福島医大が漢方診療全県拡充へ 来月にも付属病院隣に鍼灸拠点

 高齢化でさまざまな病気に苦しむ患者が増加する中、福島医大は患者の免疫力向上など幅広い効果がある漢方の診療体制を拡充する。会津若松市の会津医療センターで実施している漢方薬と鍼灸(しんきゅう)を併せた治療を中、浜通りの患者らにも広げる。8月にも福島市の付属病院の隣接地に漢方医学研究室鍼灸部を新設し、鍼灸師が常駐して外来患者を診療する。付属病院にある漢方内科との連携を視野に入れ、それぞれの症状に合った治療の実現を目指す。

■会津での成果生かす

 鍼灸は細い針で体のツボを刺激して病気を治す力を高める治療法として需要が高まっている。鍼灸部は付属病院近くに整備中の施設で体の痛みや投薬に伴う副作用などに苦しむ患者への診療に当たる方針だ。付属病院は漢方内科で漢方薬を使って体質改善などの治療に当たっている。具体的な診療体制などは今後詰めるが、漢方内科など他の診療科との連携による症状に合わせた治療などを想定している。医大の豊富な知見を組み合わせることで高度な医療提供につなげる。

 県鍼灸師会などとの連携も検討しており、診察データを使った共同研究などが期待される。関係者によると、鍼灸治療を行っている医大は全国でも少ない。漢方診療の地域医療への普及も進むとみられる。

 会津医療センター付属研究所漢方医学研究室の鈴木雅雄教授は「例えば、耳のツボを刺激して食欲を抑制することで、本県が長年抱えている肥満改善にも効果が期待できる」と対応できる症状の幅広さを強調する。

 会津医療センターは2013(平成25)年5月に開所し、県内初となる漢方内科の診療に力を入れてきた。多彩な漢方薬を取り扱い、地元産のオタネニンジン(会津人参)やシャクヤクを活用している。鍼灸治療の組み合わせによる治療は好評で、年100人ペースで鍼灸診療を受ける患者が増え続けているという。医大はこれまでの成果を生かし付属病院の機能を強化することで、県内全域の患者が、センターが培ってきた漢方診療の恩恵を受けられるようにする。

■鍼灸部診察室を整備 会津医療センター敷地内 来年12月の供用目指す

 福島医大は会津若松市の会津医療センター敷地内に別の建物を造り鍼灸部の診察室などを整備する。来年12月の供用開始を目指す。

 病院東側の駐車場やロータリーの一部に建設し、鍼灸部の診察室4室や待合室の他、調剤薬局などを備える見込み。

 会津医療センターによると、現在の鍼灸部のスペースには、外来患者の増加に伴い外来化学療法室を増設する方向で検討を進めている。

© 株式会社福島民報社