栃木県内15市町に災害時孤立恐れ集落 各自治体で確認ばらつき 県、本年度実態把握へ

 災害時に土砂崩れなどで道路が寸断され、孤立する可能性のある集落が5月現在、栃木県内の15市町にあることが2日までに、下野新聞社のアンケートで分かった。ただ、該当する各市町の確認時期にはばらつきがあり、鹿沼や塩谷など4市町は約10年前から更新されていない。「農業集落」や「自治会」など、把握箇所の単位が統一されておらず、実態をつかみにくい現状も浮かんだ。県が把握する孤立集落数は「249」で、国が全国調査を実施した2013年度時点の10年前の数字にとどまっている。能登半島地震を受け、県は本年度、実態把握に乗り出す方針。

 内閣府によると、地震や風水害による土砂災害や液状化で道路が損傷するなどし、外部から中山間地域の集落へ入れず、人の移動や物資の流通が困難な状態を「孤立」と定義。集落につながる道路の一部区間が土砂災害警戒区域などに接していることを条件とした。

 能登半島地震を受け、下野新聞社は4月以降、各市町にアンケートと取材を実施。その結果、孤立する可能性がある集落は佐野や足利、鹿沼、日光、那須烏山など15市町で確認された。

 把握時期は各市町で異なり、那須塩原市は能登半島地震を受け、2~3月に改めて調べ直した。佐野市などは県による災害関連の別の調査を契機に今年、再確認した。那須、益子町は23年、矢板市は20年に、ハザードマップの改定に併せて再調査したという。

 一方、鹿沼、塩谷、那珂川の各市町は13年の国の調査後、大田原市も15年以降、情報の更新をしていない。「実態が大きく変化するとは考えづらい」「人員不足」などの理由という。

 各市町の孤立可能性集落の把握の仕方にもばらつきがあった。15市町の回答を合計すると「355」になる。ただ「農業集落」や「自治会」、自治会より小規模の「地区」など、箇所数の把握単位が統一されておらず、単純に合算しにくい現状も浮き彫りになった。

 農業集落単位で把握しているのは、佐野、足利、鹿沼、那須、那須烏山など8市町で、計268カ所に上る。自治会単位で回答したのは那須塩原、益子、塩谷、栃木の4市町で計34地区。茂木町はハザードマップを基に孤立可能性集落があると判断したが、箇所数は把握していないとした。

 県は13年度、国の調査依頼に基づき県内を調べ、県内14市町の「249」の集落で孤立の恐れがあるとした。しかしその後、情報は更新されていない。理由について「国の調査がなかったため」と説明している。

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