主人公にダブルヒロインを採用した新作ノベルゲーム「リルヤとナツカの純白な嘘」プレビュー聡明な「リルヤ」と快活な「ナツカ」の凸凹感も見逃せない1作!

by 岩瀬賢斗

【リルヤとナツカの純白な嘘】

7月25日 発売予定

価格:3,960円

フロントウイングが7月25日に発売を予定しているPC用アドベンチャー「リルヤとナツカの純白な嘘(リルナツ)」。本記事ではゲームの序章部分について紹介する。

本作はシナリオをアダルトゲームの「euphoria(CLOCKUP)」や「サクラノ詩(枕)」の鳥谷真琴ルートなどを手掛けた浅生詠氏、原画をライトノベルの挿絵などを担当するイラストレーターの切符氏が手掛けるノベルゲーム。“純白な嘘”という難しそうなワードが入ったタイトルに加え、緑色を全面に取り入れた絵画のようなビジュアルが目を引く作品でもある。個人的にはジブリ作品を彷彿とさせるタイトルなど、多くのノベルゲームのアプローチ方法としてはやや異なる手法を取っているようにも感じ、2024年注目の1作として位置づけている。

登場キャラクター数が多く、高柳知葉さんや伊駒ゆりえさん、田中美海さんや古賀葵さんなど、声優陣の顔ぶれにも注目の作品である。また、オープニング楽曲の「明日の話」をシンガーソングライターのやなぎなぎさんが担当しているなど、制作クリエイターのネームバリューも強力だ。

今回はそんな本作の序章部分を映像として見る機会を得たので、紹介していきたい。なお、物語に関する直接的なネタバレはないものの、序章の大まかな話の流れや、本作が何章構成になっているのかといった内容に触れるため、ネタバレには注意してほしい。

ストーリー

いつだって、あなたという光を通して世界は形を変え、あなたの抱く花で、世界は塗り替わる。

ネットを密やかに流れる噂がある。
正体不明の天才画家が、依頼者のためだけに素晴らしい絵を描いてくれる。
ただしその画家は気まぐれで偏屈、権力や金では決して動かず、気に入った依頼だけを受けるのだという。

そんな謎めいた基準で選ばれた依頼者の前に現れるのは、
長い銀髪と宝石のような瞳を持つ、冬の妖精のような美少女画家――リルヤとリルヤの家に住み込みで働く元気いっぱいの助手の少女――夏夏(なつか)。

しかし、画家である少女の目は光を映さず、車椅子に乗っていた。

「大丈夫です。わたしがリルヤさんの新しい目と足になりますから!」

夏夏は、依頼者とリルヤのために奔走し、本能と直感でリルヤの求めるインスピレーションの源泉
――暗闇を切り裂き、世界を新たに照らす『光』を語る。

「なんかわかんないんですけど、そんな気がしたんです!」
「我が鳩は、橄欖(かんらん)の葉を携えり。あとは――私の仕事だ」

追憶の青、怪物の緑、殉教の赤――
リルヤは、夏夏から得た『光』を元に、依頼者が望む以上の絵を描き出す。

「お前の目を通して見る世界は、私の目で見ていた世界よりも美しい」

これは過去に痛みを抱く少女たちが、新しい未来を得て歩き出すまでの、喪失と再生の物語。

序章は主人公2人の関係性と春日衣 優を中心としたストーリー展開

序章のストーリーは、春日衣 優(かすがい ゆう)という人物についてのエピソードとなっている。この章は基本的に優を中心とした物語で、リルヤの噂を聞きつけて優が絵の依頼に来たところから始まる。優は婚約者との結婚を控え、新居に飾る絵がほしいと語り、その絵を描くために思い出の地に赴くことになる。これに加えて、ダブル主人公となる空木 夏夏(うつぎ なつか)と、リルヤ・メリの関係性やどのように生活しているのかといったバックボーンについてが並行して描かれる形になる。

序章で登場する3人

夏夏はリルヤのお手伝いさんのような役割を担っており、車椅子で生活するリルヤの身の回りをお世話をしたり、依頼人の期待する絵を描くための現地取材もする。画家のリルヤは下調べをしたり会話を通して依頼人の期待に添えるよう情報を収集するが、現地での写真撮影などは夏夏に頼っている。お互いにかなりの信頼をおいた間柄のようだ。

序章の構造としてはリルヤが絵を描き、登場人物たちの悩みを解決する形になっており、本人から話を聞いたり、思い出の地に訪れる中で依頼人の過去が紐解かれていく。序章の中心人物となる優は、もうすぐやってくる婚約に悩むキャラクターとして描かれる人物だが、リルヤと夏夏はどのように彼女の悩みを解決するのだろうか。

「リルヤとナツカの純白な嘘」における物語の描き方として、プレーヤーが感じる細々とした疑問点がしっかりと解決されているように思う。章の最後には、さながらミステリー作品の事件解決パートのように、プレーヤーが感じるであろう疑問についてリルヤから説明が入る。リルヤが探偵で、夏夏はその助手といった感じで、夏夏が感じた疑問をリルヤが的確に答えていく。そのため広げられた風呂敷がしっかりと畳まれていく構成になっているようだ。

作中に登場した要素はしっかりと回収される

テキストはほぼ会話文! 油絵風のビジュアルなど注目要素満載の作品に

また、ビジュアルについても言及したい。本作では特定の場面で用いられるCGが油絵のような表現を取り入れているのも特徴的だ。絵の具をベタッと塗ったようなCGが登場し、絵画が物語のキーアイテムになっているゲームだからこその見せ方であるように感じる。

もう1点、本作の特徴としてテキストの文章のほとんどが会話文になっており、地の文がかなり少ない。そのためオートモードでのプレイがかなり快適なように思う。今回は約2時間ほどの映像を視聴したが、9割以上が会話で構成されており、物語のテンポがとても良かった。

物語では2人の関係性が特に魅力的で、天才だが夏夏にそこそこ頼っているリルヤと、持ち前のパッションで明るく振る舞いつつ、リルヤに対し圧倒的な信頼をおく夏夏。この先も「中心人物の悩みをいかしてに解決するのか」という点に重点を置いたストーリーになると思われるが、主人公2人の描かれ方にも注目である。物語を読んでいくと実は夏夏のほうが年上といったエピソードも登場するなど(どう見てもそうは見えない所が良い)それぞれのフックになってくる要素もまだまだありそうだ。本編は序章+1章~4章の全5章構成で、今回は序章について紹介した。タイトルにもなっている“純白な嘘”とは何を指すのかについても楽しみにしたい。

物語の途中には電車で移動するシーンが登場する。ここでは電車の窓から見える青空とじっとこちらを見つめるぬいぐるみだけが映る場面がしばらく続き、ちょっとおかしかった。この“謎のぬいぐるみ”の正体についてはぜひプレイして確かめていただきたい

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