阪神・近本 お目覚め打!18打席ぶり安打が貴重追加点 球宴ファン投票選出御礼の一打 岡田監督から耳打ちも

 10回、適時二塁打を放つ近本(撮影・中田匡峻)

 「広島0-3阪神」(2日、マツダスタジアム)

 悩み、苦しみ抜いた先に勝利があった。阪神・近本光司外野手(29)が延長十回1死二塁から、18打席ぶりの安打となる左越え適時二塁打。中飛に倒れた八回無死一、二塁の場面では、岡田彰布監督(66)がベンチ前で耳打ちするシーンもあった。球宴ファン投票選出への御礼打。チームは借金生活転落のピンチを防いで3位に浮上。首位・広島とのゲーム差を3に縮めた。

 暗いトンネルから抜け出す一打を輝かせた。近本にとって18打席ぶりの安打が、勝利を決定づける2点目を生み出す適時二塁打に。「ヒットになって良かったです。打てたんで良かったです」。喜びを爆発させる三塁側の虎党とは対照的に、塁上で感情を出すことなくクールに振る舞って、らしさをみせた。

 両チーム無得点のまま延長戦に突入。相手のミスで先制点をもらった直後の延長十回1死二塁。「狙いとかないんで。ヒットを打つだけなんで」と打席に入った。この回からマウンドに上がった3番手の右腕・島内との対峙(たいじ)。2球で追い込まれても焦りはない。5球目の外角直球に反応。左翼へとぐんぐん伸びた打球は、前進守備の上本のはるか頭上を越えていった。

 苦しみの打席を重ねてきた。6月1日・ロッテ戦から12試合連続で4番を任された。「いい経験をさせてもらってます」と前向きに取り組んだが打棒は低下。同15日・ソフトバンク戦から慣れ親しんだ1番に戻っても、本来の姿ではなかった。同25日・中日戦の第2打席に右前打を放って以降、快音が響かず、2試合連続無安打でこの日を迎えた。

 三回2死では三遊間への当たりを好守に阻まれ、リクエスト検証でアウトに。八回には無死一、二塁の絶好機で打順が巡った。岡田監督から「ゲッツーなってもええから、バントないから、打て」と耳打ちされ、「ありがとうございます。頑張ります」と応じてバットを構えた。

 「プレッシャーにはなりますけどね。でも、監督のひと言はすごい大きいと思いますし。あまり言われることはないですけど。中野が言われるのはよくありますけど、こういう気持ちなんだなと思って」。この打席は中飛に倒れたが、指揮官からの期待を直接肌で感じ、次の打席への発奮材料に変えた。

 貯金を使い果たして迎えた首位・広島との3連戦。初戦で延長の末に勝利をつかみ、連敗を2で止めて借金生活回避となった。「明日が大事だと思うので、明日も頑張ります」。猛虎が誇るリードオフマンが7月の進撃をけん引する。

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