死刑判決3つの争点「犯人か」「強盗か」「刑罰」記者が解説 大分強盗殺人事件

2020年、大分県宇佐市で起きた強盗殺人事件の裁判員裁判で大分地裁は2日、被告の男に対し、死刑を言い渡しました。

強盗殺人などの罪で死刑判決を受けたのは大分市の会社員・佐藤翔一被告39歳です。

判決によりますと、佐藤被告は2020年、宇佐市安心院町の住宅に侵入し、住人の山名高子さん79歳と長男の博之さん51歳を殺害し、現金少なくとも5万4000円を奪ったとされています。

これまでの裁判で、佐藤被告側は一貫して無罪を主張していましたが、検察側は死刑を求刑しました。

裁判を傍聴してきた記者が判決について解説します。

争点「犯人かどうか」 地裁は「犯人性を強く推認出来る」と判断

記者が解説 3つの争点

この裁判の争点は大きく分けて以下の3つです。

・「佐藤被告がこの事件の犯人かどうか」

・「現金は奪われたのか」

・「(被告が犯人だった場合)その刑罰をどうするのか」

まず1つ目の争点「犯人かどうか」について。

検察側は被告の車から被害者のDNA型と一致する血痕が見つかったことなどから「被告が犯人である」と主張していました。

一方、弁護側は、佐藤被告がユーチューバーを名乗る覆面の男たちに頼まれ、現場近くに向かい、血の付いた服や靴を車に乗せたなどとして、「真犯人がいる可能性がある」と反論していました。

まず、「犯人かどうか」について地裁は次のような判断を示しました。

「個人が所有する車を一時的に第三者に貸すという事態は考えにくいことなどから当時、車を運転していたのは被告本人である」と指摘。ユーチューバーを名乗る覆面の男たちに車を貸したなどの証言は「虚偽の弁解」だとしました。

ほかにも検察の立証を全面的に認め、被告の犯人性を強く推認できると認定しました。

争点「現金が奪われたか」 地裁は奪ったとは認めずも「事件と近い時期に現金を手にしていた」

記者が解説 3つの争点

次に「現金が奪われたか」についてです。

検察側は銀行口座の履歴や残されたレシートなどから被害者の女性は少なくとも9万円を所持していたものの、現場からは2000円しか見つかっておらず、差額のおよそ8万8000円を被告が奪ったと指摘していました。

地裁はこの全額を奪ったとは認めませんでしたが、「被告が事件と近い時期に出所が分からない現金を手にしていたことなどから犯人性に矛盾はない」と結論付けました。

争点「刑罰について」 地裁は「隠滅工作や不合理な弁解、反省の態度示していない」と指摘

記者が解説 3つの争点

刑罰についての判断です。

地裁は「生命軽視の態度は強い社会的非難に値する」と厳しく指摘した上で、「罪証隠滅工作や不合理な弁解を続け、反省の態度を示していない」などとして、死刑判決を言い渡しました。

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