旧優生保護法は違憲…最高裁統一判断を「司法の大きな前進」と捉えるハンセン病元患者 人が人として見られなかった計り知れない心の痛みを、国は、社会はどう癒やすのか

強制不妊手術の理不尽さを語る岩川洋一郎さん=3日、鹿屋市の星塚敬愛園

 最高裁が3日示した旧優生保護法を違憲とする統一判断を受け、不妊手術を強いられた鹿児島県内のハンセン病元患者は「司法の大きな前進」と喜んだ。支援者らは「当然の判断」として、国へ丁寧な謝罪や賠償を求めた。

 ハンセン病元患者の岩川洋一郎さん(87)は「司法が大きく前進した」と評価した。約60年前、今も暮らす鹿屋市の国立療養所「星塚敬愛園」で2度の断種手術を受けた。「原告の計り知れない心の痛みはよく分かる」と表情を曇らせる。

 国の強制隔離政策を違憲とした熊本地裁判決から23年。これまで自身の体験を各地で訴えてきたが、「今なお差別や偏見は社会に残る」と悔しがる。「一人の人間として本当に悲しい思いをしてきた。今回の判断を機に、改めて幅広い世代に強制不妊手術の問題を考えてほしい」

 「当然のこと」と語るのは、同園の山口文夫自治会長(75)。「国の非情な過ちの歴史はハンセン病も同じ。国に謝る気があるのなら、数万人いる被害者に分け隔てなく賠償するべきだ」と語気を強めた。

 市民団体「奄美和光園と共に歩む会」の福田恵信(けいのぶ)代表(58)=奄美市名瀬=も「妥当な判断」と言い切る。「不良な子孫の出生を防止する」との目的で制定された旧法を「人間を人間とみない国の姿勢の表れ」と批判した。和光園の入所者数は11人、平均年齢88歳と高齢化が進む。「問題はまだ終わっていない。今後も普及啓発に取り組む」と力を込めた。

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