『どうする家康』で注目・森崎ウィン、相次ぐ人気作への出演もおごらない謙虚さの正体は“自身のルーツ”にあった

森崎ウィン 撮影/冨田望

森崎ウィンさんは、2018年公開のハリウッド超大作『レディ・プレイヤー1』で主要キャストのダイトウ/トシロウを演じ一躍脚光を浴びると、’19年に出演した映画『蜜蜂と遠雷』では第43回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。また翌年にはミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2の主人公・トニー役を演じ、高い評価を獲得している。以降も、映画や舞台を中心に幅広く活躍し続けている森崎さんの転機「THE CHANGE」とは、いったいなんだったのだろうか。【第5回/全5回】

森崎さんはこれまで数々の作品に出演し、着実にキャリアを築き上げてきた。では、森崎さんは自分自身のことを、どんなふうに思っているのだろうか。

「駆け引きをしたくない性格なんですよね。自分がこうだと思ったらそれ以外には考えられないし、“駆け引きしている時間なんてもったいなくない?”って思っちゃう方ですね。好きなら好き、嫌いなら嫌い、みたいな。だから“これが欲しい!”ってなったら、どんなことがあっても絶対買う、ところもありますし、自分の信じたものに対しては絶対に信念を曲げないと思います。こんな言い方したら、ちょっとカッコつけすぎですけど」

そう言って笑った森崎さん。インタビューでのやり取りからも、それを感じさせる。何を聞いてもごまかさず、常にストレートな答えが返ってくるからだ。

「自分が想像できるものに対しては臆することなくどんどん強気にいけるんですが、想像できないものが来ると急に不安になっちゃうところもありますね。それによって落ち込むこともあるし、悔しく思うこともたくさんあります。例えば、自分が出演している映画の撮影でも、自分の演技の方向性や撮られる映像のことをうまく想像ができなくて“ヤバい、どうしよう!”って焦っちゃうこともあります」

順風満帆な役者生活を歩んでいるように見える森崎さんだが、実直な性格だからこそなのかもしれない。それはこんな話からも伺えた。

「僕はありがたいことに、こうして平和な国で暮らして、借金もなくて、住む家や家賃を毎月払えるだけのお金があって、ご飯が食べられているので、それだけでもう十分なんですよね。僕自身、もっといろいろな作品を世界に発信していきたいし、そのためにはもっと仕事を頑張らなきゃいけないって焦ることも多いですけど、やっぱりそういうときこそ“焦ったらダメなんだ、一回満足しようぜ”って自分に言い聞かせていますね」

何かを達成しても、その喜びを味わう間もなく、また次の何かを渇望してしまう。現代社会を生きる人々が感じているジレンマを、俳優・森崎ウィンさん自身も、また痛いほどかみしめていた。

人生のターニングポイントが「自身が生まれたこと」と語る理由

そんな森崎さんに今後の目標を聞いてみると、スケールが大きく、ワクワクするような話が飛び出した。

「自分がプロデューサーも務める、長編ミュージカル映画を作ってみたいですね。それも決して海外的なものではなく、日本オリジナルな作品をやってみたいです。一緒に作るチームメンバーも集めていって。実はその第一歩として、短編のミュージカル映画の監督をしてみたんです。難しかったですが、“プロのスタッフの方に協力していただければ十分にできる”という確信はつかめました」

その短編映画は、WOWOWが開局30周年を記念して行ったプロジェクト『アクターズ・ショート・フィルム』の一本として公開され、高い評価を受けた。森崎さんはミュージカル映画の夢についてさらに語る。

「本格的に長編を作るとなったら、やっぱり俳優さんのスケジュールは舞台のように2か月、3か月くらいは押えて、“ここワンカットでいきたいから、みんなで稽古をしましょう”ということができる時間を作らなきゃいけない。そうなると予算的にも大きくなるから、例えば賀来賢人さんがドラマ『忍びの家』をプロデュースされたように、世界的な映像配信企業に制作を手伝っていただくようなことも考えていきたいですね。いままでにないからこそ、やってみたいと思っています」

そう目標を語った森崎さんからは、ただ楽しく夢を語っているというのではなく、絶対に実現させるんだという強い意気込みを感じた。

最後に、これまでの人生で一番大きなターニングポイントとなった出来事について聞いてみると、実に森崎さんらしい答えが返ってきた。

「僕が生まれたことじゃないですかね。それ以外ないかもしれない。もちろん他にも言い出したらキリがないくらい転機はたくさんあったと思いますけどね。でも僕が生まれる前、親はたくさん苦労していたようなので、そういう状況の中で“よくぞ産んでくれた!”って思います(笑)。こんなに迷いなく生まれてきたことへの感謝を言えたのは、初めてって感じがしますね……」

そう言って照れた森崎さんは、これからも「生まれてきたこと」に感謝をしながら、俳優として多くの素晴らしい変化「THE CHANGE」と、魅力を私たちに見せ続けてくれるだろう。

森崎ウィン(もりさき・うぃん)
1990年8月20日生まれ、ミャンマー出身。’18年公開のハリウッド超大作『レディ・プレイヤー1』で主要キャストを演じ、一躍脚光を浴びる。‘20年に映画『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。同年、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で主演を務める。近年はNHK大河ドラマ『どうする家康』に出演するなど映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。7月15日に開催される『ミュージカルは最強です!2024』では、昨年に引き続きコントにも挑戦する。

■【画像】その場にいるだけで周りを明るく照らすミャンマー出身の大河俳優・森崎ウィンさん

森崎ウィン 撮影/冨田望

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