『忘却バッテリー』『リンカイ!』『アンメモ』と神回連発の1日がものすごかった

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。6月24日から6月30日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

神回を目撃すると「すげえもん観た……」と恍惚としながらSNSに出力したりするのですが、それが1日のうちに立て続けにあったりするともう大変。自分の場合は『アイカツ!』第125回「あこがれの向こう側」、『SHIROBAKO』第23話「続・ちゃぶだい返し」(ずかちゃん回)、『四月は君の嘘』第22話「春風」があった2015年3月19日(深夜含む)は伝説の1日というか「アニメ界のグランドクロス(これは凶兆ですが)」と勝手に呼んでいるのですが、翌日は何も手に付かないくらいでした。そろそろ10年前になるのか。

というわけで、近年のなかでもかなりハイレベルだった春クールの最終週に生まれた、2015年3月19日に次ぐくらいすごかった2024年6月25日(深夜含む)の神回を紹介します。

●野球描写が「いいなぁ」『忘却バッテリー』第11話

天才プレーヤーを数人抱える小手指高校野球部の物語、クールの終盤では強豪の氷河高校との試合が展開中です。この回は体格や力には恵まれないものの、俊足で技術、頭脳に秀でた二塁手・千早瞬平のエピソードでした。かつて主人公バッテリーに敗れた彼は一度野球から離れたものの、完全にそれを忘却することはできずふたたびグラウンドに戻ったという状態。そしてこのエピソードで意外な壁を壊し、チームを支える選手として一皮むけます。

そんな感動的な流れに加えて、この回は映像がとにかくすごい。アニメーションやカメラワークなどで野球の“らしさ”とカッコよさを表現しており、ただの内野ゴロですら息を呑んでしまうような臨場感に溢れていました。ここまで凝った野球、というかスポーツの描写ってあまり思いつかず、さすがMAPPAと唸らされました。そんな描写が続いたうえで、最後に千早が行ったプレーにニヤリ。全スポーツアニメファン必見の1話でした。

●この春のレースで一番手に汗握った!『リンカイ!』第12話

競輪界のアツい期待とバックアップを受けて(?)出走した女子競輪アニメも、この第12話で最終回。ここで展開された、主人公の泉ら若手が出場するルーキーファイナルというレースがとにかく熱かった。

この『リンカイ!』、中盤で養成所を出てから泉の同期たちが背負う物語がそれぞれに描かれており、そのおかげで彼女たちが出場するレースはまさに“全員が主人公”な状態に。春クールには『HIGHSPEED Étoile』や劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』といったレースものがありましたが、全員が強い思いを胸に駆け引きし、必死に走ったこのレースがドラマティックさという点では一番だったのではないでしょうか。

そしてレースの抜群のトッピングとして機能したのが、Xの公式アカウントが行ったレース結果を3連単で予想するルーキーファイナル車券予想キャンペーン。サイン入りジャージなどの賞品も用意されていますが、それよりも物語をここまで追ってきたからこそ当てたい、グッと来た話の子を推したい……そんな思いを抱えた人がSNSで予想し、さらにはそれを集計したファンが勝手にオッズを作る始末(すごい)。こうして最速放送は、多くの人が実際の競輪を疑似体験しながら白熱したのでした。

今期はSNSの使い方が巧みなアニメがたくさんありましたが、このキャンペーンが“アニメ本編を盛り上げる”という意味では屈指だったのでは。ちなみに自分は3着を外して悔しかった。

●あ、これってそういう話なの『Unnamed Memory』第12話

最後は絶大な力を持つ魔女と、子孫を残せない呪いを受けた王太子の話……なのですが、ちょくちょくトラブルを挟みつつ大体ラブラブだった2人が結婚するという話から始まる最終回。これが「ネタバレを見るともったいない」系の大仕掛けなお話で。

本作は、今期も数多い第2期発表アニメですが、そこへのヒキとしてこんなに鮮烈なのはあまり思い出せず。最悪、この第12話だけ観てもなんとなくそのすさまじさがなんとなく感じられるはずなので、ぜひご覧いただきたいです。こんなのを1日の締めに観られるなんて。

(文=はるのおと)

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