森保ジャパンがこの領域に到達する日は来るのか...。ベルギー戦で理不尽に映った“フランスの圧倒的な個”【EURO】

現地7月1日、EURO2024のラウンド16でフランスがベルギーを1-0と撃破。スコア以上にフランスがベルギーを攻め立てた試合で際立ったのは、理不尽とも言える“フランスの個の力”だった。

あくまで個人的な見解だが、今大会のフランスは組織的に優れているかと言えば決してそうではない印象だ。組織美という点では、きっとスイス、スペイン、オーストリアのほうが上ではないだろうか。

それでもフランスは負けない。ベルギー戦で何より光ったのは、ケビン・デ・ブライネの強烈ミドルを阻止したGKマイク・メニャンの好守、ロメル・ルカクを封じ込んだウィリアム・サリバのディフェンス、ゴール前でピンチを防いだテオ・エルナンデスのカバーリング、84分に決勝点に繋がるパスを出したエンゴロ・カンテのセンスなど、卓越した個の技術だった。

とにかく、1対1の局面になるとフランスは強い。優れたフィジカル、巧みなボールテクニックなどで優位性を作り出し、相手を呑みこもうとする。エースのキリアン・エムバペはベルギーの厳しいマークもあって決定的な仕事をできなかったが、フランスはエムバペひとりのチームではない。各ポジションにいわゆる“化け物”が揃っていて、敵にしたら非常に厄介な集団だ。

日本はワールドカップ優勝を目指すという。その偉業を達成するには、フランスのようなチームを倒さないといけない。個と個の比較でフランスに未到達の森保ジャパンにとって世界制覇は幻想に近い目標ではないかと、今回のEUROを見てそう思ってしまった。

確かに、カタール・ワールドカップで日本はドイツやスペインとヨーロッパの強豪を破った。実際に戦ってみないと勝負は分からないということは十分に理解している。ただ、それでもだ。EURO2024のフランスを見ていると、絶望的な気分になってしまう。日本が個のレベルでフランスの領域に到達できる日は来るのかと…。

「日本のストロングポイントはチームワークだが、それぞれが自立した選手になって個を高められるかが重要」

ベルギー戦のフランスを見て、ブラジル・ワールドカップ出場決定会見の席でそう言った本田圭佑の言葉を思い出した。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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