初開催となったUA NEXTのトライアウト 次世代を担う選手たちが大阪の地で奮闘

世界基準を目指し、大阪で21名がしのぎを削る

テーマは“世界基準”――。
アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームが主催し、昨年初めて開催された「UA NEXT」。高校1~3年生を対象に、“世界を知る”特別なコーチによる、世界基準のトレーニングを提供することで、スキルアップをサポートするプログラムだ。
昨年はBユース(U18)に所属する選手たちが沖縄でのキャンプに参加。今年は東京と大阪でトライアウトを行い、選ばれた12名が8月28日〜30日の期間でアンダーアーマー菅平アリーナ(長野県上田市)に集い、強化キャンプが開催される形式となった。
希望すれば部活に入りバスケットができる日本においては、トライアウトはあまり馴染みのない形だ。しかし海外ではトライアウトで選ばれた選手しか学校のクラブではプレーできない環境にあり、そこでハングリー精神や闘争心など技術のみならず多くの感情が養われる。NBAの中にも学生時代に学校のクラブでプレーができず、その悔しさをバネに練習に励んだことで飛躍を遂げた選手は多い。

6月30日に大阪で行われたトライアウトには九州から関西までの高校生21名が参加。全国常連の強豪校に所属する選手もいれば、通信制高校に通いながら海外留学を志す生徒など、そのバッググラウンドは様々だ。
そうした多種多様の選手が集い、またほとんどが初対面ということもあり序盤は固さが見られた。だが次第に緊張がほぐれるとコート上は活気にあふれ、さらにゴール下でのファウルを辞さない肉弾戦など随所に好プレーが見られるように。試合をしていない選手たちも、今日だけのライバルであり味方の好プレーには拍手で応えるなど、良い雰囲気でトライアウトは進んでいった。

今回の選考にメインで関わっている大浦宗博氏 (株式会社ERUTLUC)も、「最初は緊張をしていてお互い探り合いの時間があったと思いますが、時間とともに身体が動いて心も触れていいプレーが出始めました。見ていて楽しかったです」と振り返る。
試合形式でのトライアウトはあっという間に終了。選手たちの顔には、開始時にはなかった充実した表情が見られた。

異なった環境での適応力を図るため初のトライアウトを実施

「前回はバスケットIQをテーマにし、今回は世界と戦う日本人プレーヤーが具体的にどうするのかにフォーカスをしました。一つ大きなポイントとしてはトライアウト。同じ心意気を持った子たちと、いつもの環境ではなくもっと上を目指したいと思っている選手に参加してほしいと思っていました」
こう話すのは株式会社ドームの密川秋花氏。社内で協議を重ねた上で今回の方向性を固め、トライアウトという慣れない中でバスケットIQといかに自身の良さを出し切るかを世界と戦っていく上で重視した。
トライアウトについては大浦氏も「ピックアップ形式、普段練習をしていない相手と試合をして、相手を見てどう戦うかを求められる環境は、その場の判断力が養われるという意味でいい機会だなと思います」とメリットをあげる。
その中で、「自分ができること、得意にしていることを遂行するのではなく、『相手がどういうところを嫌がっているか』『攻めやすい、守りにくいところはどこか』という視点を念頭に置いてプレーしてほしいと思っています」(大浦氏)とバスケットIQや適応力を求めた。
実際活躍をした選手は、チームメイトと積極的にコミュニケーションを取り、試合の中で彼らのプレーをよく観察することで特徴をつかんでいた。そこで自身の得意なプレーと“このチームに足りないものは何か”を掛け合わせることで、生き残りを懸けたアピールポイントとしていったのだ。
密川氏は「思った以上に全国各地から参加していただけたということはうれしいと思っています。いつもとは違う環境の中でパフォーマンスを出し切っている姿を見て可能性を感じました」と総評。同じ形式で、7月15日に東京でトライアウトを行い、最終キャンプに参加する12名が決定する。


参加選手の声

村上 航清

(東海大付諏訪高校1年生/188cm)
大阪のトライアウトでは最長身の188cm。B.LEAGUE U15CHAMPIONSHIPを三度制している名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15出身とあって、1年生ながらファンダメンタルはピカイチ。3番から5番までこなすことができ、将来有望な選手だ。

「世界基準のバスケットを知ることができるというところが気になって応募してみました。
所属チームのコーチからは、『部活だけではなくて違う場所でもバスケットに触れたほうがいい』と後押しをしてもらい、いい形で参加することができました。
トライアウト形式は今回が初めてではなかったのですが、他のトライアウトと違うのは即席チームだったこと。技術以上にコミュニケーション能力が大切だと感じました。最初はあまり喋ることができなかったのですが、2試合目以降は喋るようになり、個人の1対1だけではなくチームとして何をすべきかを話すことができました。
自分の持ち味は188cmでも3番や4番ができること。ポジションアップをしているところなので、リバウンドやルーズボールなどの泥臭いこともしつつ、プルアップシュートなど得意なところを見せることはできたと思います。
自分より身長が高かったり、技術が上だったりの選手に対して何が通用するか考えることの大事さを改めて知ることができました。そういった選手に一つでも通用できる部分があるプレーヤーになりたいと思いました。」


永島 楽

(宗像高校3年生/182cm)
本人のコメントの通り、所属チームでは数字に残らないような泥臭いプレーを主とする。しかし今回のトライアウトでは積極的にドライブを仕掛け、チームの得点源に。難しいシュートも難なく沈めるなど、インパクトを残した。

「今回のイベントの広告を見て、受けようと思いました。
福岡県には福岡大附大濠高校や福岡第一高校がいるので勝ち上がることがなかなか厳しいのですが、今回のトライアウトもレベルが高く得るものが多かったです。動きの質の違いや所属しているチームにはなかった考え方を参加した選手から知ることができました。
所属チームでは1対1をたくさんするような役割ではないのですが、今回は得意なプレーであるリバウンドなど自分のできることをやろうと思っていました。緊張はそんなになかったです。来る前が一番緊張しました。
今回はいつもと違い1対1をたくさん仕掛けたのですが、仕掛けるタイミングは良かったと思います。ですが、その後のキックアウトや判断力がまだまだだなと感じました。
将来の夢は特に決まっていません。バスケットは続けていきたいと思います」


スタークス ジュリアン

(別府溝部学園高校2年生/182cm)
身体能力の高さやドライブの推進力が光ったスタークス。本来は3Pシュートを得意とするが、この日は不発。それでもリバウンドに積極的に絡むなど、いつもとは違う役割を全うした。
「このイベントがあることを親に教えてもらい、世界レベルで挑戦できることを知りチャレンジをしてみました。
今回のトライアウトでは声を出したり、リバウンドを取りにいったり、泥臭いことを頑張ろうと思っていました。緊張はそこまではなかったです。
僕はドライブや3Pシュートが得意なので、そこはチームメイトに言って生かしてもらうように言いました。あとはポジション的に所属チームではあまりやらないリバウンドも積極的に取りに行くことができました。本来は3Pシュートをよく打つのですが、そこはあまりできなかったです。
将来の夢はプロバスケットボール選手です。日々努力をして、一日もサボらずに頑張っていきたいです」

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