なぜ悲鳴嶼行冥は「最強の剣士」と呼ばれた? 実力者集団の柱たちが彼に従う理由とは

ささやかな日常性の垣間見える柱稽古から一転、鬼舞辻無惨との邂逅を果たしついに最終決戦の場・無限城へと突入したアニメ『鬼滅の刃 柱稽古編』。特にラスト2話の怒涛かつ残酷な展開に、これから待ち受ける過酷な戦いを想像して「どうなっちゃうの!?」と動揺した方も多かったことでしょう。

これまでも『鬼滅の刃』に登場するキャラクターたちの様々な魅力を紐解いてきた本コラム。今回ピックアップするのは、柱の最後の一人である岩柱・悲鳴嶼行冥です。

柱合会議での登場からはや数年。なかなかその人となりを知る機会にこれまで恵まれませんでしたが、今回の柱稽古編でようやくその過去も明かされました。今回は来る無限城編の前にさらに一歩踏み込み、悲鳴嶼さんの「真の強さ」に焦点を当ててキャラクターの魅力をご紹介。

テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』第1弾キービジュアル

無限城でついに見る事が出来る、“最強”の戦いっぷりがとても楽しみになる。そんなエピソードを交えて、彼のバックグラウンドを考察したいと思います。
※本記事にはアニメ未登場の内容も含まれます。

大きな身体だけじゃない。岩柱・悲鳴嶼行冥の強さの秘密

柱の中でも随一の大柄さという強烈なインパクトを放つ、岩柱・悲鳴嶼行冥。
それに加えて、お坊さんを思わせるような姿に、涙もろい一面。そして担当声優・杉田智和さんの重厚感ある声と、様々な要素が気になっていたアニメ視聴者も大勢いたのではないでしょうか。

ようやく本格的な登場となった今回のアニメ・柱稽古編で、彼に関してもたくさんの新しい事実が明らかになりました。
昔はお坊さんとして、身寄りのない小さな子どもたちを育てる心優しい青年だったこと。共に暮らしていた大事な子どもたちを鬼に殺され、悲しい過去から鬼殺を始めたこと。大きな身体に反して、盲目という大きなハンデを抱えていること。

しかしそれがあってなお、“鬼殺隊最強”と呼べる強さであること。

特に作中でも伊之助が口にした“鬼殺隊最強の存在”という言葉に、「そりゃそうだよね」と思った人もきっと多かったことでしょう。圧倒的な大柄さはもちろんのこと、柱稽古の中でもダントツで過酷すぎる修行内容も、彼自身の強さを明確に物語るシーンのひとつでしたね。

そんな悲鳴嶼さんの強さですが、それを窺い知ることができるのはこれまでに出た目に見えるシーンだけではありません。鬼殺隊最強の存在とされる剣士たち・柱。その柱の中での悲鳴嶼さんのポジションに注目する事でも、彼のずば抜けた強さを実感する事ができるのです。

目に見える部分だけじゃない…誰よりも長い鬼殺隊歴こそ強さの証

鬼滅の刃で登場する9人の柱たち。悲鳴嶼さんはその中でも、最年長に当たる27歳です。
柱の面々は比較的20歳前後が多い中、2番目の年長者である音柱・宇髄天元と比較しても4歳の年齢差があります。

鬼殺隊を率いる存在の柱たちですが、そんな柱たちをも年長者として率いる悲鳴嶼さん。そう考えると彼は鬼殺隊という集団の中の、実質TOP2とも呼べる人でしょう。

お館様と初めて会ったのは、彼がまだ18歳の時。逆算すると悲鳴嶼さんは、それ以降この鬼殺隊に9年間も身を置いていることがわかります。現柱の中では、鬼殺隊に所属している年数も最長。加えておそらく、柱歴も今のメンバーの中では最も長い人であることでしょう。

アニメではまだ描かれていませんが、風柱・不死川実弥の柱就任時、すでに柱として宇髄、悲鳴嶼、そして今は亡き花柱・胡蝶カナエがいたことが明かされています(原作マンガのコマをよく見てみると、冨岡義勇もどうやら当時すでに水柱だったようですね)。

日々鬼たちと苛烈な戦いを繰り広げ、自分の死がすぐ隣り合わせにある鬼殺隊という環境。それは一般隊士のみならず実力を持った柱にとっても同じです。事実、柱となってからも悲鳴嶼さんは、カナエをはじめ同僚となる柱の死も、度々経験してきたのではないでしょうか。

次々と死んでいく仲間や後輩剣士たち。その中で9年間も鬼殺隊士として、あるいは柱として、現役最前線で何度も死線を潜り抜けてきた。その実績こそが何よりも、彼の強さが並大抵のものではないと物語っているのです。

ダントツのパワー≠最強?悲鳴嶼の本当の強さは“冷静さ”にあり

重ねて彼の“強さ”と呼べる部分を具体的に見てみると、それは決して体格の大きさ由来の“力の強さ”だけではないこともわかります。
ずば抜けた体躯を持つ彼は、確かに鬼殺隊一のパワーの持ち主でもあることでしょう。しかしそれと同じかそれ以上に、“冷静さ”もまた悲鳴嶼さんの大きな強みでもあります。

元々の人柄のみならず、おそらく鬼殺隊の中でも事実年長者であり、圧倒的に大人であることも、その冷静さには由来しています。

お館様から柱の中で唯一、自身の最期の身の振り方を託されていた悲鳴嶼さん。それはお館様が「この話を明かしても感情的にならず、きちんと現実的な判断を下して動いてくれる」という彼の冷静さに、大きく信頼を寄せていたからにほかなりません。

余命わずかのお館様に託された信頼。悲鳴嶼さんは、確かにそれに応えました。お館様の計画を実行に移すまで誰にも漏らすことなく抱え続けた、その葛藤や辛さも想像に余りあるものがあります。

加えて産屋敷邸の爆破を目前にしてなお、鬼である協力者・珠世の合図で真っ先に無惨の首を、彼はたった一撃で捕らえました(連携の取れ方を見ると、おそらく珠世の存在もどこかで事前に知っていた可能性も高そうですが…)。

その後も瞬時に首を再生した無惨を見て、その速度と同等のスピード感で瞬時に戦況を判断。“自分たちが具体的に何をすべきか”を見極め、集まってきた柱たちに状況を端的に伝えました。

想像してみてください。もし自分が、悲鳴嶼さんの下で働いていたら…。これだけ頼りになる上司・先輩はなかなかいませんよね。

圧倒的なパワーや年長者という立場はもちろんですが、あれだけ個性も自我も強い柱の面々が、それでも悲鳴嶼さんの指示や挙動には素直に従う。その理由は彼の最強さ・冷静さに通じる“頼もしさ”であることが、簡単に想像できることでしょう。

盲目という誰よりも大きなハンデ…その驚きのカバー方法とは?

悲鳴嶼さんの強さについて。最後に触れておきたいのはうっかりすると忘れてしまいそうな、彼の大きなハンデについてです。

登場時から一人だけ、目の描写が普通のキャラたちと明らかに異なっていた悲鳴嶼さん。もしかしたら予想のついていた方もいたかもしれませんが、柱稽古編で明かされた通り、彼は元々目が見えないという障がいを負っています。

キャラクターの詳細な情報が載っている『鬼滅の刃』公式ファンブックによると、悲鳴嶼さんが失明したのは赤ん坊の頃の高熱が原因だそう。

ですが視覚を失ってなお、その他の感覚が異常なまでに優れていた彼(体格の大きさもそれに由来しているのでしょう)。おかげで目が見える人と変わらない生活を送れたのですが、過去には心無い人々からそれを不審がられたり、怖がられたこともあったのだとか。

目が見えない悲鳴嶼さんが何の苦労もなく生活する。それはつまりわかりやすく言えば、自身の周囲の状況を正確に把握しているということです。
視覚が使えない分、おそらく周囲の音を正確に聴く聴覚、周囲の物体との距離や空間の位置関係を感覚で正確に把握する触覚などが、特に突出した能力でもあるのでしょう。

そのため彼の戦闘スタイルや戦うために必要な武器も、それらの感覚をフルに生かしたやや個性的なものとなります。

悲鳴嶼さんの武器となる大きな鉄球と斧、そしてそれを繋ぐ鎖。これらの役目は鬼の身体を攻撃するだけではありません。武器は当然動かすたびに特に鎖からジャラジャラと大きな音が鳴りますが、彼はその音の反響を利用して周囲の空間状況を把握しているのです。

とはいえその仕組みがわかっても、実際にそれができるかと考えると…普通の人間では絶対に無理、ということは誰しもがわかりますよね。
これまでにも実は度々アニメに登場している、『鬼滅の刃』の物語の鍵を握る歴代最強の剣士。彼もまた非常に優れた剣の才能と、常人離れした身体能力の持ち主でした。
目が見えないハンデさえなければ、悲鳴嶼さんはその剣士と並ぶ、あるいは彼を超える最強の剣士になった。そんな道も、もしかしたらあったのかもしれません。

無限城編、開幕──最終戦の火ぶたがいよいよ切って落とされる

ついに物語も最終局面へと向かい始めた『鬼滅の刃』。ここから始まるのは無惨率いる鬼たちと、炭治郎らをはじめとした鬼殺隊の面々の、苛烈で激しい総力戦です。
鬼のボスとなる無惨の人智を超えた強さは、すでに見た通り。加えて未だ彼の下には、これまで登場したどんな鬼よりも強い上弦の鬼たちも控えています。

一方で、心の拠り所でもあるお館様を喪った鬼殺隊。ですがその戦意は衰えるどころか、これまでにない勢いで各々の隊士が復讐の炎を無惨へと燃やし始めたばかり。
いよいよクライマックスへと走り始めた彼らの激闘。その勇姿を、我々もぜひ最後まで見届けましょう。

(執筆:曽我美なつめ)

■アニメ『鬼滅の刃』キャラクターの魅力徹底解剖【竈門炭治郎&禰󠄀豆子、我妻善逸、胡蝶しのぶ、煉獄杏寿郎、鬼舞辻無惨、宇髄天元etc.】https://numan.tokyo/anime/yakmL/

作品基本情報

『テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』

■スタッフ
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島 晃
アニメーション制作:ufotable

■キャスト
竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
竈門襧豆子(かまど・ねずこ)※:鬼頭明里
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野 紘
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞

冨岡義勇(とみおか・ぎゆう):櫻井孝宏
宇髄天元(うずい・てんげん):小西克幸
時透無一郎(ときとう・むいちろう):河西健吾
胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ):早見沙織
甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり):花澤香菜
伊黒小芭内(いぐろ・おばない):鈴村健一
不死川実弥(しなずがわ・さねみ):関 智一
悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい):杉田智和

■コピーライト表記
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

■公式サイト
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