一度挿したらやめられない!コード・カンパニーの“ノイズポンプ”はレコード再生でこそ効く

英国のケーブルブランド、コード・カンパニー。同ブランドを象徴する技術である「アレイテクノロジー」を応用し、音楽や映像環境のノイズ吸収に特化したアイテムが「ノイズポンプ・シリーズ」である。今回はこれらがレコード再生でどんな効果を発揮するのかを検証しよう。

CHORD COMPANY「グラウンドアレイ」102,000円(1本/税込・写真右手前)※RCA/XLRオス/XLRメス/BNC/USB/HDMI/LAN(RJ45)の7種類の仕様をラインナップ、「パワーアレイ」 140,000円(1個/税込・写真左)※2Pと3P仕様をラインナップ、「パワーアレイ プロフェッショナル」 920,000円(税込/写真右奥)※80cmの「シグネチャー」ケーブル付き

独自の「アレイテクノロジー」で音楽信号の純度を守る

コード・カンパニーのケーブルに初めて触れた時の衝撃は、今でもはっきりと覚えている。一聴しっとりと穏やかだが、静寂の中からキリッと引き締まった音像が定位し、そこへ涼やかで潤いたっぷりの音場が乗ってくる。何とも美的というか芸術的というか、それまであまり聴いたことのない品位の高さだった。

かくして日本のオーディオマニアへ深く信頼されるブランドとなっていたコード・カンパニーに、革命的としかいいようのない超進化が訪れる。アレイテクノロジーの開発である。どんな高品位ケーブルでも、例えばプラグの接合面などで音に反射が生じたりすることで、繊細な音楽信号は汚れ、濁っていく。同技術にはいくつかのグレードがあるが、平たくいうとその偽信号、歪み成分を、片端が開放した芯線を加えることでそこへ吸収させ、音楽信号の純度を守るというものである。

その技術を生かし、機器の中に発生する偽信号や歪みを取り去るために開発されたのが「ノイズポンプ」である。発売中の全製品を自宅や試聴室で試し、その卓効を確認しているが、そういえばアナログ周辺へ用いたらどれほどの効果が発揮されるだろう。気になったら、実験してみるほかないではないか。

フォノイコに挿入してテスト。増やすほどに表現力が増大する

今回の実験は、アンダンテラルゴが試聴室を提供してくれた。一見するとごく一般的なマンションの一室だが、同社のスパイク受けや高品位ラックはもちろん、目に見えない部分まで対策の行き届いた、居心地良く音の違いが分かりやすい部屋である。

アンダンテラルゴの試聴室にて「ノイズポンプ」シリーズの効果を体験。今回はレコード再生に絞ってその魅力を探った

まずデフォルトで音を聴き、それからフォノイコのRCAジャックにグラウンドアレイを1本挿して聴き比べると、一気に音の通りが良くなり、品位は良いものの若干霧の彼方に霞んでいた音像が、くっきりとその姿を現した。オケの遠近感が際立ち、分離良く粒立つのが快い。一度元に戻してもらったら、定位が一気に平面的な質感に。こちらの方が音楽情報を聴き取りやすいと、ともすれば勘違いされそうだが、本質的にレコードの内容をよく表しているのは、いうまでもなくノイズポンプ挿入後の音である。トゥッティの弦楽器が1本ずつ立体感を帯びて聴こえ、音楽のケバやヒダのようなものが加わるのだ。

炭山アキラ氏が51年前の優秀録音盤で音質変化を検証

興が乗り、「グラウンドアレイ」をもう1本フォノイコへ挿してみる。オケ冒頭の弱奏が、音量は変わらないというのに生々しく耳へ飛び込んできて仰天した。1本挿した時もかなり大きな違いだったが、2本挿しはひょっとして0→1本の時よりも違いが大きいのではないか。Dレンジは大幅拡大、弦の瑞々しさや管の爽やかさに痺れる。音楽の本質へグッと接近した気分だ。

フォノイコはこれくらいにして、次はプリへ1本挿してみると、やはり弱奏の生々しさ、スケール感が大幅に向上した。このまったく飽和点を見せない向上っぷりはどうなっているのだ、どこにこんな伸びしろがあったのだと、不思議に感じるレベルである。レファレンス盤は51年前の優秀録音だが、半世紀前の演奏がたった今、眼前で繰り広げられているような錯覚に陥る。

こうなったらプリへもう1本挿すしかあるまい。そうしたら、一聴して楽器が近づいたように聴こえる。いや、これはよく聴けば定位の深さは変わらず、楽器の表現力が増したのだと分かる。演奏者の情感の奔流が目に見えるようだ。

「パワーアレイ」の追加でノイズフロアがさらに下がる

ここで電源ボックスに「パワーアレイ」を挿してみると、ノイズフロアはまだまだ下がる。肩の力が抜け、武骨で男性的な演奏と思っていた盤が、その持ち味をしっかり残したまま、見事スルリと耳へ入ってくるようになった。いやはや、長く愛聴している盤だが、こんな魅力があったとは今日まで知らなかった。

さらにパワーアレイを「パワーアレイ・プロフェッショナル」へ挿し替えたら、何と音量が2段階くらい上がったようなクリアネスと微小域の再現性、見晴らしの良さが眼前に現出してたまげる。絶対的にはやや小さめの音で試聴していたのだが、この表現力はわが家では相当の大音量時の器の大きさだ。引っくり返せば、ご家族やご近所に気兼ねしつつ、音量抑えめで音楽を楽しんでおられる人にとって、ノイズポンプは救世主となるのではないか。

「コード・カンパニーの技術者は、世界一の電源サプライは発電所だというのです」と、アンダンテラルゴの鈴木 良会長はおっしゃる。発電所の潤沢極まりない電力を、ノイズで妨げることなくAC100Vで機器へ供給するパワーアレイ・プロフェッショナルは、最強のパワーサプライを投入したのと同等の効果を装置へもたらす。しかも、すべての機器へその効果が及ぶというのだから、購入にはある種の覚悟が必要な製品ではあるが、ここはコストのかけ甲斐があるのではないか。

同社では、パワーアレイ・プロフェッショナルを含む製品群の1週間貸し出しサービスも行っている。聴けば欲しくなることは保証付きだが、覚悟を決めて一度申し込んでみられることを薦めるものだ。

(提供:アンダンテラルゴ)


本記事は『アナログ vol.83』からの転載です。

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