【レビュー】ワークマンの8800円ランドセルを買った 子供から大好評

by 河原塚 英信

ワークマンのランドセル「ES スチューデントデイパック」

ランドセル重たい問題は、多くの小学生とその親たちにとって、深刻だ。小学4年生の筆者の息子も、よく「荷物が重たいぃ~」とボヤいている。そこで、ワークマン初のランドセル「ES スチューデントデイパック」(8,800円)を、息子に使わせてみた。

小学生のランドセル事情

ランドセルが重いという話は、あちこちで聞かれる。筆者の息子も例に漏れず「小学生低学年が、こんなに重い荷物を持たされるのか」と驚くほど重い荷物を担いでいた。

今回、実際に1日に持つ荷物の重さを測ってみた。教科書やノート、それにパソコンの重さは、約2.5kg。「あれ? 軽いな」と感じたが、息子の場合は担任の先生の裁量で、宿題などがない科目の教科書類は、学校へ置いてきて良いことになっている。

ただし「置き勉」できるようになったのは今年が初めて。正確には分からないが、3年生までの荷物は、毎日4kgくらいあったのではないか。さらに息子の場合は、学童用の着替えなども別のバッグに入れて登下校していたし、水筒が必須なうえ、不定期で習字道具を持ち、月曜日と金曜日には上履きを、夏季には濡れた水着やバスタオルも加わる。今でも大人の筆者が持っても「重すぎるだろ」と感じるような重さだ。

その重い荷物で、どのくらい歩いていたかと言えば、自宅から学校までは300mほどと近いが、学校が終わると学童へ通っていた。1~2年の頃の学童は学校から約350mで、帰宅時の自宅までが約650m。

3年の頃は学校から学童が約650mで、自宅までが1km弱。都心なので、小学校も学童も、大人の感覚では、距離はそれほど長くない。また学童へは、できるだけ妻か筆者が迎えに行っていたが(1~2年は迎え必須)、そうでない時には、かなり辛い思いをしていただろう。

息子「何これ! いいじゃん!」

現在は4年生になり、宿題のない科目の教科書などは、担任の先生の裁量により、学校に置いていって良いことになった。また学校の授業が終わると帰宅してから子どもクラブへ通っている。そのため、ランドセル重い問題は、そうとう解消されているはずだ。それでも、ワークマンのランドセルを家に持って帰り、息子に「新しいランドセルだよ」と見せたところ、「おぉ! これ使っていいの!? やったぁ!」と喜び、嬉々として背負っていた。

背負うと「いいねこれ、すっごく軽い!」と、さらに喜んでいた。ただし重さに関しては、これまで使っていた牛革製のランドセルよりも実測値で約300g重く、約1.6kgある。メーカーの仕様表でも、従来のものが約1.2kgで、ワークマンのが約1.5kgと、やはり約300g重い。

生地にナイロン素材を使っているため、軽いだろうと思いがちだが、ワークマンのランドセルに関して言えば、軽くはない。ただしナイロン地といっても、ビジネス用やアウトドア用のバッグでおなじみの、コーデュラのバリスティックナイロンを採用。耐久性に優れ、知っている人であれば「おぉ……頑丈な良い生地を使っているな」と分かるはず。

生地にはバリスティックナイロンを採用
タフな生地として定評があり、ビジネスやアウトドア用の多くの製品に使われている

息子が軽いと感じたのは、新しいランドセルということでテンションが上がっていたからかもしれない。また後述するように「背負いやすい」設計だからかもしれない。

その後、ワークマンの空のランドセルをいじっていた息子が、「見て見て! ポケットがいっぱいあるよ。パソコンを入れる場所もあるよ」と、うれしそうに1つ1つのポケットを開けて教えてくれた。小学生は、ポケットが多いとうれしいようだ。

具体的には、フラップ(カブセ)を開くと、一番広い主室のほか、筆箱を入れるのに便利そうなファスナー無しのスペースと、小物を入れるのに良さそうなファスナーありのポケットがある。

フラップ(カブセ)を開いたところには、主室のほか2つのポケットがある

そのほか、片方の側面にはメッシュ地のポケットがあり、もう片方にはチャックを開くとマチが広がるポケットを備えている。いずれも水筒は入らないが、学童や放課後クラスの出席カードや、我が家の場合は、アップルのAirTag(忘れ物防止タグ)を入れるのに良さそうだ。

ちなみに取り付けられているファスナーは、YKK製。他のバッグで「やはりYKK製が一番頑丈だな!」と実感している筆者には、うれしいポイントだ。

背中に最も近い場所にパソコン用のポケットがある
ファスナーは、頑丈そうなYKK製

一般的な従来のランドセルと比べても、ポケットは多いかもしれない。前述のとおり、学童やこどもクラブ、放課後クラスなど、学校以外の場所で必要なカード類などや、忘れ物防止タグ(AirTag)やGPSなどを入れておけるので便利そう。

また、従来ランドセルと並べて見て気が付いたが、上部にある持ち手が明らかに長い。息子は3年以上も従来ランドセルを使っているから、その短い持ち手でも問題ないだろうが、使い始めたばかりなうえに、まだ力のない1年生などは、長い持ち手のほうが持ちやすいし、どこかに引っ掛ける時にも扱いやすそうだ。

従来のランドセルとの比較
従来のランドセルとの外観の比較
ワークマンのランドセルは、両側面にもポケットを備えている
左右の肩ひもに、Dカンがついている
背面と横に、太いリフレクター(反射テープ)が付いている

軽く感じるのは背中と肩ひものフィット感?

実際に、学校へ持って行く教科書などを入れて、息子に背負わせてみた。「いやぁ~、軽いよこれ!」とうれしそう。まだこの段階では、従来ランドセルよりも、ワークマンのランドセルの方が若干重い事実を知らないのだ。背負い心地を聞くと「これってリュックと同じだよね。すごくいいよ」とのこと。今にも走り出しそうなほど足取りが軽い。

新しいものを得た高揚感からなのか、足取りが軽い

筆者も実際に背負ってみて分かったのは、ワークマンのランドセルが軽く感じたり、背負うのがラクなのは、その構造にあるのだろう。縦走登山で使うような、容量30L以上あるような中型もしくは大型バックパックと、同じような構造なのだ。

まず背面部には、アルミステーと呼ばれるアルミ製の薄いプレートが入っている。これによって剛性を保ち、重い荷物を入れても背面がクシャッとならない。変に歪んだりしないので、背中のどこか1点に負荷がかかることなく、背中全体で重さを感じられる。

上述のアルミステーは平板だが、背中部分には柔らかいパッドがあり、背負った時に背中にフィットする。さらに背面パッドから伸びる肩ベルトも、登山用のバックパックのショルダーハーネスと構造が似ている。通常のランドセルの肩ベルトは、硬い革や人工皮革製なのに対し、パッド入りの柔らかいパーツが採用されているのも良い。そのため、ベルトが肩へ食い込むのを軽減してくれるはずだ。

背面部に内蔵されているアルミプレート
背中部分の柔らかいパッドにより、背負った時に背中にフィットする

一般的に、荷物を少しでも軽く感じられるよう持ち運ぶには、いくつか方法がある。その中で肝心なのは、荷物と体をできるだけ一体化すること。ハード面では、背中にピッタリとフィットするランドセルの作りであることだ。

その点、ワークマンのランドセルは、上述した通り背中に当たる部分の作りが良い。そのうえで、リュックやバックパックと同様に肩ベルトの長さを気軽に調整できる。もちろん一般的なランドセルも長さを調整できるが、腰に巻くベルトのような構造。無段階で調整できないうえ、硬い革製ベルトなので背負うたびに気軽に調整できるような代物ではない。

またワークマンのランドセルは、チェスト(胸)ベルトも搭載する。これにより左右の肩ベルトが不自然に開いて、肩からずり落ちることなく、体にフィットさせられる。

息子に「どう? 背負うのはラク?」と聞くと、「そりゃラクだよ。だって、これって完全にリュックじゃん!」という感想が戻ってきた。重い荷物を運ぶために最適化されている、リュックやバックパックと同じ構造だから、ワークマンのランドセルは軽く感じるのだろう。

肩ベルトの長さを容易に調整し、体にフィットさせられる

ちなみに、重い荷物を少しでも軽く背負うには、荷物の中でも重い物を背中に近い位置に入れたり、ランドセルの中で動かないよう固定すると良い。その点でもワークマンのランドセルは、パソコン収納用のポケットが、最も背中に近い位置にあるのも良い。

最も背中に近い場所に、パソコン用のポケットがある

一方で、パソコン用の収納スペースに関して気になったのは、入り口が狭いこと。息子が学校で使っている厚いパソコンだと、ギリギリ入れられるほどだった。

逆に画面が少し広い筆者の13インチのMacBook Airだと、表面がツルリとしていることもあり、収納しやすい。まぁスペースが狭いので、ランドセルの中でカタカタと動くことがない点は、良いだろう。

友達のインプレッション

息子の場合、クラスメイトと違うランドセルを持つことに抵抗がない様子。「無理して使わなくても良い」と言ったが、「いや、使ってみたい!」と言って、学校へ持っていった。「どうせ持っていくなら、みんながどんな反応をしたか教えて」と頼んだら、すぐに教えてくれた。

初めて持っていった時には朝の会が始まるまで、彼が言うには、目立つように「ドンッと机の上に置いておいた」とのこと。何人かがワークマンのランドセルを見て「おっ、ランドセル変えたんだぁ」と話しかけてきて、背負ってみる友達もいたという。その時の感想は、息子と同様に「なんだよこれ、リュックサックじゃん。こんなのいいのかよ!」というものだったそう。少し羨ましがる感情もこもっていたようだ。

息子が不快に感じるような言葉はなかったようで、その後も「荷物を(従来ランドセルに)入れ替えるのがめんどう」と言って、ワークマンのランドセルで通学している。1週間が経って「ランドセルは、いい感じ?」と聞くと「うん、いいよ」と、そっけない反応。クラスメイトの反応もほとんどなくなったようだ。

思えば今の小学生は、筆者の世代とは異なり、そうとう多様化が進んでいる。学年には何人かの外国人がいるし、男子でも髪を肩まで伸ばしている子もいる。ランドセルも、黒と赤以外にも紫やピンクなど色とりどりだ。ワークマンのランドセルくらいでは、驚く子供は少ないのかもしれない。

1週間が経っても満足気に使い続けている

特段、友達から気にかかるような反応がないのは、息子が既に学校に馴染んでいる4年生だということもあるかもしれない(1~2年生では、また異なる反応があるかも)。また、1カ月も使っていない段階でのレビューだということも、注意が必要だ。

特に生地について。バリスティックナイロンは、強靭な生地で、いくら雑に扱っても、6年間で生地自体がボロボロになることは考えられない。だが変色や汚れに強い生地とも言えない。上に載せた写真を見れば分かるが、従来のランドセルはカバー無しで4年を経ても、目立った経年変化は見られない。一方で、バリスティックナイロンはどうだろう。表面処理の仕方にもよるが、数年後には、色褪せや汚れが目立つような気がする。

特に雨で濡れた時には、染み込まないか心配だ。ということでワークマンのランドセルには、本体下部のポケットに、レインカバーが内蔵されている。「雨の日には、すぐにカバーを取り出せて便利だな」とも思ったが、そもそも従来の革製ランドセルでは、雨や雪で濡れても、染み込んだり汚れたりしたことがない。むしろワークマンのランドセルは、雨の日にはレインカバーが必須で、めんどうとも言えるだろう。

本体下部にレインカバーが収納されている
レインカバーをかぶせたところ
レインカバーがあれば、ランドセルが濡れるのを守れる。ただし、ストラップ部などには水が染み込むので、帰宅後によく乾燥させる必要があるだろう

また、フラップ(カブセ)を留めるパーツが特殊なのも気になるところ。4年生の息子も、少し戸惑っていたが、低学年だとなおさらかもしれない。

フラップ(カブセ)を留めるパーツが特殊。はじめは少し戸惑っていた
小学生男子のあるある……従来ランドセルでフラップを留め忘れた場合によくある情景(息子は、こんなことになったことないと言っていたが……)
ワークマンのランドセルでも、フラップを留めていれば大丈夫だった

色々と書いたが、8,800円という価格は、親にとってはたいへん魅力的。

小学校により異なるが、必ずしも6年間をランドセルで過ごすことが慣例ではない小学校もある。4年生くらいまで使って、残り2年は別のバッグに切り替えるつもりで購入しても良いだろう。

また逆に、4~5年生まで使っていたランドセルがボロボロになってしまって買い替えたいとか、雨や雪の日、夏の暑い時期にはワークマンのランドセルを使うなどといった使い方も考えられるかもしれない。

いずれにしても、リュックサックのような担ぎ心地の良いランドセルが、選択肢に増えたことは子供にもうれしいことだろう。

既に立派なランドセルを持たせている筆者の気持ちは複雑で、祖父母に買ってもらった従来のランドセルを、6年生まで使い続けてほしいとも思う。だが、今後どちらを使うかは、息子に任せたいと思っている

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