4人に1人が「リベンジ夜ふかし」の常習者?睡眠不足で翌日の仕事に影響も…自由時間の確保において意識すべきこと

寝ないといけない時間なのに、自分の時間を楽しみたくてつい夜ふかししてしまう…。こんな経験はないだろうか?

日中に自由な時間がなかったり思うように活動できなかったりしたとき、眠る時間を削って満足を得るために夜ふかしすることが「リベンジ夜ふかし」などと呼ばれている。

セイコーグループ株式会社が6月3日に発表した「セイコー時間白書2024」の中で、現代人の半数近くが「リベンジ夜ふかし」経験者であることが判明したのだ。調査は4月12日~4月15日、全国の15歳~69歳の男女1200人を対象にインターネットで実施した。

この調査でリベンジ夜ふかしの経験を聞くと、45.8%とほぼ2人に1人は経験。「ほぼ毎日」(4.8%)を含む「週1日以上」は27.3%で、同社は「約4人に1人はリベンジ夜ふかし常習者です」とした。

なお担当者によると、リベンジ夜ふかし経験者を年代別に見たとき、10代や20代の若年層ほど頻度が高かったという。

最近は時間の使い方におけるタイパ(タイムパフォーマンス)重視が定着してきたが、同社はタイパで生まれた時間でしたいことについても調査している。「動画視聴」(19.6%)、「睡眠」(17.8%)、「読書」「ネットサーフィン」(同率16.5%)などの回答が多かった。

リベンジ夜ふかし中の過ごし方については調査していないとのことだが、これらの時間に充てていることが考えられそうだ。

睡眠時間を削って自由時間を確保

なお2024年は「ばたばた」を顕著に感じ、忙しく慌ただしい側面も見てとれる。

「普段どの程度時間に追われていると感じるか」の調査では、「時間に追われている感覚を感じている」「時間に追われる感覚が強くなった」「1日24時間では足りない」という回答が、いずれも前年より増加。

セイコーの担当者は、リモートワークなどが推奨されたコロナ禍を経て、また通勤や通学の時間が復活したことが要因のひとつだと考えている。

“足りない”と感じている分の時間は、「睡眠時間」を削って確保しようとする人が多いと考えており、それがリベンジ夜ふかしにもつながっていそうだ。

しかし、夜ふかしで寝不足になってしまったら、せっかく時間を生み出せたとしても、生産性が悪くなる気もする。夜ふかししてまで自由時間を確保する背景には何があるのだろうか。

「セイコー時間白書2024」にコメントを寄せた、「時間学」を専門とする千葉大学大学院人文科学研究院の一川誠教授にくわしく聞いた。

――「約4人に1人がリベンジ夜ふかし常習者」という結果をどのように受け止めている?

夜型のクロノタイプ(生まれつき備わっている体内時計のパターン)が全人口に占める割合がおおよそ3割ですので、4人に1人と言うのはそれと対応しているのかもしれません。

夜型のクロノタイプは早い時間帯には眠れないので、夜ふかしになってしまうのはある程度仕方のないことだと思います。ただし、夜型であっても、未明までの夜ふかしは問題があると思います。

リベンジ夜ふかしで悪循環も

――リベンジ夜ふかしは、逆に翌日が寝不足になってタイパが悪くなることはないの?

睡眠時間が短いと、次の日の作業にも影響すると思います。しかも、毎日の睡眠不足は蓄積的に作業効率を落とします。長い目で見れば、睡眠時間を削って作業を続けることは避けて、十分睡眠をとって作業した方が作業の効率はいいと思います。

――リベンジ夜ふかしの問題点にはどんなことがある?

夜ふかししてSNSのチェックや動画の視聴などの自由時間を取ることによって、それなりのリラックス効果はあるかもしれませんが、睡眠時間を削ってしまうことは問題です。目的を定めないネットサーフィンは「時間泥棒」の典型で、主観的に感じているよりも長い時間が過ぎてしまうものです。

睡眠時間を削りすぎて疲労を溜め込まないよう、「夜ふかし」の終了時間について知らせるアラームを設定するなどして、睡眠時間を削りすぎないよう工夫をした方がいいと思います。

――夜ふかししてまで自由時間を確保してしまうのはなぜ?

日本人の睡眠時間は大人から子供まで、どんどん短くなっていることが指摘されています。睡眠時間を削ってまで作業をするのは、もしかしたら日本社会の生活パターンの問題の一つなのかもしれません。

日本人は時間に正確と考える日本人が多いように思います。確かに、待ち合わせの時間や電車の運行などの正確さは日本の社会の特徴だと思います。

しかしながら、仕事の終わりの時間との関係に関しては、日本はかなりルーズな社会だと思います。一応、ルールの上では終業時間は決められています。しかしながら、それを超えて作業をすることが求められたり、時には美徳のように捉える風潮もあるように思います。生産性よりも、作業に長い時間をかけることを評価するような空気もあるように思います。

でも、睡眠や家事をはじめとして、生活上どうしても必要な作業をする時間を削ってまで仕事を続けることを容認することは、作業効率を高める上でも問題がある生活習慣であるように思います。

――どうして、問題がある生活習慣であるように思うの?

眠気や疲労を感じているのに作業を続けても、いいパフォーマンスは上がらないものです。また、本来寝るべき時間帯に起きて作業をすることは、健康上のリスクもあることも忘れて欲しくありません。睡眠時間を削るような生活習慣は、睡眠障害や生活習慣病、うつなどのリスクを押し上げる傾向があります。

夜ふかしをして、睡眠時間を削ってまで作業をするのではなく、ルールの上で決められた始業時間と終業時間との間で、いかに質の高い仕事をするのか、そのために作業の時間配分をどうするのが自分に向いているのか調整した方が、長い目で見れば作業効率は高くなることが期待されます。

仕事のリズムは自分に合っている?

――無理なく自由時間を確保するにはどんなことを意識すればいい?

タイパを意識することで自由時間を確保できると考えますが、その一方で、「なんでもタイパ」に圧を感じる人も一定数いることが今回の調査で分かりました。

過去のブームでは「何でもかんでも時間を短縮する」という特徴がありましたが、最近は短縮できることは短縮して、時間をかけたいものには時間をかけて楽しむ人が増えてきています。

様々な道具を使ってどんどん時間を短縮していくことは可能ですが、必ずしも満足感につながるわけではありません。そのためどのように時間を使えると満足感を得られるのかを考え、どの時間を短縮して、どのような時間を確保したいかを考えることが、タイパのための道具を使いこなすうえでも大事になってくると考えています。

なお、今回は「クロノタイプ」の簡易調査も行いました。タイパを向上させるための手段のひとつとして、個人がよりよいパフォーマンスを発揮しやすい時間帯を意識して活動することで効率を高められると考えます。

夜型の人は朝が苦手で遅刻しやすかったり、朝型の人は遅い時間になるとミスが増えたりします。各自がクロノタイプに合わせて業務を行い、それをチームで合意形成すれば、全員が同じリズムで仕事をしなくても、チーム全体としての効率を高めることができるはずです。

現代人の5人に1人が、仕事のリズムが合わずにツライ思いをしている人がいるという実態も分かりました。このツラさを軽減するだけでも、仕事の効率が改善されぐっと働きやすい職場になるのではないかと思います。

各々が自分のクロノタイプを知り、自分自身のクロノタイプと理想の生活リズムとのズレを減らしタイパを向上させることができると、自由時間の確保にも寄与できると考えます。

タイパの考え方はこれからも続きそうだが、自分に合ったスタイルで、無理なく自由時間を確保していきたいものだ。

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