子どもが“窒息”したらどう対処!?リンゴやウズラの卵「丸くてつるっとした食品」はリスク高…正しい応急処置を救命医が解説

食品による窒息で幼い子どもの命が失われる事例が全国でたびたび発生している。窒息状態になると、たった数分で呼吸が止まる恐れがある。救急科の医師は5歳以下の子どものリスクが特に高いと指摘する。子どもが窒息状態になった場合、どうすればいいのか、医師に応急処置の正しいやり方を聞いた。

全国で相次ぐ子どもの窒息事故

空気の通り道である気道が塞がれ、短時間のうちに死に至ってしまうケースもある「窒息」。生きるために必要な“食べる行為”には危険が伴う。

新潟市民病院・救急科の佐藤信宏医師は、噛み砕いたり、飲み込んだりする力が弱い5歳以下の子どもは特に窒息のリスクが高いと指摘する。

佐藤医師が印象に残っている窒息による事例は「リンゴ」によるものだという。

「リンゴみたいに固くて、うまく子どもたちの噛む力で噛み砕けないもの。子どもたちは噛めないと丸飲みしようとする」

リンゴが原因となった窒息事故は全国で発生している。

2023年、鹿児島県の保育園で「すりおろしたリンゴ」を食べた生後6カ月の女の子が窒息により死亡した。

リンゴをすりおろしても、大きい粒が残っている場合があるとして、日本小児科学会では加熱することを推奨している。

“丸くてつるっとした食品”に注意

窒息の頻度が高い食材はほかにもある。

2024年2月、福岡県の小学校では男子児童が「ウズラの卵」をのどに詰まらせて死亡した。ウズラの卵のような「丸くてつるっとした食品」を食べさせる場合にも対策が必要だ。

丸くてツルッとした食品は今、旬を迎えている「サクランボ」や「ミニトマト」「枝豆」なども当てはまる。

ふいに気道に入ってしまい窒息の恐れがあるとして、日本小児科学会は4歳以下には4等分にカットして食べさせるよう呼びかけている。

また、「豆類」に関して佐藤医師は「豆類も小さくてツルッとしているので、窒息する恐れがあるし、窒息じゃなかったとしても誤えんと言って、肺の通り道に塞がってしまうということがよくある。5歳以下は豆類を避けるように推奨されている」と話す。

“トイレットペーパー”の芯が目安に

「注意が必要な食品」に対しては対策を取ることに加え、食べ方にも注意させる事が大切だ。

【食べ方の注意点】
・水分を取りながら食べさせる
・口の中に食品がある時はしゃべらせない
・あお向けに寝た状態や笑いながら、歩きながら、遊びながら食品を食べさせない

目安となるのは「トイレットペーパーの芯」。

3歳ぐらいの子どもの口の大きさはトイレットペーパーの芯の直径と同じくらい4cm程だと言われていて、この芯を通るものは誤って口に入れてしまわないよう、手の届く場所に置かないことも必要な対策だ。

窒息した場合…“応急処置”が重要に

ただ、万が一気道に異物を詰まらせてしまうと、顔色が急に悪くなって苦しみだし、声が出せなくなるという。

佐藤医師によると「詰まり方にもよるが、早いと5分しないうちに心臓が止まる。新潟市内でも救急車は今、平均9分~10分ぐらいかかると思うので、まずは居合わせた大人が119番通報をして、応急処置を始めるのが大切」と呼びかける。

掃除機・指を入れて取る行為はNG

たった数分で心停止に至る恐れがあるため、直ちに応急処置をしなければならないが、間違った応急処置について、佐藤医師は次の2点を指摘する。

1つ目は口の中の物がはっきり見えない場合は、無理に指を入れて取ろうとしないということ。

盲目的に指を突っ込むと逆に押し込むことが多いので、すぐに取れそうな場合以外は口の中に手を入れないようにしてほしい。

2つ目は口の中を傷つける恐れなどがあるため、掃除機で吸引しようとはしないこと。

正しい応急処置は?

では、どのように応急処置をすればいいのか…1歳未満の乳児の場合、まず救護者はイスに座り、太ももの上にうつぶせに抱き上げる。

次に乳児のあごを抑え、頭を下にして、吐き出した時にちゃんと頭側から出るように少し角度をつけ、そして背中の真ん中の辺り、肩甲骨の間を手のひらで5回ぐらい強くたたき、詰まった異物をはき出させる。

それでも窒息が解除できない場合は乳児を仰向けにさせ、左右の乳頭を結んだ線の中央を指2本で押す。

1歳以上の子どもには救護者が背中側から両手を回し、みぞおちの前で両手を組み押す。

心臓が止まって酸素が脳にいかない時間があると、脳はもう元に戻らないような障害を受けてしまうとして、応急処置の重要性を伝える佐藤医師だが「ただ、やっている最中に反応が全然なくなってしまった場合は恐らく心停止、心臓が止まっていると思うので、そういう状況になったら心肺蘇生に移る」

佐藤医師は「幸い心臓がまた動いて意識も戻って退院することができた子もいたが、そうならないケースもある。一度窒息して心停止に至ると非常に厳しい。命を助けることが困難なことも多いし、命が助かったとしても脳のほうの障害が強くて重度の後遺症を残すことになってしまう。窒息にならないように予防することが大事」だと呼びかけている。

(NST新潟総合テレビ)

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