酒井宏樹ら4選手が去り、若手2人が加入。夏に活発化する浦和の戦略、いち早く新たなシーズン制に対応し始めている感も

浦和レッズはDF酒井宏樹、DFアレクサンダー・ショルツ、MF岩尾憲の退団と移籍を発表し、ノルウェー代表FWオラ・ソルバッケンは期限付き移籍期間の満了により退団した。

いずれも慰留、あるいは残留交渉を行なっていたことを声明として発しているが、多少の温度差は見られる。そこには30代半ばに入ってきた選手との向き合い方、そしてガラパゴス化する日本の「春秋制」の影響を受けている面もあるだろう。

酒井、ショルツ、岩尾の3選手は、昨季まで2シーズンほどは絶対的な主力として君臨していた。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の東地区を勝ち抜く過程や、決勝でアル・ヒラル(サウジアラビア)を破り、3回目の優勝を果たしたなかに、彼らの姿は常にチームの中心にあった。

延長戦のほぼラストプレーで強烈なスライディングからオーバーラップを仕掛け執念のゴールを導いた酒井、決勝で相手のオウンゴールにつながるクロスを入れた岩尾、強力外国人アタッカーたちを封じ込めたショルツの貢献度は、凄まじいものがあった。

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一方で、彼らが今季のチームで少し存在感を出せなくなってきていたのは事実だろう。特に酒井は負傷離脱からの復帰後も、石原広教がスタメン出場を続ける状態にあり、岩尾は新加入のサミュエル・グスタフソンの控えという印象も強かった。

どのクラブにとっても、こうした30代半ばになってきた選手との「別れ方」は難しいものだ。出場機会が減り、試合日に練習グラウンドで若手と汗を流す日々を受け入れてもらいながら、指導者やスタッフとして引退後も関わるパターンもあれば、ドライに契約満了を告げることもある。

すでに再チャレンジの希望を伝えていた海外移籍となる酒井、古巣からのオファーが届いて移籍する岩尾の退団は、円満な形の1つだろう。

また、ショルツは前半戦での負傷離脱もあったなかで届いた海外からのオファーに対し、浦和も「強く慰留」という表現を用いたものの、移籍金の満額支払いなど抗いきれなかった面があることを示唆している。主力の流出という点では痛いものだが、対価を得られたという点で完全なマイナスとは言い難い。

そして、新戦力ではオーストリア2部ザンクト・ペルテンから21歳のFW二田理央、ベルギー1部クラブのブルッヘから23歳のMF本間至恩の獲得が発表された。

これは、シーズン制の違いと近年の浦和の戦略を見れば象徴的なものがあるかもしれない。国内クラブからの獲得選手や期限付き移籍からの復帰、日本と同じ春開幕の北欧ノルウェーやスウェーデンのリーグから獲得したマリウス・ホイブラーテンやグスタフソンは、冬のウインドーでの加入だが、酒井とショルツも21年夏に欧州クラブから獲得しているし、以降もブライアン・リンセンや中島翔哉といった主力級の選手を日本人、外国人を問わず夏のウインドーで国外クラブから獲得している。

また、木下康介(現・柏レイソル)、タイ代表エカニット・パンヤ、安部裕葵といったポテンシャルへの投資といったニュアンスで、国外クラブからの獲得を夏に行なうのも近年の傾向だ。二田と本間の獲得もこれに沿ったものだと言える。7月2日時点で浦和が発表している選手の入れ替わりを見ると、取引相手が国内クラブなのは岩尾だけだ。

浦和の声明には、来年6月に開催されるクラブ・ワールドカップ(W杯)からの逆算でのチーム作りという言葉もあった。そして、1年後の2026年には日本もシーズン移行する。シーズン制が移行すれば、たとえば多くの外国人選手をJリーグに供給しているブラジルとはカレンダーが変わるため、選手獲得のハードルが上がることが予想される。

今シーズン末の契約更新選手とは1年半の契約を結ぶかどうかの判断が必要になることも想定される。その観点から見れば、浦和はいち早く新たなシーズン制へと対応し始めている感もある。

確かに主将の酒井や副主将のショルツが退団したことはインパクトが大きいものの、欧州クラブも動きが活発化する7月に入って浦和がどのような動きを見せるのか注目したいところだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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