「金田一」原作の樹林伸らがアニメーション制作者発掘・育成「プロジェクトONE」を発足、一般公募から若手クリエイターの発掘・育成と新IPの創出を目指す

日本が世界に誇る文化といえば何でしょうか。
和食?音楽?ゲーム?
日本の皆さんが想像する“日本”はそれぞれ違うと思いますが、世界から見ればきっと「アニメ」の印象が強いでしょう。
古くは「鉄腕アトム」から「機動戦士ガンダム」「ドラゴンボール」「千と千尋の神隠し」「NARUTO」「進撃の巨人」「鬼滅の刃」などなど、日本はもちろん世界中で愛される作品が数多く誕生してきました。そしてきっとこれからも変わらないはずです。
しかし近年のアニメ業界は市場の拡大に比例しないアニメーターの待遇や生成AIをめぐる問題にも直面しています。
クリエイターの待遇を上げるにはどうすれば良いのか?新しいアニメ制作のあり方とは?
そんな業界が抱える悩みに一筋の光を差すプロジェクトが始動しました!
新しいアニメーション制作者の発掘・育成と新IP創出を目指す「プロジェクトONE」です!

新IP創出を目指す「プロジェクトONE」が発足

「プロジェクトONE」は、“クリエイティブの源流を辿る”をテーマにしたWEBメディア「Ø ONE(ゼロワン)」を中核事業として展開。
コンテンツ第1弾にはプロジェクトの火付け役で「金田一少年の事件簿」や「神の雫」などで知られる樹林伸さんのインタビュー記事が公開される予定です。

樹林伸さんのインタビュー記事は近日公開

さらに、独自のワークショップやアカデミー事業を通じてレジェンドの創作ノウハウを若いクリエイターに伝えるインキュベーション機能や、新旧クリエイターが協力して新しいIPの創造を目指すプロダクション機能も内包。
Origin for Next Entertainment”をミッションに掲げ、新しい才能を発掘するのが「プロジェクトONE」です。

樹林伸、諏訪道彦が「プロジェクトONE」への想いを語る

樹林伸さん(左)、諏訪道彦さん(右)

都内某所で行われた記者会見には「金田一少年の事件簿」「BLOODY MONDAY」などの原作者・樹林伸(@agitadashi)さんと「名探偵コナン」「シティーハンター」などのテレビプロデューサー・諏訪道彦(@suwacchi)さんが登壇。
プロジェクト発足の経緯やそこにかける想いなどが語られました。

中山淳雄さん(左)、中川亜紀子さん(右)

司会進行はエンタメ社会学者の中山淳雄(@atsuonakayama)さん、声優の中川亜紀子(@akiko12nakagawa)さんです。

樹林伸さん(左)、諏訪道彦さん(右)

自由な発信ができる部分に強みがあるWEBメディアですが、アニメとなるとどうしても放送や配信に付随するものになってしまう風潮に疑問を投げかける樹林さん。
以前から「クリエイターとしてはコンテンツを作り上げるのが最初で、どこで流れても良いんじゃないの?」という想いがあったといいます。
放送や配信の都合に囚われず、クリエイターの情熱をそのまま形にして発信できる。そんな機会づくりが「プロジェクトONE」の展望のひとつです。

プロジェクト発足とともに企画進行中というのが「ショートアニメの制作」
樹林さんがストーリーを執筆し、諏訪さんを始めとするレジェンドクリエイターが肉付けを行います。
そこへ次世代を担う若いクリエイターが参加し、レジェンドたちの創作の極意を継承することで新しいエンターテインメントを生み出すというわけです。
諏訪さんも「アニメ制作は脚本やアニメーション、声優など幅広い分野のチームワークが必要ですし、この作り方自体はこれからも大きくは変わらないと思います。経験は少ないけど情熱がある若い世代と一緒に作品づくりをしていきたい」と語りました。

「プロジェクトONE」はに独自のクラウドファンディングを実施する予定です。
シナリオ、アイデア、キャラクターの1枚絵など形式は問わず、若き才能からの応募を幅広く受け入れるとのこと。
プロジェクトONE実行委員会に選出された方には取材が行われ「Ø ONE」に記事を掲載。作品がカタチになるまでを丁寧にサポートしてくれます。

技術はもちろん経験も同じくらい重要なクリエイターという職業において、レジェンドに囲まれながら創作できるチャンスは滅多にありません!
ぜひ「プロジェクトONE」公式X(@0ne_media)をフォローして最新情報をお見逃しなく!!

樹林伸さんのコメント

僕はシナリオライターがメインですから、企画を作ってシナリオも書くつもりです。
分かりやすくて入りやすいショートなものが良いかなと思っているんですが、皆さんにはそこに込められた世界観の大きさみたいなものを作っていくんだぐらいのつもりで挑戦してほしいなと思います。

諏訪道彦さんのコメント

0→1(ゼロイチ)というのはある意味使い古された言葉だと思います。
僕はプロデューサーなので1→100を狙っていた人間ですけども、一歩前のゼロイチということを新たな世代と一緒に取り組めることをすごく楽しみにしています。
どんな形であれ、自分の思ったことを表現して見せる、聞かせるというのは大事だと思うので、この企画が皆さんにとっての第1歩になっていただければ大歓迎ですし、嬉しいと思います。
ぜひご応募くださいませ!

業界の最先端を駆けるクリエイターたちのトークセッション

「プロジェクトONE」発表記者会見の後半では樹林伸さん、諏訪道彦さんに加え、「PSYCHO-PASS サイコパス」や「進撃の巨人(Season 1-3)」「SPY×FAMILY」などを手掛ける和田丈嗣(@gwada_wit)さん、「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」や「プロメア」「モンストアニメ」などを手掛ける平澤直(@naohirasawa0617)さんも登壇し、アニメ業界について様々な視点から議論を交わしました。

アニメ市場の変遷について

和田丈嗣さん

中山さん: 海外における日本アニメの市場規模は日本国内と同程度にまで拡大してきました。それに連動して漫画、MD(グッズなど)の市場も同じように大きくなっています。アニメ市場の変遷についてどのようにご覧になっていますか?

諏訪さん: 僕は1986年からずっとTVアニメに携わっているので、テレビにおけるアニメの変化というのはよく体感しています。放送時間帯で見てもゴールデンタイムから土日の朝、深夜へ・・・という移り変わりは確かにありましたよね。市場という観点でいうと、もちろん視聴率が取れることも重要ですが、それと同時に複数のアニメを展開しながら爆発的なヒットを狙ってビジネスに繋げていくという。ビッグタイトルが生まれない局は焦って何かを欲しがるというような繰り返しで各局が棲み分けているような気がしますね。

中山さん: 2010年代、特に「進撃の巨人」は海外への切り口を開いていった気がするんですが。

和田さん: 「進撃の巨人」を作ったのは株式会社ウィットスタジオ設立のタイミングだったんですが、当時は海外販売という言葉が無かった気がします。海外配信なども意識していなくて、やはりDVDやBlu-rayの売上というのが重視されていました。その中で「進撃の巨人」というのは海外にも熱狂するファンがいて、イベントなどを展開していけるようになったひとつのキッカケになったと思いますね。

平澤さん: まさに10年前はDVDやBlu-rayの売上を意識する時代から、配信向けや大きなゲームの宣伝としてアニメが制作されるという時代の幕開けだったと思っています。1996年~1997年頃には深夜アニメという文化が誕生する。アニメ業界は20年に1回くらいの大きな転換を繰り返してきました。そして今は2013~2014年頃から始まった「巨大配信サービス」や「巨大ゲームIP」のお金をもとにしたアニメ制作がちょうどミッドポイントに入ったという時代だと思います。1996年の10年後である2006年には「涼宮ハルヒの憂鬱」や「コードギアス」など深夜アニメに対応した作品が登場しました。これからはそういった“時代に対応した作品”が出てくるのかなとワクワクしています。

プラットフォームとの関係性

平澤直さん

中山さん: 樹林さんはTVアニメはもちろん、Huluなど世界のプラットフォーマーとも仕事をしてきたかと思いますが、プラットフォームとの関係性はどう変化してきたんでしょうか。

樹林さん: テレビの枠内でCMを回して、あっても再放送くらいという時代から、世界中で配信する時代になったということを考えると本来はもっとお金をかけても良いと思うんです。でも今の方法ではどうしても局と原作者、制作会社が契約して・・・という枠に収まっちゃいますよね。そうじゃなくて、制作者が直接企業や個人に売り込めば乗ってくれるひとは多いと思うんです。クラウドファンディングでも何でもクリエイターとユーザーが直接結びついて、そこへプラットフォーマーが加わる。(コンテンツを作るクリエイター側が力を持てるような)そんな形になってほしいし、そうなるんじゃないかなと思いますね。少人数・低予算でも最新のアプリケーションやAIなんかも使って素晴らしい作品が作れる時代ですし、制作者側を中心に回り始めたらすごい面白いですよね。

中山さん: 別のジャンルで恐縮なんですが、以前吉本総合芸能学院(NSC)を作った方にインタビューした際に聞いたのが、ダウンタウンってNSC1期生なんですよね。学校を卒業してそのままデビューさせるからコントロール外の2人が出来上がったわけで、今までの徒弟制度だったら彼らは生まれてなかっただろうと。そうやってメディアを1回振らせてフォーマットを変えた瞬間というのは今までになかった才能が飛び出す可能性に満ちているんじゃないかなと思います。

アニメーション制作の未来 AIとの共存

諏訪道彦さん

中山さん: AIは漫画やアニメ、ゲーム制作でも徐々に使われ始めているんですが、皆さんの取り組みや考え方などがもしあればお聞かせいただけると。なかなかまだ言及しづらい時期ではあると思うのですが。

樹林さん: 最初はアニメも1枚1枚手書きでしたけど、ある時期からデジタル技術を使って効率化してきました。そして今はシーンそのものを上手く表現することで生成AIに作ってもらうという時代がすぐそこまで来てますよね。各社がいろいろな模索していますし、実は「プロジェクトONE」のスタッフもサイバーエージェントのAI関連企業にアプローチしています。まさにこれからの分野だと思いますが、そのもとになるのは若い人たちのアイデアや個性だと思うんです。いかにも生成AIで作りましたというようなものではない、個性を感じられるような作品に期待したいですね。

中山さん: 生成AIだと50点くらいにはすぐ持っていけるんですよね。ただそこからクオリティを上げるのが難しい。いわゆるマスピ顔(マスターピース顔、生成AIで作成した絵がどれも似通ったものになってしまうこと)って言われたりもしますが。

樹林さん: ほんと同じなんですよね(笑) 広告なんかでもみんな同じ顔で体型が少し違うくらいの差しかなくて。いわゆる整った顔がカッコイイ、美しいわけではないというか、若い人たちには個性や好みをドーンと突き出して我々にアプローチしてほしいですね。

諏訪さん: 僕はAIアートグランプリの審査員もやってるんですが、AIのひとつの在り方として、過去に亡くなった奥さんと一緒に歌うというのは作品としてとても素晴らしいと思いました。一方でリテラシーの問題があるのも確かで、作品や場面によっては好き嫌いが分かれるところだと思います。いちばん大事なのはAIを道具として使いこなすということだと思っているので、私なりにも勉強している最中です。

プロジェクトONEへの期待

樹林伸さん

平澤さん: 日本はゼロイチで作ったものをどんどん拡張していって、最終的にまるでプラットフォームであるかのように育てていくということに長けている国だと思います。その中でアニメでは漫画や小説などの原作を持たないオリジナル作品というのがあまり多くないのが現状です。自分たちのクリエイティブをどう磨いていくか、漫画や小説を経ずにアニメを作ってみたい!という人たちに多くのチャンスを提供できていない業界といえます。こういった機会によって映像系のクリエイターが大きく広がっていくIPの根幹になり得るんだというチャンスを提供できるのは意義深いですし、とても期待しています。

和田さん: ほんといい企画ですよね。応募したら樹林さんと諏訪さんに会って話が聞けちゃうっていう(笑) いまは色々な情報を集められる時代ですが、「プロジェクトONE」のキーワードにもなっている“レジェンド”といった方々と一緒にモノづくりをして“継承”してもらえる機会というのはなかなか無い。ぜひそこから面白いIPができると嬉しいと思います。

諏訪さん: 自分は2023年9月に会社をやめてフリーになったと同時期に「プロジェクトONE」のお話をいただきました。ある程度経験を積んできたとはいえ、これまでイチヒャクをしてきた人間が会社をやめた後何ができるんだと不安でもあったんですが、そこにゼロイチを募集するという!願ってもない話ですよね。我々も全力で楽しい企画を見ていきたいと思いますので、どしどし応募お待ちしております。

樹林さん: 僕は基本的にはゼロイチを作るのが得意だった人間ですが、一方で編集者としてその1を10なりに育てていくということもやってきたんですよね。その中でやっぱり若いヤツと組んでやりたいという気持ちはずっとあって、先日も20代の人と一緒にフラットに仕事をしてきました。自分で言うのも何ですけど、僕は人が会って緊張するようなタイプの人間では全く無いんですよね(笑) そうですよね?

諏訪さん: そうだと思います(笑)

樹林さん: ですよね?(笑) 自分の中では上も下も意識したことはなくて。どんどん来てもらって言いたいこと言ってもらって、僕も言いたいこと言いますから。でも頭ごなしに言うんじゃなくて、僕の中で培われた面白さのコツのようなものを短く伝えられたら良いなと思いますね。才能を拾うための教育の場としての役割もあると思っているし、今の時代は教室がなくてもオンラインでできるじゃないですか。少し時間がかかるかもしれないけども、必ず面白いものになっていくんじゃないかなと僕はそこまで期待しています。

新時代を築く「プロジェクトONE」に期待

左から中川亜紀子、中山淳雄、樹林伸、諏訪道彦、和田丈嗣、平澤直(敬称略)

樹林さんが仰るように、これまでのアニメというのはテレビ局や動画配信サービスなどが強い権力を持つ仕組みが慣例化していました。
その仕組みのひとつが製作委員会方式であるとするならば、2022年10月には「チェンソーマン」が制作会社の一社提供で放送されたことが話題になりましたよね。
もちろん良し悪しがあるので必ずしもどちらが良いとは言い切れませんが、今回の「プロジェクトONE」はとにかくクリエイター目線で、まずは情熱をモチベーションに作りたいものを作る。そして何らかの形で発信できる方法を模索する。
そんなクリエイター主導のプロジェクトであることが伝わってきました。

制作サイドの働き方や待遇の改善が急務であるアニメ業界。
レジェンドが集結した「プロジェクトONE」から新時代のクリエイターと新しいIPが生まれることは必然ではないでしょうか。
樹林さんを始めとするレジェンドクリエイターへのインタビュー記事は2024年7月中旬にWEBメディア「Ø ONE(ゼロワン)」で公開されるほか、2024年内にもクラウドファンディングやクリエイター募集企画が始動する予定です。
新しいイノベーションの瞬間を見逃すな!

© Ø ONE実行委員会

© Saiga NAK