて抜きんでている。充実した県立美術館があることで鹿児島のブランド力と経済効果は向上するのではないか」と宮永さんは期待する。

 候補者からの回答は、考える会のフェイスブックなどに掲載。美術団体、そして広く県民に知らせるつもりだ。

〈別カット〉知事選候補者へ質問状を送った「鹿児島県立美術館設立を考える会」の宮永祥子会長=鹿児島市の天文館画廊

© 株式会社南日本新聞社