新作配信直前「ディセンダント」シリーズの音楽の魅力:ディズニー・ヴィランの子供たちの物語

ディズニーのヴィランたちの“子ども”を主人公にし、ダヴ・キャメロンやソフィア・カーソンなど第一線で活躍するアーティストたちが出演したことでも話題となったディズニー・チャンネルの大ヒット・ミュージカル・シリーズ「ディセンダント」。

最新作『ディセンダント ライズ・オブ・レッド』が2024年7月12日にディズニープラスで独占配信開始が決定し、同日にオリジナル・サウンドトラックもデジタル配信開始。さらに、サントラは日本限定でCD化も決定し、7月31日に発売予定となっている。

そんな注目が集まる最新作の配信前に過去3作品の音楽について、鳥山タラさんに解説頂きました。

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誰もが知るディズニーのヴィランたちの“子ども”が主人公のミュージカル映画「ディセンダント」シリーズ。2000年代のディズニー・チャンネル黄金期に一大現象を巻き起こした「ハイスクール・ミュージカル」シリーズの監督ケニー・オルテガが、“もしディズニー・キャラクターに子孫がいて、10代だったら?”というアイデアに着想を得て製作したユニークな作品だが、来年で制作から10周年という節目を迎える。

約5年ぶりとなる最新作『ディセンダント ライズ・オブ・レッド』のディズニープラスでの配信前に、世界中に多くのファンを持つ本シリーズの音楽の魅力を振り返ろう。

 

1作目:『ディセンダント』(2015年)

魔法のバリアで覆われ、ヴィランズたちが閉じ込められたロスト島。ここに暮らす『眠れる森の美女』『白雪姫』『101匹わんちゃん』『アラジン』のヴィランズの4人の子供が、善人の住むオラドン合衆国のハイスクールに転校することになり巻き起こるストーリーを描いたのが第1作目。

放送当時、全世界では3,200万人が視聴、初放送と同日に全米で発売されたサウンドトラックは、iTunesのサウンドトラックチャートで第1位を獲得、さらに全米アルバムチャートでも第1位を記録する大ヒットとなった。

 

Rotten to the Core

主役4人のうち、『眠れる森の美女』のヴィランであり、緑色の肌の魔女マレフィセントの娘・マルを演じたダヴ・キャメロンと、『白雪姫』の女王イーヴィル・クイーンの娘・イヴィを演じたソフィア・カーソンは、アーティストとしても女優としても第一線で大活躍。

シリーズにおける2人の登場曲となったこちらの楽曲でも、キレのあるダンスと存在感溢れる歌唱が光っており、従来のディズニー・チャンネル作品とは一味違うキケンな魅力で視聴者を釘づけにしてくれる。

 

Evil Like Me

マルの母親であるマレフィセントは、自分たちをロスト島に閉じ込めた善人たちへの復讐を企て、子供たちにオラドン合衆国で“あるもの”を奪うよう命じるが、娘にも自らと同じ“悪の道”を極めるように歌って見せる。

マレフィセントを演じるのは、トニー賞・エミー賞受賞を誇る人気女優クリステン・チェノウス。邪悪ながらも、どこか憎めなさがあるマレフィセント役を嬉々として演じている。

 

If Only

悪名高き母親マレフィセントに続け!とばかりに、任務達成に向けて意気込むマルだったが、オラドン合衆国の王子ベンと出会ったことから心情に変化が生まれる。

『ディセンダント』シリーズの肝である“ヴィランズの子は悪なのか?”というテーマにも通ずる、“善”と“悪”の狭間での葛藤をダヴ・キャメロンが想いを込めて歌い上げたバラード。

 

2作目:『ディセンダント2』(2017年)

前作で、自分の心の声に従ったマルは、オラドン合衆国の王子ベンと恋仲になるも、生まれ育ったロスト島での自身のルーツとは対照的過ぎる国での生活に苦しむ。そんな折に、オラドン高校に招かれなかったことを恨む『リトル・マーメイド』に登場する海の魔女、アースラの娘ウーマが暗躍しはじめ…。

 

Ways to Be Wicked(悪の力を呼び覚ませ)

ヴィラン・キッズたちが作った毒りんごにより、オラドン王国の主要人物たちが“Wicked”(邪悪な)な魔法にかかり、オラドン高校の校舎・校庭を縦横無尽に駆け回ってマスダンスを披露する迫力満点の1曲。どこか名作『ハイスクール・ミュージカル2』のオープニングを彷彿とさせる。

 

Chillin’ Like a Villain

ロスト島に帰ってしまったマルを呼び戻すために、『白雪姫』の女王の娘のイヴィ、『101匹わんちゃん』のクルエラの息子であるカルロス、そして『アラジン』のジャファーの息子であるジェイの3人が王子ベンを連れて“ヴィランらしさ”を説くこの曲では、3歳から17歳までの間にバレエ、ジャズ、ミュージカルダンス、ヒップホップ、フラメンコを習得したというイヴィ役のソフィア・カーソンのダンスの才能が炸裂!ケニー・オルテガ監督もお気に入りの楽曲だという。

 

It’s Goin’ Down

第2作目の最大のヴィランである、アースラの娘ウーマ。仲間を率いてベンを人質にとった彼女に、ようやくヴィラン・キッズが勢ぞろいして立ち向かう。ラップやコーラスの多用に加え、剣と剣がぶつかり合う音も相まって迫力満点の戦闘シーンを盛り上げる。

 

番外編:『ディセンダント ショート・ストーリー/アンダー・ザ・シー』(2018年)

Stronger

3作目の放送前に公開された短編からのこの曲は、マル役のダヴ・キャメロンとウーマ役のチャイナ・アン・マクレーンによる、ケリー・クラークソンのヒット曲のカバー。前作で因縁の関係となった2人の思惑がぶつかり合い、3作目への布石となっている。

 

3作目:『ディセンダント3』(2019年)

マル、イヴィ、カルロス、ジェイはオラドン王国に招くヴィランズの子ども達を選抜するため再びロスト島を訪れるが、2つの世界を繋ぐバリアが開いている一瞬の隙に新たな敵の攻撃を受け…。

 

Queen of Mean

1作目では、オラドン合衆国の王子ベンの恋人として登場した、『眠れる森の美女』のオーロラ姫とフィリップ王子の娘オードリー。紆余曲折あって現状に絶望した彼女は、“善”の立場であったはずながら復讐に燃える“悪”(Mean)の女王になってしまう…。

思いがけない展開ながら、オードリーの複雑な心境が胸を打つこの曲は、The Billboard Hot 100で最大49位にランクインするヒットとなった。

 

Do What You Gotta Do

今回で初登場した『ヘラクレス』のヴィランである冥界の神ハデスと、実は深い繋がりがあったマルが両者の思いのたけをぶつけ合うロックンロールな1曲。

2人の掛け合いはどこかコミカルで、ハデスを演じた『glee』シリーズでも知られる俳優・歌手のシャイアン・ジャクソンの嬉々とした歌い方も楽しい。

 

Night Falls

前作では反目し合っていたマル陣営とウーマ陣営だったが、共通の敵を持ったことで、故郷のロスト島に平和を取り戻すべく共闘することに。鎧騎士との緊張感あふれるバトルは、ヴィラン・キッズたちの歌とダンスで戦局が一変。

キャストの中でも、特にキレのあるダンスで我々を魅了するのは、本作の公開直前に20歳の若さでこの世を去ったカルロス役のキャメロン・ボイス。存命なら彼の25回目の誕生日に当たる今年5月28日にも、ソフィア・カーソンやダヴ・キャメロンをはじめとする共演者たちが追悼コメントをそれぞれSNSで発表。今もなお『ディセンダント』キャストやファンの心の中で、キャメロンの雄姿は輝き続けている。

シリーズ3作品を通して、敵対し合っていたロスト島とオラドン合衆国の人々が手を取りあい、ヴィランと善人が共存する道を示すまでに成長したヴィラン・キッズたち。誰もが知っているディズニーのヴィランズたちを新たな解釈で現代的に描き、2010年代のディズニー・チャンネル作品を代表する青春ミュージカル・シリーズとなった本作最大の魅力は、そんなヴィランズの感情の機微を巧みに表現したキャッチ―でワイルドな楽曲の数々、そして才能あふれるキャストによるパフォーマンス。

次回作『ディセンダント ライズ・オブ・レッド』でどんな新しい名曲が生まれるのか、今から注目したい。

Written by 烏山タラ

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