「アナフィラキシー」に備える注射薬を携帯する児童が増えている【クスリ社会を正しく暮らす】

アナフィラキシーショックには早急な対応が必要(C)iStock

【クスリ社会を正しく暮らす】

先日、小学校の教員を対象に「エピペン」の講義を行いました。近年、小学校では食物アレルギーの児童がエピペンを携帯しているケースが増えているのです。

エピペンは、過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人に処方されているアドレナリン自己注射薬です。アナフィラキシーが現れた時に使用し、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和するための補助治療剤です。

アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」で、このアナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合を「アナフィラキシーショック」と呼びます。新型コロナワクチン接種の際にも話題になりました。

アナフィラキシーショックを起こしてから、呼吸停止または心停止までの時間は、薬物が5分、ハチが15分、食物が30分との報告もあり、早急な対応が必要です。食物アレルギーなどで児童がアナフィラキシーを起こした際には、学校教員が児童にエピペンを注射するケースもあるため、教員も正しい知識が求められるのです。

ここ数年、私が学校薬剤師としてうかがっている小学校では、年に1回、職員に集まってもらい、エピペンに関する講義を開いています。同時に教員総出で寸劇を行っていて、アナフィラキシーを起こした児童役、その場に居合わせた教員役など配役を決めて訓練します。

いざ、アナフィラキシーが起こった際、どう対応すればいいのか? 実際に訓練を行うことは非常に大切です。この小学校では養護の先生がリーダーシップをとり、しっかり訓練されているのを毎年目の当たりにして、とても感心しています。

エピペンの使い方をはじめ、このような訓練が必要な場合は、お近くの薬剤師にもぜひお声がけください。

(荒川隆之/薬剤師)

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