被害総額10億円以上“福岡のルパン”76歳男に懲役4年の判決 おしゃれな暖炉やきれいに並ぶ食器…自宅から見えた男の一面

空き巣を繰り返していた76歳の男に懲役4年の判決が下された。これまでに盗んだ総額は10億円以上に上り、捜査員からは“福岡のルパン”などと呼ばれたこの男がどんな生活を送っていたのか自宅を取材した。

豪邸を荒らし回る“プロ中のプロ”

2024年7月2日、福岡地裁小倉支部。
被告席に立つ白髪交じりの男は、まっすぐ前を見つめている。

渡部五郎裁判官が「名前を言ってもらえますか?」と尋ねると、男は「森川幸雄です」と答えた。被告席に座る男は、窃盗などの罪に問われた森川幸雄被告(76)だ。

渡部裁判官は森川被告に対し、「被告人を懲役4年に処する」と判決を言い渡した。

福岡県警によると、森川被告は2023年10月からの4カ月間で、福岡市や北九州市などで発生した空き巣など37件に関与していることが確認されている。

街からは「76歳で空き巣?」「さすがに無理でしょ」といった驚きの声が上がったが、実はこの老人、捜査員の間で“プロ中のプロ”、“福岡のルパン”などと呼ばれていた男なのだ。

森川被告は福岡県や山口県で“豪邸荒らし”を繰り返し、1987年、39歳のときに逮捕されている。このときの押収品の中には、世界的な版画家「棟方志功」の作品もあった。

森川被告の犯行の手口は、窓ガラスを揺すって開ける「揺すり開け」というものだ。
ガラスに傷が残らないため、被害者の中には戸締まりを忘れていたと勘違いする人もいたという。盗んだ金庫は現金などを取り出した後、すぐ川に捨てる用心ぶりで、被害額は6億円を超えた。

また、その10年後にも再び逮捕されている。福岡県や佐賀県、山口県を中心に712件もの犯行を重ね、被害は自治体の市長の邸宅にも及んだほどだ。このときの被害額は5億5000万円に上り、10年前と合わせると軽く10億円を超えていた。

自宅から見えた“きちょうめんさ”

警察の目を幾度となくかいくぐってきた森川被告が、いったいどんな暮らしをしていたのか調査すべく、取材班は森川被告が逮捕前まで住んでいたという古びた一軒家を尋ねた。
近所に住む森川被告を知る人は「普通のおじいちゃん、おとなしくてかなり年が行ってて、そんなの(10億円を超える窃盗)できるような人じゃないですけど」と話した。

さらに周辺取材を進めること1時間半、「森川さんって知ってます?」と尋ねた記者に、「はい」と答えた男性。驚いたことに森川被告の親族だった。
これまでに九州や山口、島根など、森川被告が刑務所に収容されるたびに面会に訪れ、現在は森川被告の自宅を管理しているという。

男性の許可を得て、取材班は森川被告の自宅に入る。総額10億円を盗んだ男は、いったいどんな生活を送っていたのだろうか。

記者:
テレビが2台あるんですね

親族の男性:
2階にもあるから3台かな

部屋ごとにテレビが置いてあるほか、食器類はきれいに並び、おしゃれな電気の暖炉や高そうな酒もあった。その置き方からきちょうめんさが垣間見える。

「盗みからきっぱりと足を洗う」

親族の男性は「森川被告の趣味は、高級スポーツカーとギャンブルだった。家にあるものは自分で買って置いているだけ。飽きたらすぐ人にあげる。その繰り返し」と話す。
男性によると、森川被告が働いたことがあるのは20代のときに1度だけ、わずか1年の間だったという。

そして、男性は「被害者には申し訳ないと思うよ。相当な大金やからさ。代わりに返そうと思っても返し切らん。(悪事は)最後にしてもらいたいと言うてもね、なかなか本人がしっかりせんとできんと思うよ」とつぶやくように言った。

森川被告は、福岡地裁小倉支部の渡部裁判官に懲役4年の判決を言い渡されると深々と頭を下げた。「高齢となり、これを機に盗みからきっぱりと足を洗うために全て正直に話した」(論告メモより)と証言した“福岡のルパン”こと森川被告。染みついた稼業から足を洗うことはできるのか。

(テレビ西日本)

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