「死亡之組」報道も…「思い出される」三笘薫2ゴール勝利と「避けられた」完全アウェー【組み合わせ決定「ワールドカップ最終予選」の戦い方】(1)

今年のアジア杯では、ケガの影響で不発に終わった三笘薫。だが、その経験が選手を、日本を強くしてくれることだろう。撮影/原壮史(Sony α1使用)

ワールドカップ・アジア最終予選の抽選が行われ、組み合わせが決まった。対戦相手のみならず、スケジュールが具体的になったことで、見えてきたものがある。いかに最終予選を戦うべきか。サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。

■5強のうち「3か国」が入ったグループC

2026年ワールドカップ・アジア最終予選の組分けが決まった。

6月27日にアジア・サッカー連盟(AFC)本部があるマレーシアのクアラルンプール市内のホテルで行われた組分け抽選会では、FIFAランキングに基づいて実力下位のチームから順番に抽選が行われ、そして最後に上位3か国(日本、イラン、韓国)の抽選が行われた。

ドロワーとして登場した岡崎慎司の手で、まずイランがグループAに入ることが決まり、続いて韓国がグループB、そして残った日本はグループCに入ることが決まった。

グループCで日本(17位)の対戦相手は、FIFAランキング順にオーストラリア(23位)、サウジアラビア(56位)、バーレーン(81位)、中国(83位)、インドネシア(134位)だ。

アジアのサッカー界は1990年代から日本、韓国、サウジアラビア、イランの4強時代が続き、その後、オーストラリアがAFCに転籍して「5強体制」となった。ワールドカップ出場権も、ほぼこの5か国が独占している状態なのだ。

グループCには「5強」のうち3か国が入ることとなった。そのため、中国のメディアでは盛んに「死亡之組」(死のグループ)と報じられている。日本のメディアでも、強豪オーストラリアとサウジアラビアが同居することになったことで「厳しいグループ」という見方もあるが、僕は悪い組み合わせではないように感じている。

■前回、前々回も対戦=「未知の要素が少ない」

この組分けを知ったとき、サッカー・ファンなら誰もが「既視感」を覚えたことだろう。

なにしろ、オーストラリアとサウジアラビアとは2018年ロシア大会最終予選、2022年カタール大会最終予選に続いて3大会連続で同じグループとなったのだ。そして、2022年大会予選では、中国も同一組だった(ロシア大会予選では1位が日本、2位がサウジアラビア、3位がオーストラリア。そして、カタール大会予選では1位がサウジアラビア、2位が日本、3位がオーストラリアだった)。

今回のグループCでは、これ以外にバーレーンとインドネシアも同一組となったが、前回大会予選ではオマーンとベトナムが同一組。国は変わったが、中東と東南アジアの国が1か国ずつ入っているところまでも、前回と同じなのだ。

ちなみに、オーストラリア、サウジアラビアとは直近2大会でのアジア最終予選で4試合ずつ戦っていることになるが、日本はオーストラリア相手には3勝1分、サウジアラビアとは2勝2敗(ともに、ホームチームの勝利)という結果を残している。

前回の予選のオーストラリアとのアウェーゲームでは、交代出場した三笘薫の2ゴールで勝利して、ワールドカップ出場を決めたという記憶も残っている。

前回、前々回の予選でも戦ったことがある国ということは、未知の要素が少ないということになる。互いのサッカーの特徴についても分かっているし(日本とオーストラリアの場合は監督も変わっていない)、現地まで移動や気候やスタジアム・練習場などの環境などについても日本代表のスタッフは熟知しているのだ。

■日本が破れたイラクとの対戦は「完全アウェー」

たとえば、1月のアジアカップで日本が敗れたイラクとの対戦ということになったら、不安な面も出てくる。

すなわち、1980年代のイラン・イラク戦争や2003年のイラク戦争後の混乱の影響で、イラクは長い期間にわたってホームゲームを開催できなかった。だが、ようやく国内の治安状況が改善に向かい、イラク南部のバスラには近代的なスタジアムも完成。今回のワールドカップ予選からイラクはホームゲームをこのバスラのインターナショナル・スタジアムで開催している。

いわゆる「完全アウェー」状態となること必至の試合だ。

しかも、長くイラク・ホームの試合がなかったため、日本代表のスタッフはもちろん、日本サッカー協会関係者でもイラク現地の環境を知っている人はほとんどいないはずだ。現地情勢が改善されたといっても治安面の不安も残っているし(日本の外務省はバスラなどのイラク南部についてレベル3の「渡航中止勧告」を出している)、チームは万全の状態で臨めなかったかもしれない。

その点で言えば、サウジアラビアは前回予選の他、各カテゴリーの大会やACLなどでも最近は遠征の機会が多く、現地の練習環境なども整備されている。

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