「良い意味でバカになるというか」“初の外国人選手”岩渕真奈は異世界にどう順応した? 登坂絵莉は日本人との明確な違いを説明

新紙幣発行を記念したイベントが7月3日に都内で行なわれ、それぞれ女子サッカー、女子レスリングの日本代表として、世界一に輝いた岩渕真奈氏と登坂絵莉氏が特別ゲストとして参加。未来を担う大学生に世界での経験を伝えた。

18歳でワールドカップを制した岩渕氏は、国内クラブに加え、ホッフェンハイム、バイエルン・ミュンヘン(以上ドイツ)、アストン・ビラ、アーセナル、トッテナム(以上イングランド)でプレーした。文化が全く違う“異世界”に身を置き、当初は特に苦労が絶えなかったようだ。

「最初は言語の部分で物凄く苦労しました。初めて行ったドイツのチーム(ホッフェンハイム)は(自分が)初めての外国人選手だったので、そういう意味でも、私を見る目も少し壁があったりとか。私も当時19歳で、喋れないなか行ったので不安もありました。

それでもサッカーを通して、最高の仲間や、1つのことを目標にみんなで頑張ることが、どれだけ楽しくて素晴らしいかを言葉が通じないなかでも学べました。そういう経験をして日本に帰ってきて、もう一度イギリスに行ったんですけど、それは両国で海外生活を送ったなかで物凄く学べたことかなと思います」

言語という明確な壁を打ち破るために、重要なのは積極性だ。

「もちろん、語学の勉強はしました。それでも上達に時間が必要だったなかで、良い意味でバカになるというか。楽しめるために、ご飯に誘われたらちょっと行きたくないなって思ったりしても行ったりとか、チャレンジしながら、普段の自分じゃないかもしれないけど、そこに馴染むための努力はたくさんしました」

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一方、レスリング界ではどうか。リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いた登坂氏は、「私は岩渕さんのように海外に何年住んだみたいな経験はありません。女子レスリングは、日本が世界で一番強かったこともあって、海外の選手が日本に練習に来てくれたりってことが多かったです」と前置きしたうえで、海外遠征で感じた日本人との違いをこう明かした。

「一緒にトレーニングをして一番印象的に残っているのは、とにかく海外の選手は楽しむ、すごく楽しそうに練習するところです。どちらかというと私たちは、暗い顔でダッシュしたり、ウォーミングアップからスイッチを入れてやるスタイルだったんですけど、海外の選手はアップは毎日サッカーやバスケとか。もちろんスイッチを入れるところは入れますが、最初から最後まで楽しくやっている印象がありますね。

私たちだと負けて泣くことも多かったですが、海外の選手で負けて泣く選手って、結構少ないんですよね。そういったところでも海外の選手の方が、スポーツに人生を懸けるというよりも、人生の中の1つとしてスポーツを捉えているんだろうなっていう。現役時代から、引退したら弁護士や医者になりたいとか、みんな夢を持っていたので、そういう向き合い方がすごく新鮮でした」

どちらが良い、悪いではなく、正解は存在しない。ただ、選択肢が多ければ多いほど良いことは間違いない。海外挑戦はハングリー精神が養われると同時に、否応なしに視野が多角的になるという、大きなメリットがある。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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