フランスとベルギーの明暗を分けたもの。伏線は1枚目の交代に【ユーロ2024】

ランダル・コロ・ムアニ 写真:Getty Images

日本時間7月2日にドイツ、デュッセルドルフ・アレーナで、UEFA欧州選手権(ユーロ2024)ラウンド16、フランス代表対ベルギー代表の試合が行われた。

FIFAランキング2位と3位の強豪同士の激突であり、国境を接するベルギー南部はフランス語を話し、アフリカ系の選手と融合しているなど共通点が多い隣国だ。結果は1-0でフランスが勝利し8強に進出を決めた。フランスは、同日スコアレスドローでPK戦(3-0)の末にスロベニアを下したポルトガルと、6日に準々決勝で対戦する。

ここでは、フランスとベルギーの明暗を分けたものは何か、試合を分析する。

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マルクス・テュラム 写真:Getty Images

圧力を強めるフランス、落ちる魔球を披露のベルギー

フランス対ベルギー。お互いに慎重な試合の入りながら、徐々にフランスがペースを掴み始め、時折ベルギーも有効なカウンター攻撃を仕掛ける。

たまらずフランスのFWアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)がファウルし警告を受けると、24分にそのフリーキック(FK)をベルギーのキャプテンMFケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)が直接狙う。フランスのGKマイク・メニャン(PSG)は、なぜか手を使うことができずに右足でクリアした。ボールは壁を越えると鋭く落ちてゴール目前でバウンドし、対応が間に合わなかったのだ。

32分にフランスは、ディフェンスライン左からの超ロングボールを受けたDFジュール・クンデ(バルセロナ)が右サイドからクロスし、ゴール前でFWマルクス・テュラム(インテル)が頭で合わせるも枠の右に外れる。

ハーフタイムが近づいてくるほどに、フランスの攻撃の圧力が高まっていくがスコアは動かず、0-0で試合を折り返す。

ケビン・デ・ブライネ 写真:Getty Images

後手後手のベルギー、カウンターも最後まで得点ならず

後半に入ってもフランスの攻撃は続く。50分には左サイドからのFKをグリーズマンが入れて跳ね返ったボールを右サイドのクンデがクロスし、テュラムがシュートもゴールならず。

61分にベルギーは、カウンターアタックからFWヤニック・カラスコ(アル・シャバブ)が右サイド深くに攻め込むも、DFテオ・エルナンデス(ミラン)がスライディングで左足を伸ばしてブロック。

78分にフランスは、右サイドのクンデが折り返したボールを中央のFWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)が右足シュートも、わずかに枠の右上に外れる。

83分にベルギーは、ビッグチャンスをむかえる。ボールを受けたデ・ブライネがゴール正面で右足シュートもGKがセーブ。

その後、間もない85分にフランスは左サイドのエルナンデスから中のグリーズマンにショートパス。そしてドリブルから右サイドのクンデにわたり、中央の少し下がったところのカンテに落とすと、鋭く短い縦パスを出す。ゴール前に走り込んだFWランダル・コロ・ムアニ(PSG)がターンしながら右足シュート。ジャストミートしなかったボールは、ベルギーDFヤン・フェルトンゲン(アンデルレヒト)に当たってGKのタイミングと方向がずれてオウンゴール(OG)となった。

後がなくなったベルギーは、88分に選手を2枚同時に投入した。89分にはフランスDFウィリアン・サリバ(アーセナル)がロケットのような激しいスライディングタックルをすると、ボールはタッチを割る。

90+2分、ベルギーのFWジェレミー・ドク(マンチェスター・シティ)が左サイドをドリブル突破からクロスもフランス選手に当たりコーナーキック(CK)に。この日、再三の果敢なドリブル突破を図ったドクだが、ゴールは遠かった。

結局フランスが1点をリードしたまま試合が終了した。


ランダル・コロ・ムアニ(左)オレル・マンガラ(右)写真:Getty Images

ラストプレーは、フランスが支配した象徴の瞬間に

90+3分のほぼラストプレーというシーンは、この試合を象徴していた。ボールを持ったフランスのコロ・ムアニが右サイドをドリブル突破。たまらずベルギーMFオレル・マンガラ(オリンピック・リヨン)が身体で止めてイエローカードを受けて天を仰いだ。

この2選手は、ともにこの試合の両チームの1枚目の交代カードだ。しかし、ベンチの意図は正反対だった。

62分にテュラムと交代でコロ・ムアニを投入したフランスの意図は攻撃だ。攻めながらも、なかなか得点がとれないため、攻撃陣にさらなる勢いを加えるためにエネルギーを蓄えたリザーブ選手を投入した。結果として、コロ・ムアニのシュートがOGに繋がったのである。

一方、63分にFWロイス・オペンダ(ライプツィヒ)に代えてマンガラを投入したベルギーの意図は守備の立て直しであった。攻撃の勢いを増したフランスに対して中盤を厚くしたベルギー。この選手交代が両チームの状況を雄弁に物語っている。

データを見ると、攻撃回数はベルギーの25回に対してフランスは63回。シュート数はベルギーの5本に対してフランスは20本だ。入ったのは1ゴールのみだったが、内容はフランスが勝つべくして勝った試合だった。

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