“岸田降ろし”は加速するか?続投の可能性はあるのか?…自民党内でうごめく政局の舞台裏を読み解く

岸田文雄首相に対し自民党若手議員、そして菅義偉前首相が批判の声をあげている。一方、首相を支えてきた麻生太郎副総裁との関係はどう変化したか。

「BSフジLIVEプライムニュース」では自民党議員と識者を迎えて岸田首相を取り巻く環境を検証し、次の自民党総裁選を分析した。

ほとんどの派閥が解消され、総裁選はどう変わるか

竹俣紅キャスター:
自民党の茂木敏充幹事長はフジテレビの「日曜報道 THE PRIME」出演時に「総理になってやりたい仕事があるのは間違いない」など自民党総裁選出馬への意欲を示したともとれる発言をした。

竹俣紅キャスター:
石破茂元幹事長は「何をどうするか短いフレーズできちんと言えなければ出馬表明をしてはいけない」と述べ、明言を避けた。また朝日新聞は、高市早苗経済安保大臣が国会内で開かれた非公式の会合で関係者に対し「率直に言って出馬する」と発言した、と関係者の話として報道。高市氏はSNSに「短時間の意見交換をしただけ」と投稿した。高市さんは出馬宣言をしたのか?

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
現場からちゃんと聞けておらず私から言えることはないが、一般論としては当然書くに足る取材をした上で書いたと考える。高市さんは候補として党内でも注目されている。

反町理キャスター:
石破さんについては「確定的な出馬表明」というトーンで報道した。

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
意欲を持つこと、それを周辺に伝え始めること、実際に表明することなどいくつかのフェーズがある。我々はそれをとらえて書く。読売新聞さんも、麻生副総裁との会合をきっかけに河野太郎さんが意欲を、という記事を書いている。ポスト岸田の動きにメディアが注目し始めた段階。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
意欲がある、ないという話を一日ごとにやるのはいかがなものか。出たいなら出たいと堂々と言えばいい。「後出しじゃんけん」じゃないと不利だとか、だらしない。

津島淳 自民党衆議院議員:
従来の総裁選と決定的に状況が違うのは、派閥があるかないか。意欲ある人は自分で探っていかないと感触がつかめない。まだお互い牽制をしている状況。

細野豪志 自民党衆議院議員:
派閥の意味合いが薄れ解き放たれたのだから、慣例に基づかない新しいやり方を見せていいし、その中で政策論争も深まっていくと期待する。

反町理キャスター:
細野さんは例えば二階俊博さんから「今回の総裁選では誰それに入れてくれ」と頼まれたとき、それでも自分で決める?

細野豪志 自民党衆議院議員:
私は二階派に入ってから自民党に入らせてもらった。すごくご恩がありストレートに言われればグッとくるが、自分で判断しようと思う。もちろん政策もだが、国を背負う準備をしているか、いざ有事のときにどう判断するか、憲法にどこまで思い入れがあるか、明確に判断基準がある。

中堅・若手から菅前総理まで相次ぐ“岸田降ろし”発言

竹俣紅キャスター:
自民党の中堅・若手議員から岸田降ろしともいえる発言が相次ぐ。麻生派の斎藤洋明衆院議員は自身の政治資金パーティーで「リーダーの責任も大いに議論されるべきだ」、茂木派の東国幹衆院議員は党の会合で「総裁選出馬を思いとどまり、自民党に新しい扉を開く橋渡し役を」と発言。安倍派を退会した高鳥修一衆院議員は記者団に「リーダーは部下を守るために責任を負うもので、総理もその1人だ」と述べた。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
もちろん岸田さんにも別の責任の取りかたはあった。批判はあっていい。だが政治とカネについて法律違反した人からも声が出ている。原因を作ったのはあなたたちだ、まず謹慎せよ、人のせいにしている場合ではないと強く言いたい。

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
内閣以上に自民党の支持率が急速に落ちており、危機感の表れだと思う。局面をガラッと変えることが必要。だが今すぐではなく9月の総裁選でとなると、では9月までの政権与党としての責任をどう考えるのかは語るべき。

反町理キャスター:
津島さんの代議士会での発言「本来この場に来て総裁が挨拶すべきじゃないか」。ご自身の発言が他の方の発言への連鎖を生んだ可能性については?

津島淳 自民党衆議院議員:
思い余って体が動いた。当然連鎖を生むだろうという思いはあったが、それでもあえて発言しようと思った。私が問うたのは責任論ではなく、あるべきリーダーとしての姿勢。責任を取っていないとは一言も言っておらず、総裁選のことにも触れていない。リーダーとして、大事な局面で大きな決断をしたことについてきちっと説明をすべき。そして現場で努力してきた様々な当事者へのねぎらいもあってしかるべきだということ。

竹俣紅キャスター:
インターネット番組で菅前総理は「総理自身が派閥の問題を抱えているのに責任を取っていなかった、その責任に触れずに今日まで来ている」、月刊誌では「やるなら全ての派閥を一気に解消すべきだった」と発言。国会閉会後に一気に岸田降ろしともいえる発信を加速し始めた菅さんの思惑は?

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
菅さんが主導権を握った形で新総裁を作るためには、岸田さんに降りていただく、あるいは岸田さんが再選できない環境を作ることが大切。そのために口火を切るという政局的判断があったと思う。

竹俣紅キャスター:
自民党議員たちの現在の認識は、細野さんから見て危機感が薄いか?

細野豪志 自民党衆議院議員:
2009年の民主党による政権交代時と比べても、野党が政権を取る準備は整っていない。安全保障環境も経済も十数年前とは全く違い、外交でもアメリカでトランプ大統領が誕生する可能性が高まり、伍していけるのは自民党しかない。日本のために自民党が下野してはいけない。だがおごりのようなものも、我々も含めた中選挙区を経験していない政治家の中にあるのでは。

反町理キャスター:
当選回数1〜3回ぐらいまでの議員の中には、岸田さんは早く一番人気の石破さんに代わってほしい、そこで選挙すれば……と公言する方は結構いる。

細野豪志 自民党衆議院議員:
誰が国を背負うべきかを決めるべきで、選挙の顔を決めてもそれは見透かされる。誰が総裁になっても逆風。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
かつての政治改革では、若手が全部公開して改革しようとした。だが今回の政治資金規正法の改正で、お金集めができなくなると反対したのは若手。この体質が変わらない限り自民党に将来はない。

津島淳 自民党衆議院議員:
誰が党の顔だというよりも、自分がその地域における自民党の顔だという気持ちを持つことが大事。自分ひとりの力で戦い抜いてみせると。

反町理キャスター:
例えば、当選1〜3回ぐらいの方が集まって石破さんのところに行き「出てくれ」と言うような動きも聞かない。人気のある人が総裁になるのをじっと待っている。これはどうなのか?

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
本当に活力がなくなったとしか言いようがない。本来であれば若手がグループを作って石破さん、茂木さん、高市さんなど名乗りを上げそうな人のところに聞きにいくべき。地元に帰って支持者に会うことと両立させながら、自民党をどうするのかきちんと言語化させる作業ができるかどうかが今問われている。

“岸田再選”に不可欠な麻生副総裁との関係

竹俣紅キャスター:
6月中頃からの麻生副総裁の動きを見ると、岸田総理や茂木氏とのと会食・会談が続く。岸田総理が率先して派閥を解消したことで関係が悪化したとの見方もあったが?

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
岸田さんからすれば、再選には麻生さんの支持が必要。政治資金規正法の改正プロセスの問題を麻生さんが深刻に受け止めている中、説明して関係を修復しようと動いている。対する麻生さんは、すんなり岸田でいいよとはなっていないと思う。茂木さんとの関係もある。まだ最終判断のプロセスの始まりの段階。また、来年は都議会議員選や参院選があり、選挙が集まると運動量が落ちるので、公明党は岸田さんを代えた上で秋に選挙をやってほしい。だが麻生さんは公明党と仲がいいわけではない。そこが公明党に近い菅さんとの違い。

反町理キャスター:
秋に新総裁を選んですぐ解散する場合と、岸田さんが来年まで続投して4月ごろに辞めさせられる場合、どちらが大きく負けるか?

細野豪志 自民党衆議院議員:
変数が多すぎてなんとも言えないが、来年となれば野党もさすがに準備する。来年の解散では、解散権の刀を抜いたことにはならない。

津島淳 自民党衆議院議員:
いずれにしても厳しい選挙になる。相手もある話なので、秋の可能性があるとして動いていくのがよいと考える。

竹俣紅キャスター:
一方、再選を目指す岸田総理は衆院1区選出の自民党議員の会合「1区の会」に出席。また山梨県で中小企業を視察するなど地方行脚をスタートさせた。

林尚行 朝日新聞ゼネラルエディター補佐:
これだけやめてくださいという声が党内で出てくる中では、動き続けなければいけない局面に来たのだと思う。現職の総理大臣として動き続けていることを見せ、何とか再選の可能性をたぐりよせたい思いだろう。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
これは予測だが、ギリギリになってからではなく、もっと手前で本人が再選を目指すと言うのでは。すると茂木幹事長は出にくくなる。総理に任命された閣僚の河野さんや高市さんも、出馬するとは言いづらい。

(「BSフジLIVEプライムニュース」7月1日放送)

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