【韓国】韓越政府が投資・交易拡大へ[政治] 越首相訪韓、企業トップと会談も

2日にチン首相(左)と会談した尹錫悦大統領=韓国(大統領府提供)

ベトナムのファム・ミン・チン首相の訪韓を機に、韓国とベトナムの両政府はお互いの投資と貿易の拡大を加速させることで合意した。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は通関手続きの簡素化や重要鉱物の開発などで韓国企業がベトナムの力になれると訴え、チン首相もおおむね同意した。暁星やサムスンなどベトナムに進出した大企業のトップもチン首相と会談。チン首相の訪韓を通じ、韓国にとって3番目に大きい投資相手国となったベトナムの重要性を再確認した。

尹大統領は2日、6月30日から韓国を訪れているチン首相と会談し、両国関係のさらなる発展について意見交換した。尹大統領とチン首相が会うのは、昨年6月の尹氏のベトナム国賓訪問、9月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議以来となる。

尹大統領はチン首相に対して「両国間の通関簡素化など制度的な協力を継続的に強化することで、交易と投資がさらに活性化されることを望む」と述べた。また、ベトナムに進出した韓国企業の活動にベトナムの指導部が関心を持つとともに、積極的な支援を求めた。

尹大統領はとりわけ、韓国の強みである資源開発・発電分野での協力を打診。ベトナムでの重要鉱物の開発や加工、液化天然ガス(LNG)発電といった分野に韓国企業が参画することで、ベトナムのエネルギー転換に寄与できる点を強調した。

韓国大統領府によると、これに対してチン首相は「両国の包括的なパートナー関係を基に、さまざまな分野で関係を発展させてきた。ベトナム経済発展に寄与した韓国企業の貢献を高く評価しており、韓国企業の対ベトナム投資拡大に向けて規制改善などの努力を続ける」と述べた。

■韓首相や産業相も企業支援求める

ベトナムに進出した企業への支援については、同日にチン首相と会った韓悳洙(ハン・ドクス)首相や安徳根(アン・ドクグン)産業通商資源相からも要請があった。

韓首相は「ベトナムは韓国にとって3番目に大きい投資相手国であり、最大の開発協力国だ。ベトナムに進出した約9,000の韓国企業は、製造業から電機・電子、建設、金融、サービス業まで多岐にわたり経済協力に貢献している」とコメント。ベトナムにおける韓国企業の重要性を伝えた。

一方、安産業通商資源相は、1日にソウル市内で開かれた韓・越ビジネスフォーラムに出席し、「今年は両国の外交関係樹立から32周年となる。新たな30年に向けて、両国政府は今後も投資や貿易の拡大、安定的な供給網協力ネットワークの構築、気候変動・原子力発電といったエネルギー分野でも積極的に協力していく」との計画を明らかにした。

安氏は特に、レアアース(希土類)など天然資源のサプライチェーン(供給網)構築や原子力を含むエネルギー分野などで両国間の協力を拡大したいとの意欲を表明した。2国間の貿易額については、2023年の760億米ドル(約12兆2,850億円)から25年は1,000億米ドル、30年には1,500億米ドルまで拡大していくと強調。そのためにインフラ事業や資源開発などの分野で協力を拡大していく方針も示した。

韓越ビジネスフォーラムであいさつする安徳根産業通商資源相=韓国(産業通商資源省提供)

■韓国大手も経済協力に参画

韓国企業のトップもチン首相と会談し、同国への積極的な投資や経済面での協力を約束した。

暁星グループは、趙顕俊(チョ・ヒョンジュン)グループ会長と、グループの新たな持ち株会社であるHS暁星の趙顕相(チョ・ヒョンサン)副会長が2日にチン首相と会談し、未来事業に対する相互協力案について議論した。

暁星の場合、ベトナムに投資を行っているバイオ由来のブタンジオールや炭素繊維といった事業のほか、物流センターやデータセンター、再生可能エネルギーをはじめとする電力網など未来の事業について協力案を話し合ったほか、積極的な支援を求めた。

同グループによると、チン首相は暁星のベトナム投資について感謝の意を表するとともに、「ハイテク産業を優待する政策を推進している」として、暁星の未来事業での投資が滞りなく推進されるようサポートする意向を示した。

暁星とHS暁星は同日開催されたビジネスフォーラムで、同国南部のバリアブンタウ省とバイオ由来のブタンジオールや炭素繊維での投資・支援拡大に関する覚書を締結。同国で航空や金融、不動産事業などを手がけるソビコ・グループとデータセンターや再生可能エネルギー、金融など事業協力に向けた覚書も交わした。

サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長も2日にチン首相と会い、電機・電子分野での協力について議論した。李会長は「ベトナムの成功はサムスンの成功であり、ベトナムの発展はサムスンの発展でもある」とサムスングループにおけるベトナムの重要性を強調。さらに、「サムスンベトナムを世界最大規模のディスプレーモジュール生産拠点にするため、これから3年間は集中的に投資していく」との計画も述べた。

このほか、GSグループの建設会社、GS建設の許允烘(ホ・ユンホン)社長は3日にチン首相と会談。同社が現在行っているベトナムの新都市開発への投資に関し、チン首相をはじめとするベトナム政府の積極的支援を求めた。

韓国企業にとってベトナムは中国に代わる有望な投資先で、今後も投資や企業進出が相次ぐ可能性が高い。チン首相との会談を機に、現地で事業しやすい環境を整えたい韓国企業の事情がうかがえる。

暁星グループの趙顕俊会長(左)は、未来事業に対する相互協力についてチン首相と意見を交わした=韓国(同グループ提供)

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