松木玖生の不在は大岩ジャパンにどう影響する? 不安があるとすれば...五輪特有の問題に阻まれ無念の落選

7月3日、14時。現地24日にパリ五輪の初戦を迎えるU-23日本代表の18人のメンバーとバックアップメンバー4人が発表された。

18人という限られた枠であり、発表されるまで誰が入るか分からない。前日に登録メンバーを提出したと明かした大岩剛監督が、会見に山本昌邦ナショナルチームダイレクターとともに登壇し、選手の名前を一人ずつ読み上げていく。

GKから順に発表されていくなかで、ある男の名前は最後まで呼ばれなかった。FC東京に所属するMF松木玖生だ。

2022年3月に行なわれた大岩ジャパン初の海外遠征に参加し、昨年5月には一世代下のU-20ワールドカップでも主軸を務めてキャプテンとしてチームを牽引したレフティ。その後は大岩監督のチームに戻り、コアメンバーとして重要な役割を担ってきたのは周知の事実だ。

では、なぜメンバーから漏れたのか。会見の終盤に山本NDが質問に答え、怪我などが理由ではなく、「移籍の可能性がある。オリンピック期間中に我々が招集できる確約を取れませんでした。これが一番の要因」だとした。

五輪はインターナショナルマッチウィーク外の開催となり、代表チームに拘束力がない。その一方で、メンバーの発表は7月初旬で、大会は最大で8月10日まで続く。

そうすると、現時点で招集に問題がなくても、1か月後に状況が変わっているかもしれない。五輪特有の問題に阻まれ、松木は無念の落選となった。

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では、松木の不在は大岩ジャパンに、どのような影響を及ぼすのだろうか。

4-3-3をメインシステムとするなか、今回、選ばれたメンバーでインサイドハーフを本職としている選手は藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント=トロイデン)、川﨑颯太(京都)、荒木遼太郎(FC東京)の4名。加えて、セントラルMFに対応できるプレーヤーとして、ウイングの三戸舜介(スパルタ)がいる。

藤田はアンカーでも計算されるが、インサイドハーフはこの4人で回すだろう。ただ、ポジション的な問題は一切ないが、松木不在の影響があるとしたら、スクランブルの状態に陥った時だろう。

松木はインサイドハーフが本職で、4-2-3-1であればトップ下とボランチに対応できる。数的不利や怪我人が出た時に、SBやウイング、CFとどのポジションであっても、「やってくれ」と言われれば、対応できる柔軟性と動じないタフさを持つ。

実際に、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねた先のU-23アジアカップ・中国戦(1-0)では、前半早々にCBの西尾隆矢が退場となった際に、フィジカルが強い相手の特長を鑑みて、代わりのCBが入ってくるまでの数分間、松木は自らの意思で左SBにスライドしてチームを救った。

アクシデントに強いタイプだけに、限られた18人のメンバーで戦う五輪に松木がいない点は不安要素ではある。だが、決まったことは覆らない。誰もが準備するしかないし、松木自身も次の目標に向かって走り出しているはず。想定外が起こった際は、藤田や山本といった経験値がある選手たちの奮起に期待したい。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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