孤独死につながる住民の孤立を防ぐ集会所と自治組織の役割…能登半島地震で8000人超が入居する応急仮設住宅を取材

能登半島地震で自宅が全壊した人などのために石川県が設ける応急仮設住宅。避難所から仮設住宅に移る人が増える中、懸念されているのが住民の孤立だ。

8000人超が仮設住宅で暮らす

応急仮設住宅は県内9つの市と町であわせて4943戸が完成し、3865世帯、8304人が入居しています。8月には6810戸が完成する予定だ。仮設住宅に1人で暮らす90代の男性に話し相手がいるのか聞くと、「いま、現在はいないですね。あんまり出かけていない。散歩に行ったら足はふらつくし」と話した。

災害社会学が専門の北陸学院大学、田中純一教授も警鐘を鳴らしている。「同じ場所にできるだけ元の集落の方が集まるように配慮はされていますけど、必ずしもそういった形で割り当てられているわけではない。つながりにくい人たちが出始める仮設団地があるだろう」。

周りに頼れる人がいるかどうか、仮設住宅の住民に聞いてみると1人暮らしの住民は「ここに来たら知らない人ばっかり。全然遊びに行くところもないし」と話す。2016年に起きた熊本地震では、みなし仮設を含む仮設住宅に1人で暮らしていた33人が孤独死したとみられている。仮設住宅での孤立は命に関わる問題なのだ。

集会所でのコミュニケーション

入居者の孤立を防ぐために重要な役割を担うのが「集会所」だ。珠洲市正院町の集会所では住民同士の繋がりを深めようと、地元の民生委員などが週3回のペースで、イベントを企画している。この日は仮設住宅の入居者を中心に15人ほどが参加し、地元の小学生と一緒にポチ袋を作って楽んだ。

参加者の中には集会所で知り合ったという人もいて「友達が出来るとは思わなかった、やっぱり出てこなきゃだめだね」と話していた。ここではイベントに参加した人を毎回記録していて、仮設住宅に入居する人たちの見守りにもつながっている。

自治組織の必要性

しかし仮設住宅に集会所があるだけで、孤立を防げるわけではない。田中教授は「外部との窓口になる人、内部をうまく取りまとめていく人が必要」としたうえで、住民をまとめる「自治会」の必要性を指摘する。仮設住宅では自分以外にどんな人が入居しているのか知りたくても、個人情報という理由で自治体は教えてくれない。しかしもし自治会があれば自治体によっては代表者に名簿を共有する所もあり、高齢者などの見守りに活用することもできる。輪島市では31カ所ある仮設住宅のうち、自治会が結成されているのは5カ所だけ。また珠洲市でも行政とのパイプ役になる「管理員」を設置するよう働きかけているが、18カ所ある仮設住宅のうち、管理員がいるのは7カ所にとどまる。

「関係づくりは半年後とか1年後とかじゃなく今作っていかなければいけないと思っています」。田中教授も独自の取り組みを行っている。この日学生たちと一緒に設置したのはみんなで使えるベンチ。これも立派な「孤立」対策だという。「ベンチ自体は些細な事なんですけど、これをみなさんがどういった風に使っていくかによって変わってくると思う」。こうした小さな積み重ねが住民の孤立を防ぐことにつながるのかもしれない。

(石川テレビ)

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