佐久間みなみアナ『カルダー:そよぐ、感じる、日本』に行ってみた!「モビール」を発明し、彫刻の概念を一変させたアレクサンダー・カルダーを知る

麻布台ヒルズギャラリーで開催中の『カルダー:そよぐ、感じる、日本』にTokyo Art Vibes∞のナビゲーターを務める佐久間みなみアナウンサーが行ってきました。

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アレクサンダー・カルダーさん(1898〜1976)は動く彫刻である「モビール」を発明し、彫刻の概念を一変させた20世紀を代表するアメリカ人・アーティストです。この展覧会には1920年代から1970年代までの作品約100点が勢ぞろいしています。

会場に入るとまず目につくのが、カラフルでどっしりとした大型作品。一般的にモビールと言うと、天井から吊されきゃしゃなイメージがありますが、この作品は、床置きの真っ赤な彫刻の上部に支点があり、大きな針金の両端に色も形もさまざまなパネルがつながっていて、空気の流れによってゆらゆらします。

ウッディな壁面のコーナーには、直訳で「日本の影響」と題された作品「Un effet du japonais」があります。黒と赤の扇状に広がる針金と丸型のオブジェが、こちらもかすかに揺らいでいます。カルダーさんは生前、日本を訪れることはなかったそうですが、日本的な感性を感じることができます。

感じたままに制作し、感想は閲覧者にゆだねる

この展覧会のキュレーターで、カルダー財団理事長、カルダーさんの孫でもあるアレクサンダー・S.C.ロウワーさんは「私はこの展覧会では、カルダー氏の日本的な感覚が体現された作品を中心にご紹介することを意識しました」と語ります。その意図は、特注の黒い墨で染めた和紙で囲まれたコーナーに顕著です。

黒い和紙を背景にすると西洋的なモビールも和の装いを見せます。ロウワーさんによると、カルダーさんは下絵のデッサンも描かず、感じたままに作品を制作。「この作品はこういう意味がありますよ」と説明することはせず、見る人に自由に感じてもらいたい、と考えていたそうです。

黄色の紙の手前に、表が黒、裏が赤、のような色や形が異なる紙が吊された作品は一瞬として同じ表情は見せず、“自由なアート”を感じとることができます。

佐久間アナも「遠くから見ると赤い部分しか見えないのに。近寄ると黒いゆらゆらとした部分が見えてきます!」と目を輝かせていました。

きれいなガラスケースには、壊れたガラスや貝殻などのいわゆる“ゴミ”を吊した作品が展示。SDGsなどという言葉が生まれるはるか前の1943年の作品です。

カルダーさんは「アートは決して手の届かないものではない。見ている人とコミュニケーションして、自分発見をしてもらうために作っている」という考えを持っていたといいます。

「カルダー氏の作品は静かだがパワフル」

モビールは「動き」と「動機」という二重の意味を持つフランス語が語源。美術家で友人のマルセル・デュシャンさんがカルダーさんの作品を表現するために付けた名称で、動力は一切使わず、あくまで自然に動くアートを指します。

佐久間アナが「壁に映し出されている影とセットでアートになってますね」と感動したのが、天井から吊られたモビールの赤いパーツがゆらゆらすると、白い壁にその影がゆらゆらと映る光景。とても軽やかです。

一方で、カルダーさんは、公の場に設置する“動かない”大きな野外彫刻も多く手がけました。彫刻とアートは一部の限られた人に所有されるためのものでなく、すべての人のため、コミュニティのため、という信念からです。

ロウワーさんの「カルダー氏の作品は静かだがパワフルだ」という言葉に大きくうなずく立派な作品ばかりです。

また、この展覧会では、彫刻以外のカルダーさんの作品にも注目です。学生時代にニューヨークの動物園を訪れ描いた動物のスケッチは、日本の墨絵からヒントを得たもの。動物の背中の丸みが、彼が後に作ることになるモビールの針金のたゆみに通じているものがあるそうです。

「My Shop」という油彩画はカルダーさんのアトリエの様子を描いていて、画中に登場する作品で今回展示されているものもあるので、チェックしてみるのもいいでしょう。

このように、この展覧会では、実にバラエティに富んだカルダーさんの作品に触れることができます。ちなみに筆者はピート・モンドリアンさんから影響を受けた色使いの作品に心ひかれました。

佐久間アナは「一つ一つの作品もすてきなのですが、作品同士がお互いに影響しあっていて、展覧会そのものがアート作品のような、全体で楽しめる展覧会でした。モビールというユニークな作品の特性がなせる技ですね」と印象を語っていました。

ロウワーさんは「この展覧会は一周したら最初に戻れるようになっていて、無限にまわってもらえる。何周もして、新たな発見をしてほしい」と話していました。

“無限大”仲間として、Tokyo Art Vibes∞も、ループ鑑賞したくなりました。

text by=Eiko Katsukawa

All works by Alexander Calder C 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society(ARS), New York

<開催概要>

展覧会:カルダー:そよぐ、感じる、日本

会期:2024年5月30日〜9月6日
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
開館時間:10:00〜18:00(金、土、祝前日は〜19:00)※最終入館は閉館の30分前まで
休館日:7月2日、8月6日
料金:一般 1500円(1300円)/専門・大学生 1200円(1000円)/ 高校生 1000円(800円)
※()内はウェブからの事前予約料金。

公式ページ: https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/

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