人生で初めて購入した車は驚きの1台 JK時代に旧車に興味 前オーナー「まさか女の子とは」

オーナーのびーとんさん【写真:ENCOUNT編集部】

あなたは人生で初めて購入した車を覚えていますか?

免許取得後、初めて購入した愛車は生涯の伴侶のように忘れがたいもの。最近はハイブリッド車や電気自動車(EV)など、燃費も考慮したさまざまなタイプの新車が市場に並ぶ中で、そこには目もくれず、意外過ぎるマニュアル(MT)車を“ファーストカー”に選んだ26歳女性オーナーがいる。引き渡しの際、前オーナーも驚いたという、びーとんさんに詳しい話を聞いた。

車体のグリーンカラーが渋い、国産のMT車。これが、びーとんさんの愛車だ。免許を取って正真正銘の1台目。「自分で操っている感があるのがすごく楽しくって」と笑顔を見せる。

「乗り心地はめちゃくちゃ最高です。ふわふわだし、段差とかでも全然吸収してくれるし。昨日ちょうど後ろに乗ったんですよ。最高ですね。めちゃくちゃ寝れる(笑)。運転も癖がないんですよ。だから誰でも運転しやすいし、めちゃくちゃいい車です、この子」とほれ込んでいる。

乗るだけでテンションが上がる車は、1979年式のトヨタ・クラウンMS105(後期型)。昨年2月に購入し、7月に納車。もうすぐ1年を迎える。

「1番好きなところが内装なんですよ。飛行機のコックピットみたいで、もう常にるんるんです」

旧車に興味を持ったのは、高校時代だった。

「アルバイト終わりに、夜中なんですけど、自転車でフラフラしながら帰っていたら、輸入中古車屋さんが道沿いにあったんですけど、そこにぼやっと光で照らされていた緑の車がありました。うわ、何この車と思って自転車降りて、名前だけ知ろうと思って、こうやって(のぞいて)見て、へえーそうなんだ、みたいな。そこからです」

車の正体はデイムラー・ダブルシックスだった。衝撃を受けたびーとんさんは、19歳で免許取得後、本格的に旧車を探し始める。調べるうちに、ダブルシックスが旧車初心者にはややハードルが高いと感じるようになり、たどりついたのがクラウンMS105だった。

購入条件は車体の色とMTであること。個体はあってもオートマチックだったり、色違いだったり、状態がボロボロだったりと、なかなかドンピシャな車に巡り合えなかったが、最後はSNSを通じて希少な縁を引き寄せた。

MTの楽しさを感じたのは、教習所がきっかけだった。

「将来どんな車に乗りたくなるか分からないから、とりあえずMTでなんでも乗れるようにしとこうと思って教習行ったんですけど、そのときですね。うわ、超楽しいじゃんって。逆にオートマの授業もあるじゃないですか。うわ、つまんねえ、こんな眠くなるやんと思いました。MTが楽しいなって思ったのはそこが初めてかもしれないですね」

旧車オーナーは、口々にMTの素晴らしさを熱弁するが、びーとんさんも早々にとりこになった。

「ドキドキはもちろんしますけど、でも楽しいが勝っちゃう。怖いとかはそんなに……。慣れかな、みたいな」

現車確認すると、状態は理想的だった。

「思っていたよりすごい、うわ、うれしい! とかもなくて、ぽっと熱くなるものはありましたけど、実感が湧かなかったですね。おーって感じ。ぽーって感じ」

高揚感を感じつつ、手に入れた念願の愛車だった。

渋すぎる車体だ【写真:ENCOUNT編集部】

イベントで“里帰り” 前オーナー感激「いい嫁ぎ先に送れて」

令和の時代に45年前のクラシックカーに乗る。

母の反応は「うわ、すご」だった。一方、周囲には車好きが多く、「おめでとう」と祝福してくれた。公道に出ると、乗っているだけで、人々が振り返る。「お友達がちょっとずつ増えてきたかな。これを乗っていることによってコミュニティーが広がったかなっていうのはすごいうれしいです。止まっているだけで、好きな人とか見てくるじゃないですか」。車関係の交流関係が一気に広がった。

古い車であっても、「後悔はしてないです」と言い切る心意気。旧車でネックなのは壊れたときの部品の確保と修理だが、「大丈夫です。頑張ります! この間、ダブルシックスに乗せてもらう機会があったんですけど、やっぱり欲しくなりますけど、かといってこれを手放すというのは選択肢にないです。増車したいです」と、気持ちは全くブレない。

今年5月、びーとんさんの姿は、自動車イベント「第1回オールジャパン旧車・希少車ミーティング in モビリティリゾートもてぎ」にあった。わざわざ静岡から栃木まで駆けつけたのは特別な理由がある。

「元オーナーさんに会いたくて、もともと計画をずっとしてて、きっかけというかチャンスがなかったんですけど、ちょうどイベント第1回であるし、エントリーしがてら里帰りしようと思って」

前オーナーは茨城在住で、約1年半ぶりに再会を果たした。

車両引き渡し時の状況について、前オーナーに聞くと、「びっくりしました。このクラウンに乗りたいというのがまさか女の子とは。そこは意外でした」と率直な気持ちを打ち明ける。3年ほど大切に乗り、ノーマルのまま維持してきた車だった。「こんなふうに乗ってくれるなんて最高です。こういうご縁があってつながれてよかった。いい嫁ぎ先に送れたのがすごくうれしくて」。里帰りを大歓迎した。

車の趣味趣向は、人それぞれ。最近の車やEVは、びーとんさんにとっては合わなかった。「むしろ嫌いですね。あれを乗るぐらいだったらチャリで頑張ると思います。フフフッ」

車にとってもよいオーナーとの巡り合わせは運命。ここまで思ってもらえるクラウンは幸せに違いない。

今後について、びーとんさんは、「ずっと乗りつつ、いろんなとこ行きつつ、きれいなまま乗っていきたいですね」と力を込めた。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム

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