博多ストーカー殺人 被告に懲役20年判決 「偶然会った」と主張もストーカー行為認定 裁判長「生涯かけて償いを」

JR博多駅近くで“つきまとい行為”が禁止されていた元交際相手の女性を何度も包丁で刺し、殺害した罪などに問われた寺内進被告(32)の裁判。福岡地裁は寺内被告に対し、懲役20年の判決を言い渡した。

“懲役20年”動揺する様子なく

2024年6月28日午後に行われた福岡地裁での判決公判。いつもとは違う白のTシャツ姿で寺内進被告は法廷に現れた。

冨田敦史裁判長は「主文、寺内被告を懲役20年の刑に処す」と判決を言い渡し、判決を聞いた寺内被告は、動揺する様子もなく前を向いていた。

寺内被告は2023年1月、JR博多駅近くの路上で、つきまとい行為が禁止されていた元交際相手の川野美樹さん(当時38)を待ち伏せした上で、包丁で何度も刺し、殺害したとして起訴されていた。

6月17日に始まった裁判員裁判の初公判で、寺内被告は「刺したことは間違いないですが、待ち伏せしたことは違います」と述べ、殺人の罪については起訴内容を認めたが、ストーカー規制法違反の罪については起訴内容を否認した。

「偶然だった」一貫して繰り返す

今回の裁判では、ストーカー行為があったか否かが大きな争点となった。

第2回公判で事件当日、川野さんの会社近くで待ち伏せし、ついていった行為がストーカー行為に当たるとした検察の主張に対して寺内被告は、次のように主張した。

寺内被告:
博多駅に携帯電話の代金を支払いに行った。川野さんの勤務先近くに立ち止まったのは、今後の生活を考えていたから
弁護側:
道を通るとき、川野さんを意識していた
寺内被告:
していない
弁護側:
(川野さんと)会うことを予想していた?
寺内被告:
していないです
弁護側:
待ち伏せは?
寺内被告:
していない
弁護側:
川野さんに気付いて何か思った
寺内被告:
「なにしてんの」という感情
弁護側:
声を掛けて相手はどんなリアクション?
寺内被告:
「おお」みたいな感じちゃいますか

4日間の被告人質問を通して、寺内被告は「川野さんと出会ったのは偶然だった」という主張を一貫して繰り返した。

そして結審前、最後の意見を述べる機会となった最終陳述では「幸せな家族の時間を奪ってしまい申し訳ありません。全てにおいて僕が悪いと思っています」と寺内被告は述べた。
しかし、裁判長から他に言うことがないか促されると「ホンマに待ち伏せなどしておりません」と最後まで、自分はストーカー行為はしていないと繰り返した。

追従行為は“つきまいとい”に該当

ストーカー規制法違反の成立が争点となる中、6月28日の判決で冨田敦史裁判長は「被告が待ち伏せしていたと言えるかについては疑問が残る」としながら、「被告が川野さんを追従した行為はストーカー規制法上の“つきまいとい”に当たる」とし、寺内被告のストーカー行為を認定した。

その上で「被告人は、被害者がうつぶせに倒れた後もなお、刺すことをやめておらず、強固な殺意に基づく執拗(しつよう)かつ残忍な犯行と言える」「被告人の犯行は短絡的かつ身勝手と言わざるを得ず、厳しい非難は免れない」と断罪し、寺内被告に懲役20年の判決を言い渡した。

そして、裁判長は「寺内さんの反省の言葉は表面的なものでした。どうして罪を犯したのかという考えが十分に至っているとは思いませんでした。生涯をかけて事件に向き合い被害者へ償いをしてください」と寺内被告に言葉を掛けた。これを聞いた寺内被告は「はい」と返事し、法廷を後にした。

検察の求刑30年に対し、懲役20年とした理由としては、被害者が1人であること・前科がないこと・自らの責任を認めていることなどが挙げられている。判決後に開かれた会見で、裁判員の1人は「ストーカー規制法を厳しくするなど、再発防止の対策をしてほしい」と訴えた。

(テレビ西日本)

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