たとえベンチでもチームのために――。GK野澤大志ブランドンがパリ五輪に向けて覚悟「自分が出る、出ないにかかわらず…」

どんな役割でもチームのために戦う――。レギュラーポジション奪取を目論む野澤大志ブランドン(FC東京)がパリ五輪に向けて、新たな自分を見せると誓った。

7月3日、パリ五輪を戦うU-23日本代表の18人とバックアップメンバー4人が発表された。都内で行なわれた発表会見終了後には、関東圏のクラブでプレーする野澤を含めた数名が同じ会場に集い、合同で取材に応じた。

野澤はメンバー発表時、FC東京の催しで都内の小学校にて子供たちとサッカーに興じており、その合間にスマートフォンでメンバー発表の瞬間を見届けたと明かす。

また、「僕らが日本サッカーの歴史を変えられる大きな大会」と意気込みを口にしつつ、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップからさらに成長した姿を見せたいと話した。

今年1月のアジアカップでA代表に初招集されたが、4月中旬から5月上旬にかけて行なわれたU-23アジア杯では、韓国とのグループステージ最終戦(0−1)に出場したのみ。この大会のレギュラーはGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)で、ベンチからチームを支える役割を担った。だが、内心は複雑だったようだ。出場権獲得と優勝を喜んだ一方で、素直に喜べない自分がいたからだ。

当時の心境を聞かれると、「アジアカップで優勝した裏で苦い思い出もある」と話したが、その経験が自分と成長させたとも話す。

「それを通してまた前に進めたし、強くなれた。非常に大切な時間でした」

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パリ五輪でも、もちろんピッチに立ち、レギュラーとしてチームに貢献するつもりでいる。だが、ベンチに回ったとしても全力で仲間を支えたいと口にする。

「僕の中で整理していることは、チームとして戦うのは当たり前。自分が出る、出ないにかかわらず、どんな状況でもチームの勝利のために何ができるか。それを考えて取り組んでいきたい。何があるか分からないですし、アジアカップの時の自分だったらまた同じようになってしまうと思うけど、その時とは違う自分でいると思っている。いつでも試合に出たら、チームに勝利をもたらせるようにしていきたい」

フィールドプレーヤーとは異なり、GKのポジションはひとつ。途中出場するケースも滅多になく、退場者や怪我人が出ない限りは出番を得られない。

そうした状況はGKにとっては酷でタフだが、3週間に渡る長丁場の戦いでは、下を向かずに仲間を鼓舞する必要もある。万が一、腐ってしまえば、チームの雰囲気は悪くなり、出場機会が巡ってきても良いパフォーマンスはできない。だからこそ、野澤は自分の振る舞いに気を配り、どんな状況でも仲間のために戦いたいと考える。

アジアの舞台で精神的に逞しくなった男は、例え出番を与えられなかったとしても、下を向くつもりはない。心身ともに充実する守護神は、日本のために全力を尽くすつもりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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