鉄道ファンもうなる急カーブに注目!東海唯一の路面電車 今年開業100周年 豊橋鉄道・市内線を行く

豊橋鉄道の路面電車

“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナが現地取材したのは、東海エリア唯一の路面電車として親しまれている豊橋鉄道です。それでは、出発進行!

【動画】鉄アナがレポート!豊橋鉄道の路面電車

◆羽川英樹の出発進行!

豊橋市はかつて愛知県で名古屋市に次ぐ第二の都市でしたが、平成の大合併などの影響もあって、今では名古屋市・豊田市・岡崎市・一宮市に次ぐ第5の都市に。それでも、人口約37万人を抱える中核市は、1906(明治39)年8月に全国で62番目の市として誕生した歴史あるまち。俳優・松平健さんの出身地としても有名で、三河湾でとれた魚を使った「ちくわ」と、器の底にとろろ飯が入るカレーうどんが名物という、東三河の中心地です。

その玄関口となるJR豊橋駅は、1950(昭和25年)に完成した4代目駅舎が日本初の「民衆駅」として注目を集めました。「民衆駅」とは駅舎の建設を当時の国鉄と地元が共同で行い、商業施設を併設した駅ビル形式の駅舎のこと。今は東口に商業施設「カルミア」と「ホテルアソシア豊橋」が入っています。

ここには在来線の東海道線・飯田線をはじめ、珍しい地上ホームの新幹線、貨物線、そして名鉄名古屋本線の乗り場が横並びに同居するという、“鉄ファンの聖地”。またJR豊橋駅に隣接して「新豊橋」からは豊橋鉄道・渥美線も「三河田原」に向けて伸びています。

今回はJR駅前を起点に走る豊橋鉄道・市内線(東田本線)を取り上げます。いまや東海エリアで唯一の路面電車となり、地元では市電と呼ばれ親しまれています。営業距離わずか5.4キロメートルに14の停留所があり、全線均一運賃200円で乗車できます。そしてこの路線、今年3月で開業からちょうど100年を迎えたのです。

起点の停留所名が、豊橋駅前ではなく単に『駅前』というのも珍しいですね。朝夕は通勤・通学で結構にぎわいますが、なんと終電が午後11時50分までというのは路面電車ではおそらく日本一遅く運行しているのでは。どの車両も派手な車体広告をまとって市内をゆっくり走行しています。

在籍車両は名鉄岐阜市内線・揖斐線・美濃町線で走っていたものや、東京都電荒川線・福井鉄道から移籍してきたものでまかなわれています。そして2008年に導入された「ほっトラム」と呼ばれるT1000形のLRVの最新車両は、唯一の自前車両として広告をつけず、100周年をアピールしながら活躍しています。

『駅前』を出ると名物のスペースシャトルビルを左に見ながら、すぐに次の『駅前大通』到着。目の前には「きゅうりのキューちゃん」でおなじみの東海漬物の本社があります。

『駅前大通』を出てすぐ左手にマンションが建設されていますが、ここはもともと「ほの国百貨店」があった場所。都心の百貨店はインバウンド客などで大にぎわいなのに対し、地方の百貨店は次々に廃業していくのが残念です。

『札木』は旧東海道と交わるところ。すぐそばに宿場町の本陣跡があり、江戸期創業のヤマサちくわの本店もここにあります。

大きなカーブを右に曲がって国道1号と交わると『市役所前』に到着。ここではぜひ東館の13階に上がってみてください。レストランもあるフロアからは市街が一望できるんです。また併設する市の地域歴史博物館「とよはし物語館」では、豊橋鉄道や街の歴史をパネルで展示しています。近くには1931(昭和6)年完成のロマネスク様式が美しい豊橋公会堂や、手筒花火の発祥地ともいわれる吉田神社も鎮座します。

『豊橋公園前』ではビザンチン様式の美しい外観をもつハリストス正教会や、鉄櫓が再興された吉田城、そして市民のオアシス・豊橋公園もぜひ訪ねてみてください。

『東八町』で国道1号から離れ、『前畑』を出ると急坂を登って『東田坂上』、そして安全地帯がない『東田』と住宅街を抜けていきます。

市内線の営業所のある『競輪場前』からは単線になって次の『井原』へ。ここで『運動公園前』行きを分岐するのですが、これがなんと日本一の急カーブ地点なんです。90度カーブは各地にありますが、ここは半径11メートルという狭さの中で曲がっていきます。台車が大きく線路から外れる様はなかなかの迫力。ちなみに私の乗ったT1000形「ほっトラム」は、車長の関係でこのカーブが曲がりきれないため『運動公園前』には行かず、直進して『赤岩口』に向かいます。

豊橋駅前から所要24分で市街の東端に位置する終点『赤岩口』に到着です。ここには車両基地があり、いろんな車両が留置されています。さらに車庫線の300メートルを使っての運転体験会(参加費5000円)も月1回のペースで開催され、モ780を使った夏のビール電車や冬のおでん列車も季節イベントとして定着しています。

2005年に名鉄の岐阜市内線が廃線となって以降、いまや東海エリアで唯一の路面電車となった豊橋鉄道・市内線。日中は7分30秒おきに走り、各地の路面電車が運転士不足などで減便している中、終電が午後11時50分という企業努力にも驚きました。沿線には歴史を物語る遺構も多く、豊橋市民球場もある「運動公園前行き」に乗ってぜひ【日本一の井原の急カーブ】も体感してみてください。(羽川英樹)

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